異端な刺客




いつもは基本、人の集まらないリクの家に見慣れない影が二つあった。



「行様……橋の上からお見掛けした時は何事かと思いました…」


「……」



リクの目の前にいるのは彼の会社の社員だった。



いきなりの事態に対応しきれなかったリクは、



「何故もっと早く打ち明けて下さらなかったのですか!我々にもどうか手伝わせてください!その、


荒川を利用した発電ビジネスというものを!!」




秘書達に大きなウソをついた。





ーーーーーーーーーーー




「で、私達に部下のフリしろって訳なのね。」


本当の企業と思わせるために、リクが収集したのはマリアとシロとリリーとシスター。


「あなた方はビジュアルがマトモですからね。」

『スーツって久々かも』


四人全員にスーツをプレゼントしたリク。


「最上級のものですよ。リリーさんスカートにして大正解でした。」

「貴様どこを見ている。」

「ごめんなさい!銃下ろしてください!」


銃をしまったシスターの軽い舌打ちを聞かないフリをして、話を進めた。


「ここにいる本当の理由を知られる訳にはいかないですからね。皆さんはそのスーツで貸し借りナシです。」





「あらリク君。こんなスーツ一着で私が納得するとでも思ってるの?」

「……え?」




ーーーーーーーーーーー




「ほらもっと土に頭をつけて、ミミズになりたいって言いなさい!!」

「社長…」


リクの家で待機していた秘書の高井が様子を見に行くと、そこには土下座をしながらハイヒールで踏まれるリクの姿がいた。


「……今、こいつらに契約の取り方を教えていたんだよ…!」

『それ厳しいよ、リク。』




ーーーーーーーーーーー




「この人達がスタッフですか?」

「あぁ。彼女はマリア。」


するとマリアは高井の元に歩み寄って、言い放った。


「鏡は動かないで頂戴ね。」


高井の頭を固定しながら。


「かが…?」

「つ、次!」




「始めまして、フランツです。」


一歩前に出たシスターとリリー。


「彼らはフランツと…、えっと…、…苗字です。」

『はじめまして、苗字です。』



咄嗟のリクの発言にも動じないで対応するリリー、もとい苗字名前。

「(リリーさんの本名知っといて良かった…)」



「こちらは外国の方ですか。」

「はい」

「今までに手掛けたプロジェクトはどのような物がありますかな。」


「(高井め…面倒な質問を…、)」


「さぁ…何分数が多くて…」

「(ほっ…上手くかわしてくれたな)」







「戦争はどれも同じ…」

『シスター…』



「戦…?」

「君はもう良いから。」


瞬時にシスターを下がらせたリク。


「こちらの女性は?ずいぶんとお若いようですが。」

「あ、あぁ彼女は最年少なんだ。それでもとてもしっかりしている。」

『ふふ』


ただニコニコしているだけの名前。


「ふむ…、なかなか人付き合いの良さそうな方ですな。」

『ありがとうございます。』

「(あぁあ、こちらこそありがとうございます…)」


リクは心配いらずのリリーにひたすら心の中でお礼を言った。


「よし!それじゃあ最後は…、」


ガラガラガラ
「はっ、私ですか?」

「いや、やっぱりいい!」



白線を引きながらこちらに近付いて来たシロ。


「腰の低い良さそうな方ではないですか。ご紹介してください。」

「や、彼は本当に良いんだ!」

「社長…、」

「いいから、君は下がっていてくれ!!」




「はっ…、出すぎたマネをいたしました…」





「『…!』」



ピシッとお辞儀をして一歩下がったシロ。

本名、白井通は元大手企業の営業マンである。



爽やかな笑顔を振り撒くシロの好感度が一気に上がった高井と、頬を染める助手の島崎。



「(ありがとうシロさん…!)」



あまりの唐突なシロの行動にリクは感動していた。



「じゃ、もう場所を移動して3人で本社の話を……、」


「おーい、皆何やってんだーー!?」


遠くからやって来たニノと星と村長。


「!リリーがスカートはいてる…!」

「似合ってるぞ!」



「(絶対会わせなくなかった人達…!!)」




「…行様、ぜひご紹介に預かりたいものですね…」


「よー、何だこのハゲ?俺はここの村っ」ゴッ!!

「…行様?今、ハゲと?」

「これはうちのマスコットキャラクターなんだ。」

「あぁ、なるほど。だから着ぐるみを…」

「俺は何一つ着てなんて、」バシンッ!




「こちらのお嬢さんは?」

「あぁ、彼女は新野さん…、秘書だ!」


『にいの?……あ、ニノだからか。』



「……秘書?私と同じですが。」



「(ニノさん、そういう事にしといてくださいね。)」

「リク、トンボだ!」




「新野さん、秘書というものはとても重要な役職で……、」




『シスター、今日は昼食教会で食べますか?』

「そうだな。誰かに貰えそうにもないしな。」




「行様に身も心も捧げる覚悟が、新野におありで…、」




「リリー、今度ライブやるんだ。」

『あ、そうなの?絶対誘ってね!』




「聞いておりますのかー!!!」



「あ、あぁ!すまない高井!」

「新野様には行様への忠誠心がおありですか!?」

「そんなものはない。」

「なっ…!」

「ニ、ニノさん!」




「私はお前の恋人だぞ!」




『わぁ』

「あの…、嬉しいですが今は…、」





「恋人……、」




『高井さん?』




「恋人…っ!?そ、それは、


私よりも大切なものなのですかーーっ!!」



「ち、違うんだ高井。これは…、」

「うぅう…!だって最近本社にも帰ってこないし…!」






「え…、何…?」

『…シスター……あれは…、』

「見るな。」




シスターは十字架を握りしめながら、もう片方の手で名前の目を塞いだ。




ーーーーー


(…シスター、昼食食べましょうか…)

(そうだな。帰るか。)

(ニノ、別れるなら今のうちだ!!)

(なんの事だ?)

 

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