歓迎会と女の子

AM8時。教会でむかえる2度目の朝。
今日は何だかシスターが早朝から忙しそうにしていた。

(今日は日曜日…休日…どこかへ行くのかな?)


『シスターおはようございます。今日は何かあるんですか?』

「おはよう。そう言えばリリーは知らなかったな。毎週日曜日にはミサがあるんだ。今その準備をしている。」

『あ、昨日村長が言ってた…』

「ならその後の事も聞いたな?ミサが終わったらリリーの歓迎会をする。」

『聞きました。ちょっと緊張します。』

「大丈夫だ。そんな堅苦しいものじゃない。」


そう言ってかごにクッキーの入った袋を入れ始めた。いったいミサとなんの関係があるのだろうか。


「準備もできたし、そろそろ外に出よう。皆も後々来るだろうしな。」



ーーーーーーーーーーー




『今日も良い天気ですね。』

「あぁ、ミサ日和だ。」

『あ、あれは…』


遠くから歩いてくる物体。目を凝らさなくても誰だかすぐ分かった。


『おはようございます。村長。』

「お、リリーか。シスターもおはようさん。」

「おはようございます。今日も早いですね。」

「今日は良い天気だからな〜。また眠っちまいそうだ。」



「よう、リリー!」

『あ、星。おはよう!』


星の方を向くと、星は背中にギターを背負っていた。


『星ってギター弾けるの?』

「おう!なめんなよ俺のギターテク!今日の歓迎会の時に弾いてやるからよ!」

『わ、楽しみ。』


すると後ろからダダダッと何かが走ってくる音がして、振り向こうとした瞬間、


「リリー!おはよう」


凄い助走から一気に抱きつかれた。


『ニ、ニノ!?どど、どうしたの?』

「リリーは昨日本当の笑顔を見せてくれたからな。私とリリーは本当の友達ということだ!」



真顔で言われたが、嫌では無かったのでツッコまなかった。ここでの初めての友達。


「良いなぁ…」

カチャ
「星…それは何に対する言葉だ。」

「シ、シスター!い、いや、ほら、俺もニノにしてもらいたいなぁ、とか、さ。はは。」

「フン、リリーに何かしようとしたならすぐに蜂の巣にしてやるがな。」


と言うとシスターは銃をおろしてリリーの所に戻って行った。






一方、リリーは



「リリーは何か仕事をしないのか?」

『仕事?』

「河川敷の皆にはそれぞれ仕事があるんだ。私は魚を捕るのが仕事だ。」

『(あれ仕事だったんだ)』

「そう言えば花屋をやっていたんだったな。まだそのエプロンもつけているようだし、ここで花屋をしたらどうだ?」

『河川敷で花屋…?』


もう一度花屋を開けるなんて思ってもいなかった。


『やりたい!私、ここで花屋を開きたい!』

「そうか!だったら家を作るのと同時に店も作らないとな!」

『うん!』



キラキラした会話をしているとまた新しい人影が近付いて来た。太陽の光が鉄仮面に反射している。


「「うわぁー!新しい人だー!」」

『(仮面…)ニノさん、この子達は?』

「コイツらは鉄人兄弟だ。」


「シスター!!この人誰ー?」

「可愛い人だね!」

「彼女はリリーだ。一昨日からここに住んでいる。」


「リリーさんっていうんだ!僕鉄郎!」「僕鉄雄!」
「「よろしく!!」」


『うん、よろしくね。』


元気!そして可愛い。


周りを見ると、いつの間にかたくさんの人が集まっていた。


「…よし。そろそろ始めるか。リリーは私の隣にいろ。」

『はい』


そう言って銃を取り出したシスター。
え、銃?




「シスターより命ずる…


全員整列ー!!」

ドカガガガガガガッ!!



そうして銃を乱射する私の家主。



『……』

「はい悪いことした人お手上げー」


いない…「はいナーシ、撤収!!」

『早っ』



リリーは終始シスターの横でうろたえていた。そして気付くと、シスターが皆にクッキーを配っていたのだ。


「ほらリリー」

『あ、ありがとうございます。』


いつものおいしいクッキーだ。今5秒で済んだことは白昼夢だったのかな?と思う。
クッキーを食べている間にもいろんな視線がチラチラとぶつかる。


「よし、じゃあ1時間後にコイツの歓迎会やるからなー!」


ぽんと私の肩に手を置いて皆にそう伝えた。


「リリーさん!リリーさん!一緒に鬼ごっこしよう!!」

「リリーはこのクッキーを毎日食べることができるのか?羨ましいな。」

「リリー、ニノも一緒に俺の歌聴いていかねぇか?」



1時間はあっという間に過ぎてしまいそうです。



ーーーーーーーーーーー




「それじゃあかんぱーい!」


確かに私は成人してますけども


『昼間っからお酒って…』

「じゃあ自己紹介な!」

『えぇっ?あ、えっと、二日前からここに来ました!リリーです!花屋をやっていたのでここでも花屋をやりたいです!よろしくお願いします!!』


目を瞑りながら頭を下げると、拍手と同時に歓声がわき起こった。

よろしく。と、たくさんの人に言われ、やっと息をつくことができた。


「私P子!女の子が増えて嬉しいわ!しかもこんなに可愛い!!」

『あ、ありがとうございます。』


両手をぎゅっと握られてニコニコ笑顔を向けられた。
私からしたらあなたも可愛いです。


「リリーちゃん、私はマリアよ。よろしくね。」

『よ、よよ、よろしくお願いします…』


世の中にはこんな綺麗な人がいるなんて…。


「それと…あまりシスターには近寄らないほうが良いわよ。あなたに穢らわしい視線を向けているかもしれないわ。」

『そ、それは無いんじゃないですかね…』


突然の毒に驚く隙もなかった。シスターに何か恨みでもあるんだろうか。


「リリー!ここで敬語はいらないわ!河川敷ではみんな家族みたいなものなんだもの!!」


P子ちゃんにそう言われ、なるべく敬語は止めようと思った。


『うん!よろしくね!』

「「よろしく!!」」


女の子の友達ができて良かった。



ーーーーー



(リリー)

(どうしたんですか?シスター)

(マリアに何か…、いや、何でもない。)

(…?)

 

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