青空





お父さん、お母さん、元気ですか?





青空





穏やかな日の今日この頃、村長がシスターと将棋をするために教会に遊びに来た。


「シスター地味に強いんだよ。」

『村長が弱いんじゃないんですか?』

「対戦してみるか?俺圧勝するぜ。」

『いえ、やり方分からないので』


パチ、と将棋をうつ音だけが聞こえてくる教会に新たな客人が来た。



バンッ!!
「シスター!大変です!!」
「核か!?」

「いえ、核では」







パチ
「王手。」

『わぁ』

「ほら、シスター酷いんだよ。」


「ちょ、世の中には核以外にも怖いものはあるんですよ!?」

『一体どうしたの?リク。』

「聞いてください!この河川敷が無くなるかもしれないんです!!」


『え!?な、なんでまた…、』


「市ノ宮グループが…、俺の父さんがここを埋め立てる計画を立てたんです。」

『お父さん……?え?リクってあの市ノ宮グループの人なの?』

「あれ、言ってませんでしたっけ。俺の本名、市ノ宮行です。」

『へぇ〜!凄いね!だからお金持ちなんだ。』

「それほどでも……、って、それどころじゃないです!さっき市ノ宮の人がここの下見に来てたんです。河川敷を公園にするって…」





『シスター、どうしたら…!』

「大丈夫だ。核だろうがなんだろうが、私が必ず守ってやる。」

「だから核じゃないって言ってんだろうが!」

「俺、荒川のマスコットキャラクターになっちまうな…」

『もうアザラシが先約ですよ』



「ちょちょ、そんなのんきな事を言ってる場合じゃないんですよ!警察とでもなにかあったら…、」


そこで、リクの目に銃を磨くシスターの姿が見えた。


「まず、あなたが捕まりますよ!」

「シスターは大丈夫だって。そういう時のために魔法の言葉を教えてあるから。」


「あぁ、あれですか。何を言われても
ニホンゴワカリマセーン。」

「小学生ですか!!」

『やー、でもそれ言われたら確かに困るよ。』

「まぁリク、そんな気構えんなよ。」

「どこからそんな余裕が…!」

「大丈夫だって。俺もお前も、他の奴らも。」


ポンと肩を叩かれて、不思議と大丈夫な気がしてきたリク。


「……。」

「こんな時のためにな…、俺は前から橋の下に…、河童結界を張っておいたんだよ…」

「……」


リクは一度耳をほじった。


「橋の根本にぬかで包んだきゅうりを埋めてな…、」



『……つけもの?』

「もう駄目だ!!」





-次の日-




『あれ…、リクが来てないですね。』


日曜日の朝、ミサのために人が集まってくるなか、普段から早く来ているリクの姿が見えなかった。


「ん…?そう言えばそうだな。」

『どうしたんですかね。』




しばらくして、



「皆さん、大変です!!」

「どうしたリク。ミサはもう終わったぞ。」

「ち、違くて、さっき交通省の役人が立ち退きのお願いに来たんです!」


ピラッとその時に貰った予定表を皆に見せた。


「え!何よこれ!!」

『本格的に始まっちゃうんだ…』



「でも河川敷にいる奴ら全員に話をしにいくなら何でミサの所に来ないんだ?家を訪ねても留守なのに…」

「いや、1人だけミサに参加しない者がいる。そちらに向かっているのではないか?」

『?……あ、』




ーーーーーーーーーーー




『あ、ねぇあの人じゃない?』


しばらくして、向こうから歩いてくる人影を確認した。


「けっこうカチンとくる奴かも知れないですが…、あ、ニノさんは後ろに下がってください。」

「リリーも私の後ろにいろ。」



皆が警戒していると、その人は口を開けた。




「私、交通省の鈴木という、



国民様に飼育して頂いている醜い豚ですが…、うぅっ、国民様にお願いが……、」


「……寝起きのマリアの機嫌の悪さは恐ろしいからな。」

『マリア……』




ーーーーーーーーーーー




「ねぇ、リリーさん。僕達追い出されちゃうの?」

『大丈夫。大丈夫だよ。』


「(…元を考えると、父さんが動き始めた理由は…、俺…)俺が河川敷から出ていけば、…工事はないかもしれません。」




「私は、お前と皆とここに一緒にいたい!」

『そうだよ、リク。』



「追い出されるのはもう嫌だ。」



その言葉を言うニノの姿を、誰もが静かに見ていた。


「恋人のお願い、叶えてくれ。」

「ニノさん……。
そうですね、俺とした事が…。安心してください!俺がニノさんを守ります!!」


『リク、カッコいい…』

「む?」


そしてリクは携帯電話を取り出した。


「絶対に追い出させたりなんかしません!!」





ーーーーーーーーーーー




「チッ…、なんか今回はアイツしかニノの願いを叶えられそうにねぇな…。」

『どうしたの、星?』

「俺、今回はリリーのナイトになるぜ!」


バチッとウインクを決めた星。


『?ありがとう。』


「皆さん、俺は今から会社に戻ります。いろいろ準備してくるんで。」

「離ればなれなのか?」

「すぐ戻ります!この際に皆さんに注意してほしいこと言います。まずシスター!」

「なんだ。」

「何かあったら即捕まります。変装してください。銃も。」

『まぁ、危ないもんね。』

「……仕方ないな」



「あと、シロさんはうろつく時はこの前あげたスーツを着てください。」

「あぁ、あれかい?別に構わないよ。」

「それと、シロさんだけが使いこなせるであろう魔法の言葉を教えます。」


『シスターのやつ?』

「ニホンゴワカリマセーン?」


「違います。父さんの会社の人が来たらこう言ってください……、『お疲れ、今日はもうあがっていいよ。』」

「上司になった気分だね。」

『うわ…シロさんに言われたら本当に信じちゃいそう。』



「じゃあ、行ってきます!ニノさん待っててくださいね!」

「あぁ。」



ーーーーー


(シスター、変装って何にします?)

(何かあるか?)

(ぬいぐるみとか。)

(ぬいぐるみ…)

 

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