短編 | ナノ

 大切な君だから


今日も青空広がる河川敷。こんな日はあの人が喜びそう。


『あ、やっぱり。』


すぐ見つけることができた。人一倍目立つ彼は呑気にちょうちょと戯れていた。


『そーんちょう』

「お、名前か!今日あったかいよな〜。昼寝日和じゃねぇか?」

『そうかもしれないね。まだ昼じゃないけど』

「だろ?だから膝枕して。」

『だからの意味がよく分からないんだけど。』

「堅いこと言うなって。よっこらしょ」

『あ、ちょっと、勝手に』


お構いなしに膝に寝ころぶ村長。


『(まったく、人の気も知らないで…)』

「なぁ、名前…」

『ん?』

「…ぐ〜」

『寝るの早っ』


村長がいなければずっこけるところだが、それは抑えてため息を吐く。


『しょうがないな…』


それからはおとなしく村長を観察していた。このスーツは着ていて暑く無いのかな。

一体脳内はどうなってるんだろう。P子が熱烈なアピールしても気付かない鈍感だし。私が熱を帯びた視線を送っても気付かないし。

よく考えると好きになった理由が思い出せないや。



『ふぁ〜ぁ…』


ずっとうとうとしていたら、ついに意識が無くなった。





ーーーーーーーーーーー





『…あれ』


寝てしまったと思ったら、草むらではないものに頭が乗っかっていた。


「ん?起きたか〜?」


視界の斜め上に緑色が映って、


『え…、そ、村長…?』


整理すると、私は、村長に膝枕をされていたのである。


「んー。俺が起きてもお前寝てるしよー。」

『だっ、だからって膝枕しなくても…。起きなかったらそのままほっとけば良いし…』

「そんな事するわけにいかねぇだろ。好きな奴その辺にほっとく男なんていねぇよ」

『………はぁ!?!?』




大切な君だから


(よし!素潜りでもしてくるかな!)
(あ、ちょっ、言い逃げすんな!!!)
 
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