朝にも輝く一番星

昨日は波乱の一日。泣き疲れたせいか、クッキーを食べてすぐ寝てしまった。我ながら赤ちゃんのような生活……。


『ん…もう9時だ…』


普段はお店があるので目覚まし時計をセットしているが、ここにあるのはただの時計だ。

(こんな時間に起きるなんて久しぶり……)

壁にかかっている時計をぼーっと見ていると、その隣の扉がゆっくり開いた。
扉の向こうから顔を出したのは昨日初対面にもかかわらず子供のように泣きついてしまったその人だった。


「ん…?起きていたか。」

『シスターおはようございます。』

「おはよう、具合はどうだ?」

『はい、だいぶ良くなりました。』

「それは良かった。何かあったらいつでも言うといい。」


頭を軽く撫でてからシスターは部屋を出ていった。


(シスターがいい人で良かった。)


しばらくして、あることに気付いた。


『服…一着しか持ってないや。』


どうしようもないので昨日と同じ服のまま、部屋を出た。
シスターは広間でお祈りをしていて、女性用の修道服を着ていてもやっぱり聖職者なんだなぁと感じた。女性用の服だけど。


『シスター、普段みなさん服ってどうして…、』

バァン!!
「なあシスターー!!さっきニノから聞いたんだけど…

「侵略者か!」

ギャアア!!」

『…』


いきなり扉が開いて現れたのは星のマスクをかぶった明らかに怪しい人。ノックをしないで入ってきたのでシスターに発砲されている。

あ、ニノさんが言っていたのはこういう意味だったのね。銃刀法違反で捕まってしまうのでは??


「シスター!俺だって!お願いだから撃たないで!」

「…なんだ星か。入るときはちゃんとノックをしろ。それとなんの用だ。」

「あ、ああ!そうだ!ニノがさっき新しい住人ができたって言ってたんだけどよ、男なのか!?シスターん所で世話になってるって聞いて、もう気になって仕方ねぇんだよ。どうするニノを狙いだしたら…ッ」

「星、もう少し静かに話せ。ちなみに男ではない。リリー、こっちに来い。」


先程の銃撃戦の間に隠れていたイスの下から出て、シスターの所に向かった。


『は、初めまして…』

「あ、お、おう!リリーっていうのか?俺は星だ!よろしくな!」


星って…そのまんまなんだ…。遠くからでも分かる星型のシルエットは近くで見ると柔らかそうな素材をしていた。


「リリー、俺よくギターのライブやるんだけどよ、今度やるとき見に来ねぇか?」

『わぁ、見たいです!是非!』

「そ、そうか!じゃあライブん時誘いに来るな!」

『はい!』







カチャ
「星、用は済んだか?」


ゆっくりと星に銃を向けるシスター。


「ヒィ!」

『シ、シスター危ないですよ!』

「大丈夫だ。殺したりはしない。」


そう言ってリリーの頭を撫でながら甘すぎる笑みを浮かべた。


「シスターはマリアが…
バン!!
「ギィア!!」


『あのシスター。私、外を散歩して行きたいです。』

「あぁ、そうだな。家の視察代わりでもしてきたほうが良い。」

「じゃあ俺が連れてってやるよ。シスター、明日のミサの準備があるだろ?」

「……分かった。リリー、星に連れてってもらえ。」

「じゃあ行こうぜ!」

『はい。シスター、行ってきます。』

「あぁ。くれぐれも気を付けろ(星に)。」

「シスターそんな目で俺を見ないで。」



ーーーーーーーーーーー




いろんな話をしながら河川敷を渡り歩いた。



「えっ!22才!?」

『?はい』

「(俺と1つしか違わねぇ…)なあなあ。」

『はい』

「敬語ってなんかムズムズするからできるだけ普通に喋って欲しいんだけど。年もあんま変わんねぇんだし。」

『うーん…、じゃあ、わか、分かった。』

「おし!」










「そう言えば、家作るのか?」

『うん。出来上がるまでシスターの所にお邪魔させてもらってて。』

「じゃあ家作るの手伝ってやる。遠慮とかすんなよ!」

『うん、分かった。ありがとう。』

「(やっぱ笑うと余計可愛い…って俺にはニノがいるだろ!)」


首をブンブンふる星の様子をリリーは



(星の歌ってヘビメタなのかな。)



と冷静に見ていた。




「はっ、ニノだ!」

『え?あ!ほんとだ!ニノさーん!』

「ん?おぉ、リリーか!おはよう。」

「ニノ俺は?」


「星もおはようだ。リリー、家建てるぞ。」

『い、今から!?』

「良い場所があるんだ。教会からも近いし。日当たりも良い。」


河川敷にいたら大抵の場所は日当たり良いと思うなぁ。でも立地を気にしてくれているのは嬉しい。


「来い。」

『待ってください、ニノさん!』



ーーーーーーーーーーー




連れてこられたのは教会からは10mあるか無いかの平地だった。


『教会のお隣って感じですね。』

「リリーも泊まってる所と近い方が楽だろ?」


ニノさんの優しさに心が温かくなった。


『ニノさん、ありがとうございます。助かります。』


と、そこへ


「おー、場所決まったか。」


緑色の物体が近付いて来た。


『村長…』

「リリー、だいぶ顔色良くなったな。早くここに慣れるように頑張りすぎず頑張れよ。」


頭をぽんと撫でられて、最近頭撫でられるの多いなぁと思いながらもその心地よさに恥ずかしさと嬉しさを感じた。
シスターがお母さんで、村長がお父さん…。


「でも家を作り始めるのは明日からにしろよ。ミサの後リリーの歓迎会あるからな。」

『歓迎会?』

「あぁ。パァと盛り上がるぜ?皆に話したらきっと全員手伝ってくれるだろうからな。」

『全員!?』

「人数多い方が助かるだろ?」

「リリー私は手伝うぞ。」

「俺も、さっき言ったしな!」




ここの人たちは心が温かい。


『あ、ありがとうございます。』


照れてちょっと顔が熱いが、また笑顔が浮かんできた。


「(ほら、やっぱ笑うと可愛いんだよ!)」

「リリーの作り笑いじゃない笑顔初めて見たな。私はそっちの方が好きだぞ。」

『あ、あは、は。』


営業スマイルが板についてるのも考えものだね……。



ーーーーーーーーーーー



ニノさん達とおしゃべりをしながら、貰った魚を食べているとそろそろ夕方になるので教会に戻ることにした。


『すぐそこだから送ってくれなくても良かったのに。』

「いや、たとえ数mでも油断しちゃいけねーんだよ。」

『星って紳士だね。』

「当たり前だろ?俺なんだから。」

『ふふ、意味分かんないよ。それじゃあ、今日はありがとう。』

「おう。また明日な。」


リリーがドアをノックして開けようとした時、何かを思い出したように振り向いた。



『ライブ楽しみにしてるね!おやすみ!』



ドアの向こうにリリーが消えてから、星はずるずるとその場にへたりこんだ。



「(あれはズルいだろ……!!)」




ーーーーー


(星に何か嫌な事とかはされなかったか?)

(はい。とっても優しくて良い方でした)

(やはり私も行くべきだったか…)

 

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