風邪っぴき



「「へっくしゅ!」」



今日も穏やかな河川敷で2つのくしゃみが聞こえた。


『二人とも、風邪?』


ズズッと鼻をすする鉄人兄弟にリリーが聞いた。


「うん…、昨日から鼻水が止まらないんだ…」

「僕たち二人とも風邪ひいたみたい…、っくしゅ!」

『わーわー、もう寒いからね、ほらこっち来て。上着貸してあげるから。』

「星さんの?」

『いや、私が買ったやつ。暖かいよ。』

「じゃあ着るー!」


無意識に受け付けられなかった星。


『鉄郎はマフラーと手袋だけだけど、良い?』

「良いけど、リリーさん寒くないの?」

『私はこのくらい平気だよ。』

「ありがとう!」

「あったかいー!」

『あまり薄い格好で外出ないようにね?』

「うん!」

「…くしゅ!…気をつける!」


『うん。二人とも熱は?』

「んー、よく分かんない…」

『手貸して…、って、あっ!熱出てるじゃない!』


二人の小さな手は自分のとは比べ物にならない位熱かった。


『咳だけかと思ったら熱出してたなんて…大変…!』


顔が見えないのですぐに気付けなかった。


「どうした、リリー」

『ニノ!』


振り向くといつものジャージ姿のままのニノがいた。



『鉄人兄弟たちが風邪ひいちゃって…』

「そうなのか。おい、大丈夫か?」


優しく鉄人兄弟に話しかけるニノ。


『教会に薬とかあるかな…』

「そういえば今朝、星もぐったりしてたな。」

『え?』

「ラストサムライの美容室も閉まってたし。」

『それって…』



集団感染だ…




『とりあえず私は二人を教会に連れていくね。』

「あぁ」

『後で星のとこに行ってみる。』

「分かった。それじゃあな。」





ーーーーーーーーーーー





『シスター』

「ん?どうしたリリー。鉄人兄弟も、どうしたんだ?」

『二人とも風邪ひいてるんですよ』


リリーの両隣で手を繋ぎながらぐったりしている鉄人兄弟たち。


「そうか、部屋に連れていきなさい。私はタオルを用意してくる。」

『はい、お願いします。』





ーーーーーーーーーーー





「リリーさん、ごめんなさいー…」

『大丈夫だよ。早く治るようにゆっくり寝てて?私はちょっと星たちの所に行ってくるね。』

「すぐ戻ってくる…?」

『うん。何かあったらシスターに言うんだよ?』

「「うん…」」



そうしてリリーは星のトレーラーへと向かった。


コンコン
『星いる?』








反応がなかったので引き返そうと思ったその時。



ガチャ
「リリー…?」


マスクをして、ぐったりしている星が出てきた。



『わ!星大丈夫!?』

「なんでここに…?」

『ニノが教えてくれたの。鉄人兄弟たちも風邪ひいてて…今教会にいるの。』

「集団感染か…」

『星も行こう。その様子だと何もしないで寝てたでしょ。』

「ゴホッ…悪ぃ…」


そうして星を運ぼうと肩に手をまわした時、


「リリー、大丈夫か?」

「手伝いますよ!」

『ニノ!リク!』


「ニノさんから聞きました。ラストサムライの所にも行くんですよね?星は任せてください。」

『ありがとう!』

「チッ…良いところ見せやがって…」

「ほら行くぞ。」





ーーーーーーーーーーー





『ラストサムライー?』


彼の仕事場に訪ねても見当たらなかった。


『風邪じゃなかったのかな。』


そうしてリリーは教会へと引き返した。




その道中


『………ん?』


「う……ぅ…」



道のど真ん中で倒れている瀕死のラストサムライを見つけた。


『ラ、ラストサムライ!?大丈夫?そんな、道の真ん中で…』

「ゲホッ、リ、リリー殿…で、ござるか…?」

『うん。やっぱり風邪だったんだね。立てる?とりあえず教会に行こう。皆いるから。』

「承知…」


のろのろと体を上げたラストサムライはそのまま教会に連れられた。





ーーーーーーーーーーー




『シスター、帰りましたー』

「あぁ、おつか、れ……」

『?どうしたんですか、シスター。ラストサムライも部屋に運んできますね。』

「待て。私が連れて行こう。」

『え?あ、ありがとうございます。』


リリーからラストサムライをベリッと剥がしてそのまま連れて行った。


その後ろについて行って来客用の部屋にたどり着くと、



「ぶぇっくしゅ!!…ぅ…、あ、リリーさん…!!」

「やっと戻ってきた〜…!」

「ゲホッ、おい、騒ぐと熱上がるぞ…」



『これは……』

「おかえりなさい、リリーさん。」

「皆風邪だな」


地獄絵図のようだった。


『ニノとリクは大丈夫なの?』

「俺は普段から予防をしっかりやっていますからね。」

『さすがだね。ニノは?』

「金星人は風邪をひかないんだ。」

『あ…そっか』



久々の金星ネタだった。



「リリーさん、僕たち死ぬの…?」

『死なないよ、大丈夫大丈夫。』


鉄郎の隣に行って頭を撫でた。


「ケホッ、リリーさん、僕もー…」

『はいはい。早く治ってねー…』

「リリー、俺もー」

「調子にのるなよ、星。」

「うっせリクルート。」


『星は良さそうだね。ラストサムライ、一言も喋ってないけど大丈夫?』

「ラストサムライが一番熱が高い。」

『え!そうなんですか!?そりゃ道端に倒れてるわけだ…』

「ぅ…、リリー殿…」

『どうしたの?』

「…うつらないように離れててくだされ……」


『ラストサムライ……!この部屋にいる時点で元も子も無いけど、私の事気にしなくて良いよ。ありがとう』

「ゴホッ…、かたじけない…」




『シスター、何か薬とかないですか?』

「こんな多くは無いな…」

『じゃあ自然治癒ですか…』



その時




バンッ!
「俺にまかせろ!!」




『村長!』


ドアを開けて、村長が勢いよく入ってきた。


「村長…!」

「そうか…!村長なら…!」


『え、え?何?』
「なんで村長が…?」


リリーとリクはこの状況についていけないでいた。


「皆、コレを飲め。」

「やったー…!これがあれば…!」

「村長、ありがとよ…!!」


皆で村長から渡された液体を飲んだ。


『あれ、何ですか?ていうか何でここに…』

「ニノに呼ばれてな。あれは俺が生み出した"河童の生茹で汁"だ。」

『えーと、ちょっと待ってください。とりあえずニノを褒めます。ニノ、用意周到だね。』

「当たり前だ」


サムズアップするニノ


『で、生茹で汁って何ですか。』

「そのまんまの意味だ。メイドイン俺の茹で汁だ。」

『……皆、飲まないで!!』

「…リリーさん、もう遅いですよ。」





ー次の日ー




「「「治った!」」」


『「マジか」』



全員完治した。



ーーーーー

(こういう時って普通、次はリリー達が風邪ひくだろ。)

(私はなんともないよ。)

(俺も予防してるから。)

(私は金星人だからな。)

(……)

 

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