星とデート!




『いい天気…』



秋、木曜日のお昼。今日はお店がないので、リリーは河川敷を離れ(元)家の近くを散歩していた。


その時、前方に高校生程度の年の女の子3人が歩いているのを見かけた。きらきらして、可愛くて、女の子らしい服を着ている。


ふと自分の格好を見ると、いつも星に貸してもらっているTシャツとジーパン。

文句を言うつもりはこれっぽちも無い。むしろお礼を言っても言い足りない位で。それに星のファッションセンスはずば抜けているからカッコいいものばかりなのだ。



それでも、



『(たまには女の子っぽい服、着てみたいな…)』



それからは自然に足が動いて、気付けば河川敷に戻って来た。



『でも贅沢は言えないよね…。星が貸してくれるだけでもとんでもなく有り難いんだから。』

「さっきから1人で何ぶつぶつ呟いてんだ?」

『え?わ!星!!びっくりした〜…』


音もなく真後ろに立たれるとなかなか怖い。


「ん?悪い悪い。それで?何してたんだよ。」

『や、何でもないんだ…ほんと、くだらない事だから。』

「別に良い。俺も暇だからリリーと話してたいし。」

『愚痴みたいになっちゃうかもしれないよ?』

「構わねぇよ。」

『…あのね?』





ーーーーーーーーーーー




「なんだ、そういう事だったのか…」

『星の貸してくれる服は凄くありがたいの。でもたまには女の子らしい格好してみたいな〜…って』

「そりゃそうだよな。女の子だし、オシャレしたいんだろ?」

『うん。…って言っても別に良いんだけどね!そんなデートとかならまだしも、私のただの我が儘だから、』

「じゃあ、オシャレしたら俺とデートしようぜ。」

『え?』

「駄目か?」



元気を出させるための嘘だとしても、星は少し不安げで軽く顔も赤くなっている。

そんな風に聞かれたらもう、


『い、良いよ…』


としか言いようが無い。


「マジで!?マジでマジで!?よっしゃあぁぁあ!!」

『…?』



今日の星はおかしい。



「よし、んじゃあ着替えに行くか!ついて来いよ。」

『え?え?どこに行くの?』


星について行き、たどり着いた場所はよく知っているが、一度も行ったことが無かった所だった。


『リクの家?』


何故リクの家なんだろう?


