青空2




リクが河川敷を飛び出してから3日、リリーとシスターは教会で大きな毛皮を手に持っていた。



『前にボタンつけたら簡単に脱ぎ着しやすいですよ。』

「じゃあ、やってもらえるか?」

『はい』




青空2




リリーが持っているのはシスターが倒したという、冬になったらいつも羽織っている熊のアレキサンドラだった。


『それにしても温かいですね、これ。』

「着てみるか?」

『私が着たらきっと潰れちゃいますよ。』

「お前は細いからな。」

『シスターが頑丈過ぎるんですよ……はい、できました。』

「あぁ、ありがとう。」



『シスター』

「どうした」

『……本当にここから追い出されたりしませんよね』

「…あぁ。今はリクが頑張ってくれているし、それに私が守ってやると言っただろう?」

『…はい』

「安心しろ」

『……』


リリーはそのまま倒れるように胡座をかいているシスターのお腹にしがみついた。


「…」


シスターは一瞬戸惑った後、優しくリリーの頭の上に手を置き、頭を撫で続けた。





ーーーーーーーーーーー





あのあと、熊を着こんだシスターは完璧に遊園地のマスコットキャラクターのようになっていた。



プルプル
『……シスター可愛い…!』

「自分ではよく分からないが」

『バッチリですよ…!』


リリーは抱きつきたい衝動を抑えながら、教会を出ていった。





ーーーーーーーーーーー





『あれ?あの人影は…、市ノ宮の人かな?』

「くそ、ホームレスがバカにしやがって…!」


『星が何かしたのかな…』



真っ先に疑われた星。


「チッ、イライラする。おい、どけ!」

ドンッ
『わっ、』


肩を押されたリリーはそのままこけて、手を擦りむいてしまった。


『なんなんだろ…』




しばらくの間、血が止まりそうにない左手を眺めていたリリーの元に誰がが近付いて来た。



「何をしているでござる?そんな所で突っ立って…」

『あ、ラストサムライ。』

「?……なっ!ど、どど、どうしたでござるか!?」


その手を見て、ひどく慌て始めた。


『ちょっとこけちゃっただけ』

「他に痛い所は!?」

『無いよ。ついたのは手だけだし、押されたって言っても軽くだったから。』

「…押された……?」


『え?……あ、』


しまったという顔をした時にはすでに遅く、



「誰に押されたでござるか」

『や、急に静かになられると怖いんだけど。』


困り果てたその時、


「ラストサムライ、なにナンパしてんだよ。」

「「僕達も混ぜてー!」」


鉄人兄弟を引き連れた星がやって来た。


「あぁ、星。良いところに。これを見るでござる。」


優しく、それでも抵抗出来ないような力でリリーの左手を取って、星に見せた。


「なんじゃこりゃ!?血出てんじゃねぇか!!」

「わぁあ!リリーさん大丈夫ー!?」


慌てふためく3人。


『そんなたいした事ないって…』

「市ノ宮の者にやられたと見て取れる」

「何だと…!?許せねぇ!!女の子に、ましてやリリーに怪我させるなんて良い度胸じゃねぇか!!」

『いや、だから…、』

「リリーさん誰にやられたの!?」
「答えて!!」

『その…教会の方に歩いていった人、だけど』


鉄人兄弟に迫られたリリーは少し口を尖らせて言った。


「よっしゃ、血祭りだ」

「刀の準備は万端でござる」


『そんな大ごとにしないでー…』


教会の方にずるずると引っ張られて行った。





ーーーーーーーーーーー





「シスター!こっちに会社の奴来なかったか!?」


「なんだ星、騒々しいな。来ていないぞ。」

「それよりリリーさんの手当てしてあげて!」

「どうかしたのか?」

「その市ノ宮の奴に肩どつかれて、倒されたんだとよ!!」

『そこまでじゃないけど、』


「なん、だと…!?」


『いや、なんだとじゃないです。大丈夫ですから。』


「今すぐ見つけ出せ!!」

『誰か話を聞いてください』



星とラストサムライはその人物を探しに行き、リリーは鉄人兄弟に見守られながらそのままシスターに手当てされた。



「本当に大丈夫か?」

『さっきからそう言ってるじゃないですか。大丈夫ですよ。』

「おーい!見っけたぞー!!」

「よし、捕らえていろ!!」


『大丈夫の意味理解してますか?』




そうして星とラストサムライの元に行くとそこにいたのは、


『……ニノ?』


まさに先程ぶつかった張本人の上に馬乗りになって、彼に無理やり魚を3・4匹口に詰め込ませているニノだった。


「俺らが来たときにはすでにこうだった。」

『これは…』

「…ん?コイツ…、よく見たらリクじゃないな。」

『リクだと思ってたの?』

「違ったか…リクのご飯だったのに。」


そう言って魚を河に戻していった。


『もはや、シャツとネクタイって事しか合ってないよ。』


その後、気絶している部下をとりあえず星がビンタしてから商店街のど真ん中に捨てていった。



ーーーーー


(気絶だろうがなんだろうが許されねぇ)

(私の銃まだ使っていないぞ)

(拙者の日本刀もでござる)


(使わなくて良いから…!)

 

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