君と私のとある1日






季節は冬真っ盛り。

荒川も氷のように冷たくなっているにも関わらず、並外れた仕事をする少女がいた。




『ニノーー…』



「なんだ、リリー。」



河辺から橋の上にいるニノを見上げて話しかけた。



『こんな冷たい川じゃ何も釣れないでしょー』



ニノはいつものように、仕事である釣りをしていた。


「そんなこと無いぞ。季節によって釣れる物も違ってくるんだ。」

『ワカサギとか?それならここでは釣れないと思うよ。』

「ワカサギ?とやらは知らないが…、…お、釣れたぞ。」



ニノが竿をひいて川から釣り上げた物は



『…缶?』



ビールの缶だった。



「よく上流から流れてくるんだ。こいつのせいで魚が傷付いてしまうからな。」


そう言って釣り上げた缶を隣に置いてあった袋の中に入れた。


『ニ、ニノ……!』


なんて良い子なんだろう。


「もしかしてこれがワカサギというやつか。」

『んーん、これはビールの缶だね。』

「だが釣竿じゃ少ししか取れなくてな。前に潜って取ろうとしたらリクに止められた。」

『それはリクによくできましたを差し上げるかな』

「この川は綺麗なままであって欲しいんだ…、…お、また釣れた。」

『……』


それからニノは少しずつ、缶などのゴミを釣り上げていく。それを見ていたリリーは、何かを考えてその場を後にした。




ーーーーーーーーーーー




「ん?どした、リリー」

『星、貸してほしい物があるの。』


リリーが向かったのは星のいるトレーラーだった。


「おう、俺が用意できる物ならなんでも良いぜ」

『あのね、長靴貸して欲しいの。』

「長靴?かまわねぇけど…。ちょっと待ってろよ、…っと。」


そうして星が取り出してきたのは少し大きめの長靴。


『ありがとう、星!明日返すね!』

「おー…
……何するんだ?」


走っていくリリーの背中にポツリと呟いた。




ーーーーーーーーーーー




「ん?リリー。帰ったんじゃないのか?」


再びニノの戻って来たリリーは長靴を履いてゴミ袋を持っていた。


『ニノ、私も手伝うよ。』


そう言って河の中へと足を進めた。


「私なら大丈夫だ。お前も風邪をひいたらどうする。」

『長靴履いてるから大丈夫…、あ、さっそく見つけた。』


所々にあるゴミをすくって袋に入れていく。


「…寒くなったら早く上がるんだぞ。」

『うん、ありがとうニノ。』


深い所には行かないように気を付けて慎重に探した。




ーーーーーーーーーーー




「リリー、暗くなってきたからもう帰ろう。」

『あ、もうこんな時間になったんだ…』


気が付けば辺りは陽が落ち始めていた。


「結構浅い所にもあるもんだな。」

『ニノもたくさんだね。』


二人で袋を見せあった。


『ちょうど明日は缶の日だから私捨ててくるね。』

「良いのか?悪いな。」

『うん。それじゃあニノ、また明日。』

「あぁ、またな。」


教会に帰って、二人分の袋を建物の裏に置いた。




『今帰りました』

「あぁ、おかえり……、…どうしたんだ、びしょ濡れじゃないか。」


早々にタオルを持ってきて腕や髪を拭いてくれたシスター。


『ニノと川のゴミ拾いしてたんですよ。水跳ねちゃったりして濡れたんです。』

「そうか、温まってから寝ると良い。今スープを作ってやる。」

『わあ、ありがとうございます。』


明日のゴミ捨てに間に合うように、スープを飲んだ後ですぐに寝た。




ーーーーー


(リク、今日リリーとゴミ拾いしてきたんだ。)

(あ、そうなんですね。怪我しませんでしたか?今度は俺も誘ってくださいね。)

(あぁ、今度は皆で一緒にやろうな。)

 

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