短編 | ナノ

 背中越しの心音



6月某日、梅雨。


雨で増水した川によって家を流された放浪組が避難所であるリクルート宅にお邪魔する事となった。


「本当に邪魔だな」

『まぁまぁ、そう怒んないのリク。』


そう言って名前はクローゼットの中を物色し始めた。


「何やってるんですか!?ちょっ、やめ、やめてください!
シスター!シスター!!」


「なんだリクルート。騒々しい。」

「名前さん、どうにかしてくださいよ!」

「ふむ…。名前、あまりリクルートに迷惑をかけるな。こっちに来い。」

『は〜い』


そうしてシスターの隣にちょこんと座る名前に、リクはようやくホッと息をついた。


「って、星!!タバコ吸うなって言ってんだろうが!!」



『シスター』

「なんだ?」

『雨がやんで教会に戻れたらさ、またクッキー作ってね。』

「どうしたいきなり。」


シスターは優しく名前の頭を撫でた。


『雨が続いて遊べないから、なんか、寂しい。』

「…名前」


そして、シスターは軽々と名前を抱き上げて自分の膝の上に座らせた。


『シスター?』

「いくらでも作ってやる。だから雨が止むまでもう少し待っていろ。」

『うん』

「ただ、」

『ん?』


名前はシスターの胸に背中を預けながら言葉の先を待った。


「私は、今はまだ雨は止まないで欲しいんだがな。」

『えー…、なんで?』



「お前とこうして居られるからだ。」



『……そうだね。』




背中越しの心音




(俺ん家じゃなくてよそでイチャつけ!よそで!!)
(リクルート、静かにしろ。近所迷惑だぞ。)
(アンタらの方がよっぽど迷惑だ!!)
 
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