「荷物お届けに参りましたー」
お店の片付けをしていたリリーの元に配達が来た。
『あ、三井さん。いつもご苦労様です。』
届け物を持ってきたのは配達でお得意様の三井さん。
「苗字さん、頼まれたもの持ってきましたよ。」
『わぁ、早く届いて良かったです。』
冬の間も花を枯らさないようにいろいろと取り寄せた物がトラックから運ばれた。
「今日も寒いですよね。」
『そうですね。あっという間に冬になっちゃって。』
他愛もない会話。
それでも河川敷にとってはまともな会話だった。
「あら?リリー、その人誰?」
『P子。この人はうちの配達員の方だよ。』
「そうだったの!初めまして!」
「あ、は、はい。初めまして。」
河川敷に来るのは5・6回あったのでリリーという名前や、ここの住人の奇行などにはだいぶ慣れていた。
コソッ
「リリー、村長とまではいかないけどなかなか格好いい人じゃない!」
『もう、P子…』
軽くリリーに耳打ちしたP子。
「お、P子にリリーじゃねーか。何してんだ?」
「あれ、リリーさん、その人誰ですか?」
そこにやって来たのは星とリク。
「あんたたち…ここ最近ずっと一緒にいるわね…」
「なんだその目は!!」
「その思考止めろ!たまたま居合わせたんだよ!」
「えーと…」
『三井さん大丈夫ですか?』
「はい、なんとか…」
「なぁリリー、そいつ誰だ?」
『この人は三井さん。私のお店の配達員だよ。』
「配達員…?俺が頼んだのはどうしたんですか?」
『三井さんは備品を売ってる会社の配達員さんなの。昔からうちのお店のものは三井さんが納品に来てくれるんだよ。』
「あ、そうなんですか。初めまして、俺はリクです。」
「俺は星だ」
「星…は、はい、よろしくお願いします。」
リクは常識人を見つけたと喜んでいた。
だがその反対に、星は不機嫌だった。
「どうしたんだよ、星。」
「あいつ…リリーと仲良さげにしてるから…」
「小学生か!」
P子は村長見かけたので追いかけて行った。
「じゃあ苗字さん。俺、中に運びますね。」
『あ、はい!お願いします。』
「苗字さん…?」
『え?なに星。さん付けなんて…』
「リリーさん…苗字って…?」
『あ、私の本名』
「マジか!」
「フルネームは!?」
『苗字名前』
「おい何さらっと聞き出してるんだよ」
「リリーの本名か…初めて知った…」
『そんな驚く事かな…』
「俺の知らないNewリリーがまたひとつ知れてテンション上がったわ。」
『そう?』
「苗字さん、終わりましたよ。」
『ありがとうございます。』
「じゃあ俺はこれで」
『あ、お疲れ様です。』
「はい、それじゃあ。」
三井はトラックに 乗り込んで去っていった。
「爽やかな人だな…」
『さて、中の物整理しなきゃ。』
「何か手伝うことありますか?」
『んー、や、大丈夫かな。ありがとう。』
二人はシスターでも知らないような事が知れて常時ご機嫌だった。
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(どうしたリク。いやにご機嫌だな。)
(あ、ニノさん。ニノさんはリリーさんの本名知ってますか?)
(ん?あぁ。エプロンの裏に名前が書いてあった。)
(…知ってた……)