青空3





あんな事があったにも関わらず、いまだに交通省の人は河川敷を出入りしている。

大げさに包帯の巻かれた左手を見ながらリリーは考え事をしていた。





青空3





『(もしも、本当に追い出されたら私は…、皆はどうしたらいいんだろう)』


ひとりで切り盛りしていた大切な家を失った消失感を、また味合うことになってしまうのか。今度は大切な人がたくさんいるこの場所を。


ポン
『!!』



いきなり肩を叩かれて、今までの思考が飛んだ。


『なんだ…シスター、びっくりしましたよ。』

「すまん。こんな所で突っ立っているようだったから気になったんだ。」

『ちょっと考え事をしてて…』

「何かあったのか?最近ボーっとしている事が多いぞ。」

『あはは…、すいません。たいした事じゃないんですけどね…。』



「…そのわりにはずいぶん泣きそうな顔をしているがな。」

『……いや…気のせいですよ』

「それだ」

『え?』

「またその愛想笑いか。嫌な事でも考えていたんだろう?」


悟られないように作った笑顔がすぐに指摘された。


『シスターはなんでも分かるんですね』

「私に嘘は通用しないしそれにお前の事なら、いや、ともかく無理に笑おうとするな。」

『……』


何でシスターはこんなにも他人に対して真剣に向き合えるんだろう。

凄く優しくて、凄く温かい。




まるで…、



下を向いてそんな事を考えていたらシスターが頭を撫でたから、

私は初めて会った時のように目を見開いた。









『………、』




下を向いたまま、涙がポロポロと落ちてきた。頭を撫でるシスターの手が一瞬止まったのはきっと涙に気づいたからだろう。


『…私嫌です…また前みたいに居場所がなくなるのは…』


嗚咽でなかなか上手く喋れない間にも、頭は撫でられたままだった。


『同じように、ここも…追い出されたら…、怖いです』


涙は止まらなかった。
シスターは頭を撫でていた手を引き寄せて、そのまま抱きしめた。


「大丈夫だ」


できるだけ落ち着かせるように優しい声で、静かに言った。


「教会に帰ろう」


リリーはその言葉のせいでもっと止まらなくなった涙を拭きながら小さく頷いた。


シスターがその手をひいて教会に戻ろうとした時、






「「シスターが…リリーさんを泣かしてる……」」





鉄人兄弟に見つかった。






ーーーーーーーーーーー






「リリーさん大丈夫〜〜!?」

「いくらシスターでもリリーさんをいじめるのは許さない!!」

「ちが…」


「リリーさんどこか痛い?」
「泣き止んで〜!」

『大丈夫だよ…』




「あぁぁぁあ!!リリーどうした!?何があった!?」


どうしようかとシスターが悩んでいる時、更に人が増えた。


『星…何でもないの』

「シスターに泣かされたの!!」
「僕たち会った時から泣いてたの!!」

「だから違うと…」

「シスター女の子を泣かすなんて最低だぜ!!リリー大丈夫か?」

「私が泣かせたわけでは…いや、私が泣かせたのか…?」

「リリー何された!?セクハラか!?怪我か!?」

「お前は私を何だと思っているんだ。」


必死にすがる星が両手を握る。大げさに巻かれた包帯の下はこれっぽっちも痛くなかった。


『シスターには何もされてないよ…。手が痛くて勝手に泣いてただけ。心配させてごめんね?』

「手…、……手か!!大丈夫なのか!?あの野郎今度あったらビンタ一発じゃすまさねぇ!!」

『(…理由、これで良いのかな。)今はもう痛くないから大丈夫だよ。ありがとう。』


すっかり涙が止まった顔で笑ってみせた。


「っお!おう!なら良いんだ、けど…、」

『どうしたの?』


その時リリーと星の間にシスターが割り込んだ。



「星、殺されたいのか。」

「!!」ブンブン!


星は思い切り首を横に振った。


「星、顔赤いよ?」

「風邪?」

「あ、あぁ、風邪!風邪かもしれない!はは、は…、」

『え?星風邪なの!?』

「いや、風邪じゃないかも!!大丈夫!大丈夫だ!!よし向こう行って遊ぶぞお前ら!!」


「リリーさんまたねー」

「泣いたらなぐさめてあげるからねー」


星は鉄人兄弟の手を引っ張って、シスターの目線から逃れるように去っていった。



『…ふぅ』

「はぁ」

『疲れました…』

「まったくアイツらは……今度こそ帰るか。」


『はい。』


帰る場所があるだけでこんなにも笑顔になれる。


『前から思ってましたけど、やっぱりシスターってお父さんみたいですよね』

「!!」


シスターが何故か落ち込んだ。





ーーーーー


(シスターは良いな〜…リリーの寝顔も泣き顔も全部見れるんだから…)

(キモいでござる)

(星、その発言はセクハラになるわよ。)

 

back

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -