「さぁ来たよ兄ちゃん!」
「気合いを入れるぞ、鉄郎!」
『どうしたの?』
ニノの釣りスポットの1つである橋の下まで来た鉄人兄弟は上を見上げて固唾を飲んだ。
「あ、リリーさん知らないんだね。」
『うん?』
「リクさんは他人から物を絶対に受け取らないんだ!」
『な、なんでまた?』
「刈りがどうたらこうたら…って。」
『狩り?…よく分かんないや。』
「リクさんちょっとおかしいんだよ!とりあえず二人に降りてきてもらおう。」
「そうだね。ニノちゃーん、リクさーん!」
「ん?鉄人兄弟にリリーじゃないか。ちょっと待ってろ。」
「ニノさん!梯子使って下さい、梯子!!」
リクに促されて飛び降りから梯子という手段で降りてきたニノとリク。
「あ、リリーさんお菓子出来たんですか?」
「お菓子?」
『うん!はい、これニノに。』
「僕達も一緒に作ったんだよー!」
「あそこに咲いている桜を使ってるみたいですよ。」
「桜が入っているのか。…お、うまいな。」
『口に合って良かった。じゃあ残った1個は…と、』
「「(来た…!)」」
鉄人兄弟は瞬時にアイコンタクトを送った。
『はい、これリクに。』
「あー…、えー……、いや、俺は受け取れません。」
『どうして?』
「美味いぞ?」
四人の視線が一気にリクに突き刺さる。
「お、俺はこのネクタイにもあるように他人に借りをつくってはいけないんです!」
『…あ、かりってその借りね。』
【他人に借りを作るべからず】の文字が刺繍されたネクタイをまじまじと見る。
「僕達頑張って作ったのにぃー!」
「リクさんひどい!」
「だ、だってしょうがないだろ!?」
『これは別に貸し借りじゃないよ。ただ単に私がリクにプレゼントしたいだけ。』
「………、」
『……そんなに嫌なら無理には押し付けないけど…』
持っていた皿を少し下げてうつむくリリー。
「あーあー!!リクさん泣かしたー!!」
「シスターに言いつけてやる!!」
『いや、泣いてはいないけどね。』
「っ!も、もらいますもらいます!それください!!」
『本当に?はいどうぞ!』
「あ、ありがとうございます…」
「リク、美味いだろ?」
「…はい、すごく美味しいです。リリーさんありがとうございました。鉄人兄弟達もありがとな。」
「うん!リクさんが食べてくれるなんて思わなかった!」
「これは星さんに報告だ!」
「やめろ!」
『じゃあ教会に戻ろっか。』
「リリーさん、僕お皿持つー!」
『ありがとう、鉄郎。またねニノ、リク。』
「はい。」
「あぁ、またな。」
「リクさんに食べてもらって良かったね!」
『本当に良かった!皆美味しそうに食べてたしね。』
「また今度一緒にお菓子作ろうね!」
『うん!』
夕日の道を両端の鉄人兄弟と手を繋いで歩いていった。
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(((ただいまー!)))
(ん?あぁ、おかえり。全員に食べてもらえたようだな。)
(今度はシスターも一緒に作りましょうね。)
((作ろーう!))
(あぁ、そうだな。)