時が経っても変わらない






リリーは長靴を返すために星の元へと向かっていた。









ワンピースを身につけて。








コンコン
『星ー』

「ん?リリーか…、ってリリーどうしたんだよ。それってこの前俺が買った…」

『はい、長靴ありがとう!私これから買い物しに行くの。』

「あ、なるほどな。買い物か〜……、




……俺も行って良い?」

『良いよ』

「お、おぉ!ありがとよ!じゃあ、今準備を……、……、」

『?どうしたの?』


星はトレーラーの中に戻ろうとしたが、ピタリと動きを止めてしまった。


「……ちょっと待ってて…」

『?うん。』


バタンと扉を閉めた星。




ーーーーーーーーーーー




「やばいやばいやばいやばい。どうしよ。」


扉の向こう側では星が頭を抱えて唸っていた。


「普段は一人だから特に気にしてなかったけど……、ぅ…、ぁ…、ぁぁああ!!どうすりゃ良いんだ!



俺のスッピン!!」


マスクに手を付けながら上げ下げを繰り返していた。


「スッピンはニノに捧げるって……、決めてた…、……決めてた?何で過去形?でもリリーになら見せても……、いや、でもな、これって……、


ラストサムライと一緒じゃねぇか…!!」


星は床に両手を付けて項垂れた。




『星ー?』

「ハッ!

……よし…、俺も男だ!心を決めるぜ……!」




ーーーーーーーーーーー




『そんなに準備かかるのかな…?』



「待たせて悪いな、リリー!」


勢い良く扉を開けて出てきた星。



『あ、星……、








……誰?』




トレーラーから出てきたのは赤茶色の髪の男。


「…あ、あんま見んなよ!恥ずかしいから!」


その声は今までに何度も聞いた声で。


『え……星?』

「おぉ………お、俺のスッピン見れるなんてレアもんだぜ!」

『星のマスクの下ってそうなってるんだね…』

「…化け物とでも思ってたのかよ。」

『いや、マスク姿が自然だったから…。カッコいいね。』

「は!!?」

『買い物行こう。』

「……おぅ」



そういう事をさらっと言わないでくれ!






ーーーーーーーーーーー



生活用品を揃えた後に行き着いたのは喫茶店だった。


『このケーキ美味しい!』

「ほんとだ!安いのにな!」


二人がケーキを食べている席と少し離れた席から会話が聞こえてきた。




「あの人カッコよくない?」

「あ、思った〜。大学生位かな?めっちゃカッコいいよね。」

「向かいの人、彼女じゃない?」

「やっぱし?でも彼女の人も可愛いよね。」

「ね〜めっちゃ美男美女」






リリーはケーキに夢中で全く気付いていなかったが、星にはばっちり聞こえていた。



「(…やっぱり俺達、恋人同士に見えんのか!?)」


『どうしたの星。ソワソワして。トイレ?』

「いや…何でもない。」


雰囲気もへったくれも無い。




ーーーーーーーーーーー




『美味しかった〜』


喫茶店を出て、二人はデパートの中を歩き回っていた。


「そうだなー。腹一杯。」


他愛も無い会話をしていた時、




「あれ?名前ちゃん?」

「あー、苗字さんじゃん。久しぶり〜」


3・4人の男子グループに会った。


『?……あ〜、と、高校、の…?』

「……誰?」

『えっとね、高校の時の友達…、かな?』


「えー、忘れられてんだけど」

「まぁ確かに話したことはあんまり無かったけどな!」


目の前でケラケラ笑う彼らを前に、星は眉をひそめた。


「……」




「ていうか隣にいるの彼氏?俺、超残念なんだけど。」

「え、同い年?」

『や、いや、この人は、……!』


グイッと急に横から引っ張られて、気付けば星の片腕の中に収まっていた。



「彼氏だけど?分かったらさっさとどっか行ってくんないかな。邪魔だから。」



できるだけ笑顔で対処しようとしても、口の横がひきつっていた。


『な、何言って…!わっ!』


反論しようとしたら更に抱き締められて、口がきけなくなった。


『んー!』


「うわ、熱…!」

「じゃ、じゃあな!」



瞬時に消えていった男子グループ。





「……ふん。」




『んーー。』

「あ?…わ、悪ぃ!!」


バッと離した星。


『ぶはっ、ビックリした。』

「悪かった…、つい…」

『え?いや、追い払おうとしてくれたんでしょ?私、あの人達あんまり知らないし苦手だし…。ありがとう星。』

「え〜…、や…、良いんだけどさ。それならそれで…」

『?』

「…帰るか。」

『うん。』




ーーーーーーーーーーー




河川敷に帰って、星はすぐにトレーラーに向かった。


「ごめんな。なんか今日慌ただしくて。」

『全然気にしてないよ。星のせいじゃないし、それに楽しかった。』

「ほんとか?」

『うん。星がよければまた今度行こう?』

「お…、おう!あ、やべ、誰か通る!ちょっと待っててな!」

『?うん。……何かあるのかな?っていうか朝と一緒だ。』


しばらくして、マスクを被った星が出てきた。


『あ、星だ。』

「なんだよそれ。…教会まで送っていくから。」

『え?いいよ〜すぐだし。』

「油断しちゃいけねぇんだよ。リリーは、女の子なんだから。」

『初めて会った時も送ってくれたよね。ジェントルマン。』

「ほ、ほら、行こうぜ!」

『ふふ、うん!』


その後、教会の前に立っていたシスターを見つけた星はだいぶ離れた所で別れを告げた。



ーーーーー


(どこに行っていたんだ?リリー。こんな時間まで…)

(買い物に行ってたんですよ!楽しかったです!)

(そうか。晩御飯できてるぞ。)

(はーい)

 

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