ガチャ
「邪魔するぜー」

「あ?んなっ、星!何しに来たんだよ!入んならノックしろ!」

「まぁ、そうごちゃごちゃ言うなよ。連れもいるんだから。」

「はぁ?誰を連れて来て…」

『あ、お邪魔して良いのかな…?』

「リ、リリーさん!?何でここに…!」

「リク、ちょっと耳貸せ。」

「なんだよ…」


そうして星とリクは密談を始めた。




ーーーーーーーーーーー




「そういう事だったのか…リリーさん!!」

『え?あ、はい!!』


1人でリクの家の中にあるものを観察していたらいきなり呼ばれた。


「任せてください!リリーさんが困っているならいくらでも手を貸しますよ!ちょっと待っててくださいね。」

『?…?』


まったく話についていけないリリー。


「(俺のオアシスを救ってみせる!)リリーさん、この中から気に入った服いくらでも選んでください。」


リクは棚から大量のファッション雑誌を持ってきた。もちろん市ノ宮の経由のものである。


『わぁ、ファッション雑誌なんて久しぶりに見た!』


楽しそうに雑誌の服を眺めるリリー。

星はその様子を嬉しそうに、静かに笑って見ていた。


「……なぁ星。お前、今日はいつもよりキモいんだけど、何かあったのか?」

「あ?喧嘩売ってんのか?…まぁいいや。

なんでもねぇよ。ただ、リリーのあの顔はあんま見たくねぇなってな…」

「あの顔?」

「リリーが河川敷に来たばっかの時と同じ顔だよ。ま、お前は知らないだろうけどな。」


1人で草むらの上に立っていたリリーに話しかけると、出会った頃のような作り笑いで言葉を返された。


「(距離があいたみたいで、嫌だな。)」

『ねぇ、星。』

「ん?あ、あぁ、どうした?」

『服、星が選んで?』

「え、良いのかよ?お前の服だろ?」

『うん。星センス良いし、それに星とデートするなら星の好きな格好したいもの。』

「っわ、分かった。雑誌貸せ。」




「ちょっと待て」

「なんだよリク」

「今どうしても聞き流せない単語があったんだけど。リリーさん、こいつとデートするんですか…?」

『…?うん。誘われたし。』

「危険です!回避してください!」

「どういう意味だ!ったく、リリー、これどうだ?」


星が選んだのは白いワンピースに薄ピンクのカーディガンのセットと、焦げ茶色のブーツ。


「もう秋だしな。正直女物の服決めるなんてしたことねぇから自信無いけど。」

『全然良いよ!凄く可愛い!えーと、いくらかな…』

「あ、リリーさんお金はいいです!」

『どうして?』

「これ、俺の会社が経由してる所なんで支払いは結構です!取り寄せますよ」

『リクってお金持ちなんだね…!ありがとう!』

「構いませんよ、これくらい。」


そう言ってリクは携帯を取り出した。


「もしもし、俺だ。大至急商品の取り寄せをして欲しい。」




-10分後-




「リリーさん。届きました。」

『早っ』


リクから受け取った荷物を確認すると、先ほど星に選んでもらった服。


『…リク、星、ほんとにありがとう。』

「喜んでもらって嬉しいぜ。」

「俺も良かったですよ。でも、1つ良いですか?」

『なに?』



「星とデートするなら俺とニノさんと一緒にしませんか?」



一応恋人同士のリクとニノ。


『Wデート?』

「な、なに言ってんだ、リクルートが!」

『良いね!楽しそう!』

「エッ」

「じゃあ今から行きましょう。ニノさん呼んでくるんでちょっと待っててください。」


そう言って出ていったリク。


「(なんだよ…、せっかく俺が決死の思いで誘ったのに…)」

『楽しみだね、星!』


本当に楽しそうな笑顔を向けられて星はため息を吐きつつも、つられて笑みを浮かべた。


「(…はぁ、ま、楽しそうだし、いっか…)」




その時


だだだだっ

バンッ


「リリーいるの?」

『P、P子?』

「駄目だぞ、P子。まずはノックをしなければならないんだ。」

「なんでP子もいるんだ…?」



「P、P子、俺んち荒らさないでくれ!」

「おい、リク。何があった。」

「それが…」




* * * * * * *



「ニノさんどこにいるんだろう…。それにしても星のやつ、うまくシスターの目を盗んだな…。あ、いた!ニノさーん!」


やっと見つけたニノはP子と話をしていた。


「ん?リクか。どうした?」

「ニノさん、これからデートしましょう!星とリリーさんもいるんです。リリーさんいつもの服じゃなくて、オシャレしてるんですよ。」

「リリーのオシャレ!!」

「リリーがいるのか!リクどこだ!」

「あ、俺の家にいますよ。」


すると二人はもの凄い速さで走っていった。


「えぇぇええ…」



* * * * * * *




「という事だ。」



リリーに会いたくて走ってきたニノと、リリーのオシャレ姿を見たくて走ってきたP子。


「まだ着てないのね、早く見たいわ!」

「リリー、ちょっと待ってろ今、魚を…」

「ほら男子は出ていって!」


そうして追い出された二人


「ここ俺んちなのに…」

「リク、また覗くんじゃねぇぞ。」

「また、ってなんだ!覗かないわ!!」



ーーーーー


(おぉ、似合うぞ!リリー!)

(ほら、髪もほどいて!やっぱり可愛いわ!)


(自分の身に何がおきてるんだ…)

 

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