Re:風邪っぴき





そろそろ春が近づいてきた季節の変わり目に、体がついていけない者がいた。





『ゴホッ、シスター、おはようございますー…』

「咳き込んで…風邪か?」


シスターが振り向いた先にいたのは


『ゲホッ』

「顔が赤いじゃないか…!熱は?」

『熱くないですよ…』

「自分の手も同じくらい熱いんだから額に当てても意味ないだろ…。……十分熱い。今日は寝ていろ。今お粥をつくってやる」


おでこに手を付けて、熱さを確認してから台所に向かおうとした時、


『…シスター…』

「どうした?気持ち悪いか?歩けないか?」

『いや、その…、今日、ミサですよ…』

「…」

『皆…、待ってますから…』




ーーーーーーーーーーー




「あれシスター、リリーは…」

「アーメン!撤収!!」

「早!!」


クッキーは各自で取っていけ!という言葉を残してシスターは礼拝堂から駆け出して行った。


「えぇぇ…」

「今までで一番早かったけど一番聖職者らしい事言ってったな…」


アーメン


「リリーもいねぇし…」

「ハッ、リリーの周波が弱まっている!」


何かの電波を感じ取ったニノ。


「もしやリリーに何か…!?」

「ニノさん凄いですね」

「シスターの後を追うぞ!」

「「おお!」」
「えぇぇ…」






一方リリーの部屋では






「大丈夫か?吐き気とかしないか?」

『今のところ大丈夫です…』


ベッドに横になっているリリーにベッタリくっついているシスター。


「お粥…、あるんだが、一応食べた方が良い。起きれるか?」

『…はい…』


起き上がってお粥を掬ったスプーンを口に運ぼうとした瞬間



ボタッ
『あ…』


布団の上に落としてしまった。


「む、力が入らないか」

『す、すいません。』

「気にするな。」


スプーンを持ってお粥を掬ったシスターは、そのままリリーの口へと持っていった。


『あ、え…?』

「食べたくなくても風邪をひいた時は何か食べないと駄目だ。…ほら、あーん。」

『ぅ…、…ぁ、あーん…。』

「気持ち悪くないか?」

『だ、大丈夫です…。ありがとうございます…』

「あぁ。」


その後もシスターに食べさせてもらったリリーの元に彼らがやって来た。



ダダダッ

バァン!!
「シスター、リリーに何か…!」

「侵略者か!!」バンッ!

「ギャァ!違うって!!」


「リリーさん大丈夫ですか!?」

「死ぬな!リリー!」

『…死なないよ…』


やって来たのは星、リク、ニノ、村長、ラストサムライ、子供たち。


「「リリーさん死なないでー!!」」

『だから死なないって…』



騒がしい連中から少し離れた所にいるシスターと村長。


「リリー、風邪か?」

「はい。結構熱が高くて…。おい、お前らそんなに近付くな。迷惑だろう。」

「よし、こんな時は俺の生茹で汁だな!ちょっとひとっ風呂…」

『!結構です!!』


決死の思いで引き止めたリリー。


「なんでだよー。効くんだぞ。」

『…結構です……』

「俺もあれは止めた方が良いと思いますよ。」

「ちぇっ、なんだよ。ほら、子供は出てくぞー。」


そう言ってステラと鉄人兄弟を連れ出そうとする村長。


「なんでじゃ!ワシもリリーの看病するんじゃー!」

「僕達だってリリーさんが心配だよー!!」

「はいはい。お前らに風邪がうつったらリリーも気が気じゃなくなるだろ。」

「…ぅう、」

「早く治って欲しいだろ?」

「…うん。リリーさん早く良くなってね。」

『うん、ありがとう。』




そして出ていった4人。



『今ので少し良くなった気がする…』

「癒し効果でござるか。」

「リリー死ぬな!」

『いや…、だから死なないって。』


「お前らも早く出ていけ。そんな多人数に囲まれたら休みにくいだろうが。」

「シスターばっかズリィぞ!」

「……」カチャ

「じゅ、銃構えないでください!」

「か、帰るか!リリーお大事にな!」

「早く良くなってくださいね!」

「元気になってくだされ!」

「死ぬなよ!」



一斉に帰っていった4人。





「…はぁ、まったくあいつらは…」

『ふふ…、ゲホッ、嬉しいです。』

「でもゆっくりできないだろ。今から寝ると良い。」


『あ…の、シスター。』

「どうした?」


出ていこうとしたシスターを呼び止めたリリー。


『…私が寝るまでで良いんで…、ここにいてくれませんか…?』

「!……分かった。」



そしてベッドの横に腰掛けたシスター。



「…早く治せよ」

『はい。おやすみなさい。』

「おやすみ。」



シスターは左手でリリーの頭を撫で、右手で自分の傷跡を押さえ付けていた。


「(……堪えろ…)」


自分に言いかけたシスター。






しばらくして小さな寝息が聞こえてきた時、



「…早く良くなれよ。」



シスターは布団から出ている小さな手を一度だけギュッと握って、部屋から出ていった。




ーーーーー


(ていうかリリーの顔色っぽ過ぎて直視できなかった。)

(あ、分かるでござるよ。あの赤い頬と潤んだ目…)

(そうそう、掠れた声とかな。)

((シスター羨ましい…!))


(お前らそんな不純な気持ち抱きながら見舞いしに行ったのか。)

 

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