蕾の気持ち





-歓迎会当日-




「ステラといいます!早くこの橋の皆と家族(ファミリー)になりたいデス!」

「(お前の狙っているのはファーザーの座だろ!)」


虚しく響くリクの心の声。




挨拶が終わり、皆が騒ぎだした頃、


「リリー、ってあなたデスカ?」

『あ、ステラちゃん。そうだよ、私リリーっていうの。よろしくね。』

「ハイ!…それで、ちょっと良いデスカ…?」





ーーーーーーーーーーー




『どうしたの?結構皆から離れちゃったけど…』

「そっちのが都合良いわい…」

『え…?』

「ワシと勝負せぇ!!」


そう叫ぶと同時にステラはリリーへと殴りかかった。


『わ…!』


それを間一髪避けても、また次々と攻撃が繰り出される。


「ワシにはシスターしかいなかったんじゃ!!親のいないワシをシスターが助けてくれた!なのにお前みたいなヤツがシスターと暮らすなんて許せん!!」

『!』



ステラのパンチはあまりにも乱暴過ぎて、見切るのは容易だった。



『ステラちゃん、落ち着いて…!!』

「うるさい!!」


ガッ
『っ…、痛…』


思いっきり腕を蹴られたリリー。


「お前に何が分かるんじゃ!」

『分かるよ』


リリーは両手をバッと前に出した。そこで触れたステラの腕を掴む。


『分かるよ。淋しいよね。甘えられる人がいないから、シスターに会って凄く幸せだったって分かる。私もシスターに、この橋の皆に出会って幸せだもん。
私、ステラちゃんからシスターを取ろうなんてしないよ。』


そう言ってリリーはステラを抱きしめた。


『大丈夫』

「!!」


それからしばらく抵抗していたステラの腕は力無く落ちた。


「うぁ…、ひっ、ぅ…、うわぁぁぁぁあん!」


その姿を見て、リリーは思った。


『(最初の頃の私と一緒だ…)』


きっと溜まっていた感情が爆発したのだろう。リリーは優しくステラの頭を撫で続けた。






しばらくして、ステラは自分の腕の中で寝てしまった。


『…ふふ』


その小さな体を抱え、今だ賑わっている人の中に戻って行った。


「ん?リリー、どこに行っていたんだ?ステラも見ないと思ったら一緒にいたのか。」

『ふふ、ちょっとガールズトークをしてたんですよ。』

「そうか、すっかり疲れてしまったようだな。」

『ステラちゃん、このまま私の所に寝かせてきますね。』

「あぁ、すまないな。」

『大丈夫です。』





「リリー」

『はい?』

「ありがとう」





シスターは微笑んでから、向こうへ行ってしまった。


『(シスター、全部分かってるみたい…)』


敵わない、と笑みがこぼれた。



ーーーーーーーーーーー




教会の自分のベッドの上にステラを下ろすが、離してくれなかった。


『…甘えん坊』


リリーはそのままステラの横で一緒に寝た。


『可愛い』




ーーーーー


(あ、シスター、ステラちゃんはどこに…?)

(ん?リクか。ステラなら寝てしまったのでリリーが教会に寝かせに行った。)

(あ、そう…ですか。(タイマンは無かったのかな…?))


 

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