青空5





いろんな事もありながら時は経ち、河川敷に彼が帰ってきた。



「「『あ!!』」」

「ニノさん!それと皆さん!戻ってきましたよ!!」

「高井さーん!」

『高井さんだ!』


皆が注目し、再開の抱擁をしたのはリクルートではなく、彼の隣にいた高井にだった。


「…あれ?あれ、ニノさーん…俺はこっちですよ〜」

「ん……?……………おぉ、おかえりリク!!」

「(完全に俺の顔忘れてましたね。)」

『だからシャツとネクタイって事しか合ってないよ。』



「リク!!てめぇがいない間にリリーは…、リリーは!!」

『もう良いよ、ほんとに。』

「リリーさん、会社の人に怪我させられたんだよ!」

「おまけにシスターにも泣かされたの!!」


可哀想だよ〜!!と騒ぐ二人を横目に、リクはジトッとした目線をシスターに送った。


「…なんで泣かしたんですか」

「待て、なんだその目は。私が泣かせた訳ではない。」

「泣いた事にかわりないじゃないですか!リリーさん大丈夫でしたか!?」

『大丈夫。大丈夫だから。』


これ以上詮索しないでくれ、と言わんばかりに片手で制した。


「…まぁ、聞きたいことは後で聞くことにします。皆さんこれを見てください!」


バッとリクが取り出したのは、荒川河川敷に関する企画書だった。


『荒川河川敷再開発…?』

「えぇ!橋の下の開発権利を俺が取るんです!」

「って事は俺たちは追い出されたりはしないんだな!?」


「その通りだ!!あとは工事委託企業と工事の話を完璧に進めれば…」ピリリリリ


そこでリクルートの携帯が鳴った。


「失礼しますね。はい!
島本さん、お世話になっております!」

「工事委託先の社長ですな。なかなか良い人ですよ。」


高井が認める程なら、安心できるかもしれないと大人組は頷いた。


「僕たちここに残れるんだね!」

『この話が上手くいけば…!』





「え、……白紙に戻してほしい…?」




切羽詰まったリクの声に、河川敷中が凍りついた。




ーーーーーーーーーーー




『ど、どうしたのリク?』

「今回の事は無しにしてくれって…、市ノ宮に刃向かう事は出来ないと…」

『そんな…!』

「おい、どういうことだよ!!」

「それと…、下見に向かわせた者が…





無数のブービートラップに道を阻まれて河川敷に入れなかったと…」





………





『…シスター!!』

「なんだ?」


世間に厳しいシスターのトラップのせいで今回の話にトドメをさしてしまった。


「こんな時に村長はどこ行ったのよ!!」

「…僕たち追い出されちゃうの?リリーさん…」

『大丈夫だよ』


不安がっている鉄人兄弟を両手で抱きしめた。


「お前が一番不安になってんじゃねーか。そんな震えて。」

『…そりゃ、不安だよ。星は怖くないの?』

「当たり前だ!怖いものなんてねぇよ。それに、リリーが怖がる必要は無い!」

『なんで?』

「言ったろ?俺がナイトになって守ってやるって。」

『…そういえば…』


「うわ、星、お前そんなキモいこと言ってたのかよ。」

「うるせえな!!どっかのもやしと違って、俺は頼りになんだよ!」

「誰がもやしだ!お前がナイトなんて…。…ハッ、笑わせんな。」

「んだと!?喧嘩売ってんのか!?」

『…ふふ』


「あー!リリーさん笑ったよー!」

「久しぶりに笑った顔見た!」

『そうかな…』


「お星様の俺が願いを叶えてやるぜ☆」

「おえっ」

「殴るぞ」




『星が叶えてくれるの?』

「あぁ!まかせろ!!」







「あら?リリー、願い事は流れ星にするものじゃない?」



「………え?」

『マリア?』




ーーーーーーーーーーー





そして星はリクの家の前、つまり梯子を上った高台の上に連れてこられた。


「…マリア?」

「お星様なんだからリリーのお願いくらい聞けるわよね?」

「いや…、そうだけど…。……これはいったい?」

「流れてちょうだい。」

「ただの飛び降りだろ…!!」







『ニノ、流れ星っていうのはね、流れている間に3回お願いすると叶うんだよ。』

「なるほど」









「呑気に会話してないで止めてくれー!」

「ハッハッハッ!!さすが星だな!しっかりニノさんとリリーさんと他の奴等の願い事叶えてやれよ!」


その時、マリアが星のマスクを奪い取ってリクにかぶせた。


「……え…?」

「叶える星は多いほうが良いじゃない?」








『あ、リクが星の被り物してる。』

「流れ星が2つ…!」

「これならたくさん叶えられるね!」
「ね!」








「これもリリー達のためよ。…プッ」

「そう言いながらなんで笑い堪えてんですか。」

「良いから、





ほら。」
ゲシッ




次の瞬間、足で蹴飛ばされた星とリクは一気に落下していった。



「「ぎゃあぁぁああ!!」」




「お、流れたぞ!」

『マリア……』


ニノとリリーはずっとここにいられるように、と願った。

その隣ではシスターが目を閉じて何かをお願いしており、鉄人兄弟からはなぜかプリンとゼリーという単語が聞こえてきた。




ーーーーーーーーーーー




「お願い事叶うと良いわね。」


下まで下りてきたマリアがしれっと言った。


『叶うかな』

「叶うわよ。星君が叶えてくれるって言ってたじゃない。」

『うん』

「それに私もリリーの幸せを願っているんだもの。」

『マリア…、ありがとう。私もマリアの幸せを願ってるよ!』

「ふふ、嬉しいわ。」









「俺らって……役にたったのか…?」

「分かんね……リリーが笑ってくれるんならなんでも良いわ。」

「………俺もニノさんが笑ってくれるなら良いや……」

「「……疲れた…」」




ーーーーー


(シスターは何を願っていたんですか?)

(願い事というのは人に話したら叶わないんだ。)

(え!そうなんですか?…シスターは何を願ったんだろ…?)


((大体予想はつくけどな。))

 

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