周りの木の葉が色を変えていく秋。
今日は多くの住人がある場所に集められた。
「今年もやるかー」
「わーい楽しみー!」
「リリーさんはい軍手!」
『ありがとう鉄雄。』
「皆集まってくれてありがとう!そこ一面全部お芋だから掘っていって!」
傷つけないようにねー!と声を張るP子の足元にはさつまいも畑。
皆が集められた理由はこの畑の芋掘りを手伝うためだ。
「リリー、私の周りにはトラップが作動する仕組みにしてあるから近づくんじゃないぞ。」
『?分かりました。(トラップ…?)』
一人になったリリー。そんな彼女を狙う住人がいる。
「よっしゃこの隙に…。
リリー、こっちで俺と芋掘りしよ…「リリー殿ー!こっちにたくさんあるでござるよー!!」……」
『うん!』
「ラストサムライ!邪魔すんな!」
「抜け駆けはいけないでござる。」
「なぁリリー、芋ってどこにあるんじゃ?葉っぱしか生えとらん。」
『あぁステラちゃん、この葉っぱを引っ張ると土の中からお芋が出てくるんだよ。』
周りの土をスコップで取り除く。
『はい、抜いてみて。』
「ん、よっ、…おぉ!芋じゃ!リリーありがとう!」
『どういたしまして。採れたらP子のところに持っていってあげて。』
「分かったわい!」
すっかりステラに持ってかれてしまったリリーを、星とラストサムライは見つめていた。
「やっぱり子供>俺達なんだな。」
「しょうがないでござる。あんな純粋な目で話しかけられたら拙者たちなど……」
そんな二人と目が合ったステラは「ハッ」と思い切りあざ笑った。
「「(確信犯だ…!!!!」」
クソッとうなだれる二人の隣ではある男が苦戦していた。星はそちらに目を向ける。
「あ?リク手が止まってるぞ。」
「気にするな。」
スコップを構えたリクが見据えた先、
そこには掘り返した地面に大量にうごめくミミズ。
『リク、ミミズ怖いの?』
「え、いやっ、その、完璧であるこの俺がミミズが怖いなんてこと」
「おらっ」
「ギャアァァア!!星!投げんじゃねーよ!!」
その後、ギャアギャアと騒ぐ二人はシスターのエリアに足を踏み入れてしまい網で宙吊りにされてしまった。
「なにしてるんだ。」
『あんなものよく畑に仕掛けられたなぁ…』
そんな騒ぎが起きながらも芋堀は順調に進み、住人達は休憩に入った。
「あー…、死ぬかと思った…」
『リクお疲れさま。』
「あんな虫ぐらいで情けないのう。」
リクはシスターにトラップを解いてもらった後、ミミズをゴムひもだと自分に言い聞かせて作業に進んだ。
「っていうかリリーさん手慣れてましたね。」
『去年もやったんだ。シスター、去年はなぜか星と戦ってたんだけど、まさかあんなトラップを仕掛けるなんてね。』
「(なんだかその激闘もリリーさんが関わってる気がするな…)」
一年経っても成長しない大人たちに呆れていると、遠くからP子の声が聞こえた。
「皆ありがとう!焼き芋出来たから食べて!」
「やったぁ!お兄ちゃん半分こしよー!」
「今もらってくるー!」
『あ、ステラちゃん。火傷したら大変だから今半分にして冷ましてあげるね。』
「リリーと半分こじゃな!」
「俺もリリーと半分こしたい…」
「ござる。」
「お前らもちょっとは自重しろ。ったく、ここの奴らはどいつもこいつも…、ってそう言えば村長どこ行った?」
「村長ならあそこでござるよ。」
遠巻きに焚き火を眺めている村長。
「あぁ、あの着ぐるみ燃えやすいからか。」
「なんだよリク、その目は。」
「なんでもないですよ。」
「ステラ、美味しいか?」
「あ、シスター!ハイ!すっごく美味しいデス!」
『シスターも食べますか?』
「ん?そうだな。トラップ解除で忙しかったが私も食べようかな。」
『冷ましたのありますよ。はい、あーんしてください。』
シスターの口に一口大の焼き芋を持っていく。両手が土まみれのシスターは素直に口を開けた。
「ん、美味いな。」
『P子の畑の野菜って全部美味しいですもんね。』
そんなふわふわとしたやり取りを穏やかに見守ることも出来ない奴はいるもので、
「シスター羨ましいぃぃ!!」
「リリー殿も無自覚でござるからな…!」
「無自覚×無自覚かよ…。タチ悪いぜ…」
「いや、シスター無自覚じゃないぞ。」
リリー達からそむけたシスターの顔からは血が滴り落ちていた。
半目のリクルートが彼に指をさす。
「シスター血出てますよ。」
「なに…?」
頬を押さえるシスター。
「違います。鼻からです。」
下心ありありである。
「(俺もニノさんと半分こしてこよう。)」
肌寒い季節の中、河川敷では温かい空気が流れていた。
―――――
(村長もほら、食べてください。)
(俺には食べさせてくんないの?)
(村長は手、汚れてないじゃないですか。)
(あぁ、そういう基準ね。)