短編 | ナノ

 お昼寝



『んー、今日も良い天気だー!』


青空の下で背伸びをする少女が一人。
ちょうど良い涼しさの風を感じるためにここ荒川の河川敷を道なりに散歩していた。


「お!名前、探したぜ!」


星のトレーラ付近へ歩いている途中でギターをいじっていた本人に声をかけられた。
探したという割に全然探していないということは急ぎの用ではなさそうだ。

『どうかした?』
「向こうの草むらでリクルートがガン寝してるからよ。呑気な顔でも拝みにいかねぇか?」
『あはは。面白そう!行こ行こ!』





ーーーーーーーーーーー





『本当にぐっすりだね…』
「呑気な野郎だぜ」
『でもちょっと可愛いかも』
「あぁ!?ど、どこが!?」

「ん…」

『あ、起きちゃう?』
「いや、寝てるだろ」


「んん…名前さん……」


静かなそよ風に乗ったその寝言は星の耳に入り、彼の顔は瞬く間に般若の面持ちになった。

「あ゛ぁん!?」
『私?』

「駄目です…ほ…星は、危ない…です…よ…」

『どんな夢??珍しく気の抜けたリク〜私もなんだか眠たくなってきちゃった』


むにゃむにゃと放っておけばまだ何か喋りそうなリクの前に、ワナワナと震える星が立ち塞がった。


「…ッ起きやがれヒモ野郎!!」

ドガッ!
「いてっ!!あ?星!?いきなり何すんだよ!!」

「うるせぇ!!リクルートごときが名前の夢見んな!!」

「はあ?何だよそれ!」

「恥ずかしい寝言言いやがって!なあ、名前!…名前?」



『ぐぅ…』



「寝てるけど…?」

「こ、こんな奴の隣で寝るなー!!危ないって!どうせなら俺の隣で寝ろ!!」

「いや、お前の方がよっぽど危ない。」

「テメェこそチラチラ寝顔見てんじゃねぇよ!」



言い合って20分。
疲れ果てた二人は名前を間に寝てしまった。



お昼寝



(目覚めちゃったけど、起きるのもったいないなぁ…。ふふ、川の字って家族みたい。
ふぁ〜…荒川タイムには抗えないね。おやすみ〜…)
 
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