僕らを繋ぐ名前





「リリー、ちょっと良いか?」


河川敷のお昼。花の世話をしていたリリーの元にシスターがやってきた。


『はい、何ですか?』


連れてこられたのは教会。

そこにいたのは、











「僕達の方がリリーさんのこと知ってるんだからー!!」

「河川敷に住んでない人には負けないんだー!!」


床に寝転がって暴れる鉄人兄弟の姿。


『……何があったんですか?』

「私にもよく分からないんだ。いきなり入ってきたと思ったら…、」

「あ!リリーさん!!」

「うわぁぁぁん!!」


「……」

『二人ともどうしたの?』


突進してきた彼らを優しく抱きかかえながら聞いた。


「昨日リリーさんがぁ…、」

『私が?』

「知らない人と知らない名前で話してたから…」

『……?…あ。』





* * * * * * *


時は戻って昨日。

買い物の帰りだったリリーは河川敷の近くの道を歩いていた。


『ここからでも星の叫び声聞こえる…。また何かやったのかな。』

「あれ、名前ちゃん?」


苦笑いを浮かべているといきなり誰かに話しかけられた。


「覚えてる?高校の…」

『…あ、あぁ!うわぁ、久しぶり!』


昔、仲が良かった友達と遭遇して10分程度会話をした。


「じゃあね、頑張ってね。」


きっと家が無くなったのを知っているのだろう。


『うん、ありがとう。』


そこで別れて河川敷に足を踏み入れた。



* * * * * * *





『あれを見てたのか…』

「なるほどな。」

「リリーさんはリリーさんなんだ!!」

「名前さんなんて…、いや、その名前でも十分可愛いけど、僕達の知ってるリリーさんはリリーさんなの!!」


「名前?」

『あ、私の本名です。』

「あぁ、そういえばリクがごちゃごちゃ言っていたのはお前の名前だったのか…」

『初めて高井さんに会ったときは本名で紹介されましたもんね。』

「(良いこと聞いたな…)」



『さてと…、ほら、そんな転がってたら汚れるでしょ。』

「うぅ…、リリーさんは河川敷からいなくなったりしないよね?」

『もちろん。』

「今から僕達と遊んでくれる?」

『良いよ。暗くなるまで遊んじゃおっか。』

「やったー!!」

「行こ行こ!!」


グイグイ引っ張って連れ出そうとする二人。


『ふふ、シスターありがとうございました。』

「あぁ、気を付けろよ。」


嵐が去った教会は一気に静まりかえった。


「…あいつらがいるなら嫌でも河川敷から去ることは出来ないな。……まぁ、私もその時は強引にでも引き止めるが…」


シスターはふ、と笑ってクッキーを作りにいった。



ーーーーー


(二人とも嫉妬深いんだねぇ)

(嫉妬って?)

(今は内緒。よし、何して遊ぶ?)

(鬼ごっこしよー!)

 

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