短編 | ナノ

 一等星

小さい頃、一番光る星を捕まえたくていろんな人に頼んだけれど、誰も出来なかった。




「何してんだ?名前。」



『あ星。特に何もしてないよ。』

「ふーん、隣座っていい?」

『うん』


隣にドカリと座った星は空を見上げていた。


「今日は星凄いな。満天だ。」

『うん。ねぇ、あの一等星あるでしょ?』

「あぁ、めっちゃ光ってんな。」


指を指した方向には夜空で一番輝く星。


『星はあの一等星捕まえられる?』

「捕まえる?なんでまた。」

『なんとなくね。子供の時にすごく欲しかったの。今はもう無理だって分かってるけど。』


軽くため息をつけば星が手を握ってきた。


「一番輝く星が欲しいんだろ?」

『…うん、なにこの手。』

「だったらほら。」

ボフッ『!!』


いきなり顔に何か柔らかい物が押し付けられ、視界が黄色一色になった。


『…星のマスク?』

「あんな星より、もっと輝いてる一番星ならここにいるだろ?」


ズイッと顔を近付けられて、今度は星の素顔が視界いっぱいに移った。


『…近いんだけど』

「何だよ照れてんのか?今更じゃねぇか。」

『うるさいなぁ…』


マウントポジションをとって、なおも近付いてくる顔から逃げようと体をギリギリまで後ろに反らした。


『…近い近い近い。』

「逃げんなって。」

『……』


あ、


と思った瞬間、完全に背中が地面についてしまった。


「はい、もーらい。」


両手で頬を包まれて口付けられた。


『……ぅ…』


プイッと横を向いて星から目を離した。


「捕まえられただろ?」

『…どっちかっていうと捕まったんだけど。』


戻した視線に映ったのは満天の夜空を背に、楽しそうに笑う彼。

その顔をひと睨みしてからまた目を反らした。




一等星




眩しすぎて、直視できない。
 
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