短編 | ナノ

 Happy new year!

『Happyシリーズ続くね。
というわけでお年玉をください。』

「いや、どういうわけで?」


まだ雪も残る河川敷の教会前には、全住人が集まっていた。


『リク大人でしょ。』

「お前も大人だろ。」

『ちぇっ。ひねくれてんな。』

「どっちがだ。」


呆れてチラッと横を向けば、新年早々見たくもない奴が右手を差し出していた。


「……あ?」

「お年玉。」

「お前はもっと駄目だ。ていうか星、俺より年上だろ。」

「しけてんな。」『ねっ。』

「うぜ!」



「名前も星も何やってるのー?お節作ってきたから一緒に食べましょー!」

『「さすがP子!」』


一気に顔をキラキラさせて、走っていった二人。


「子供か!」





ーーーーーーーーーーー





『斬新だね。』

「皆が持ち寄った材料で作ったの!」


その中身とは、お刺身に卵焼きといった、まだアリな感じの物から、ケーキ(何故)、生のきゅうりという物まであった。
そしてひときわ目立つのは、


『海老じゃないの、普通…?』


ど真ん中を陣取る荒川の主の頭。


「これは私が昨日獲ってきたんだ。新鮮だぞ!」


目の前に現れたニノ。


『これ骨と皮しか無さそうだけど…。』


箸でつついて、感触を確かめる。


「骨はな、かるしうむだ。」

『うん、リクから英才教育を授かったんだね。確かに歯は強くなるかもしれない。』

「…ニノが獲ってきたんなら、俺は食うぜ!」

『頑張れ!私の分まで!!』

「お前も食えよ…!(小声)」


そんな星の声も無視して、名前はシスターの方に行った。


「ん?…名前か。」

『シスター、お節にケーキはないと思うよ。』

「美味しくなかったか?」

『…美味しかったけど…、それでも洋食は合わないよ。』


シスターはふむ、と考える。


「なら来年は和菓子にするか。」

『ずんだもちとかね。』

「ずんだ…?」

『枝豆の饅頭みたいなもの。』

「……それは知らないな。来年、手伝ってくれるか?」

『良いよ』


さりげなく会う口実を作ったシスター。
新年から流石である。

名前が次に向かったのは、


『マーリアっ。』

「名前じゃない。あけましておめでとう。」

『あ、その言葉今年初めて言われた!あけましておめでとう!』

「ふふ、名前は今年も元気そうね。」

『そうだね!ところでマリア、あの卵焼きの卵マリアのとこのでしょ。』

「あら、よく分かったわね。」

『食べ慣れてるからね!美味しかった!』


ふふんと胸を張った名前を見て、マリアは微笑みながら小さな紙袋を取り出した。


「どこかの変態と違って、名前は素直だから可愛いわ。だからお年玉、って言ってもお金じゃないけど。いるかしら?」

『なになに?欲しい!』


そしてマリアから貰った袋を開けてみると、


『お菓子ー!!』


手作りと思われるお菓子がたくさん入っていた。


『美味しい!マリア、これ凄く美味しい!!』

「本当?数の都合で名前の分しかないけど、そんなに美味しかったかしら。」




『シスターのより美味しい!!』





この時の名前の何気無い言葉が、シスターにはしっかり聞こえていた。


ブシュッ!!
「…!!」

「シ、シスター!!いきなり血噴き出してどうしたんですか!?」






『?どうしたんだろ。』

「ブフッ…!!…ッフフ……フ…っ…気にすることないわよ。褒めてもらえて嬉しいわ。」

『うん!お菓子ありがとう!私村長の所行ってお年玉絞り取ってくる!』

「ふふ、いってらっしゃい。」





ーーーーーーーーーーー





『村長ハッピーニューイヤー!お年玉!』

「はいはい、あけおめあけおめ。」

『あけおめじゃなくてお年玉。』

「知らねーよお年玉なんて。尻子玉なら知ってるけど。」

『尻子玉なんていらないから!村長大人でしょ。』

「大人目当てならビリーとかシロに聞いてこい。」

『二人ともまともな大人過ぎて聞けない。』

「俺がまともじゃないって言いてぇのか。」

『うん。』

「そんな悪い子には玉はやれませーん。」

『いや、ちゃんと"お年"までつけよう!玉だけだとなんかヤダよ!』

「なんだって良いだろ?新年早々カツアゲなんてして…。」

『カツアゲじゃないし。…もう良いよ!』

「勝った。」

『もー!』


「今年も平和な一年になりそうだ。」

『村長からしたらどんな事でも平和になるでしょ。』


食べ物しか貰わなかった年始めでも、皆と話しただけでそれもどうでも良くなるくらいの幸せを感じた1月1日。



Happy new year!


(今年は5kgは痩せる!)
(無理だろ。)
(そういう星は目標無いの?)

(リクからニノを奪う!)
(……いや……無理でしょ。)
(リアルな否定やめろ。)
 
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