勝者





『やっぱり今年もシロさんが勝ったんですね!』

「あそこで粉が無くなった時はどうなるかと思ったけど、やっぱりリリーちゃんの応援があったからかな。」


大会の翌日、河川敷の一角では二人がマラソンの結果について話していた。


「それよりリリーちゃん。さっきから動きがカクカクしてるけど、どうしたんだい?」


先程から大きな身振りで動くリリー。


『あぁ…、実は昨日ずっと同じ体勢で寝てたんで寝ちがえちゃったんです。』

「そういえば、シスターの上にいたもんね。大丈夫かい?」

『はい、なんとか…』

「何かあったら言うんだよ。俺はそろそろ朝の白線を引きに行かなくちゃいけないから、またね。」

『あ、はい。それじゃあ。』


朝の白線って何だろう、と思いながらシロを見送った。





ーーーーーーーーーーー





それから特に何もする事が無く、ふらふらと河川敷を散歩していた時、


「お、リリー!何やってんだ?」


星が話しかけてきた。


『特に何もしてないよ。』

「何か動きづらそうにしてんな。……ハッ、もしかして怪我したのか!?」


わたわたと上から下まで見る星。


『違うよ、寝ちがえたの。』

「あ、…なんだビックリした。大丈夫か?」

『うん。ちょっと不便なだけ。』

「まぁ、あんな体勢で寝てりゃあな。ちょっとシスターに文句言ってくるかな。」

『別にそこまでじゃないからね。』

「お前もほんとシスターには甘いよな。」

『感謝してるだけだよ。』

「あと鉄人兄弟とステラ。」

『子供はね…可愛いし…』


「……俺も子供だったらなぁ…」

『急にどうしたの?』

「リリーってあんまり人に甘えないだろ。」

『…うーん、そうだね。』

「俺に甘えてほしい。」

『ぷっ、何それ。』

「ごめん、俺今自分でもひいてる。」

『じゃあたまには星に甘えるね。』

「ほんとか?またシスターのとこばっかうろつくんじゃないだろうな。」

『たまにはね。』

「曖昧だなー。マラソンでもシロに勝てないし、こういう時もシスターに勝てないのかよ…」


『うーん…、じゃあ体動かすの痛いから、教会まで付き添ってくれる?今は星にしか頼めないし。』

「!おぉ!手伝う手伝う!!」


そしてゆっくりと歩き出した二人。


『私にだって、星にしか頼めない事とかいっぱいあるからね。』

「……ん(今だけはシスターに勝ってる…!)」


すっかり機嫌を直した星を見たリリーは、ほっとため息をついた。




ーーーーー


(俺"だけ"って言葉でこんなにも喜ぶとか、俺もそうとう重症だな…)

(星もお父さんポジション狙ってるのかな。)

 

back

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -