◎ Happy new year!
『Happyシリーズ続くね。
というわけでお年玉をください。』
「いや、どういうわけで?」
まだ雪も残る河川敷の教会前には、全住人が集まっていた。
『リク大人でしょ。』
「お前も大人だろ。」
『ちぇっ。ひねくれてんな。』
「どっちがだ。」
呆れてチラッと横を向けば、新年早々見たくもない奴が右手を差し出していた。
「……あ?」
「お年玉。」
「お前はもっと駄目だ。ていうか星、俺より年上だろ。」
「しけてんな。」『ねっ。』
「うぜ!」
「名前も星も何やってるのー?お節作ってきたから一緒に食べましょー!」
『「さすがP子!」』
一気に顔をキラキラさせて、走っていった二人。
「子供か!」
ーーーーーーーーーーー
『斬新だね。』
「皆が持ち寄った材料で作ったの!」
その中身とは、お刺身に卵焼きといった、まだアリな感じの物から、ケーキ(何故)、生のきゅうりという物まであった。
そしてひときわ目立つのは、
『海老じゃないの、普通…?』
ど真ん中を陣取る荒川の主の頭。
「これは私が昨日獲ってきたんだ。新鮮だぞ!」
目の前に現れたニノ。
『これ骨と皮しか無さそうだけど…。』
箸でつついて、感触を確かめる。
「骨はな、かるしうむだ。」
『うん、リクから英才教育を授かったんだね。確かに歯は強くなるかもしれない。』
「…ニノが獲ってきたんなら、俺は食うぜ!」
『頑張れ!私の分まで!!』
「お前も食えよ…!(小声)」
そんな星の声も無視して、名前はシスターの方に行った。
「ん?…名前か。」
『シスター、お節にケーキはないと思うよ。』
「美味しくなかったか?」
『…美味しかったけど…、それでも洋食は合わないよ。』
シスターはふむ、と考える。
「なら来年は和菓子にするか。」
『ずんだもちとかね。』
「ずんだ…?」
『枝豆の饅頭みたいなもの。』
「……それは知らないな。来年、手伝ってくれるか?」
『良いよ』
さりげなく会う口実を作ったシスター。
新年から流石である。
名前が次に向かったのは、
『マーリアっ。』
「名前じゃない。あけましておめでとう。」
『あ、その言葉今年初めて言われた!あけましておめでとう!』
「ふふ、名前は今年も元気そうね。」
『そうだね!ところでマリア、あの卵焼きの卵マリアのとこのでしょ。』
「あら、よく分かったわね。」
『食べ慣れてるからね!美味しかった!』
ふふんと胸を張った名前を見て、マリアは微笑みながら小さな紙袋を取り出した。
「どこかの変態と違って、名前は素直だから可愛いわ。だからお年玉、って言ってもお金じゃないけど。いるかしら?」
『なになに?欲しい!』
そしてマリアから貰った袋を開けてみると、
『お菓子ー!!』
手作りと思われるお菓子がたくさん入っていた。
『美味しい!マリア、これ凄く美味しい!!』
「本当?数の都合で名前の分しかないけど、そんなに美味しかったかしら。」
『シスターのより美味しい!!』
この時の名前の何気無い言葉が、シスターにはしっかり聞こえていた。
ブシュッ!!
「…!!」
「シ、シスター!!いきなり血噴き出してどうしたんですか!?」
『?どうしたんだろ。』
「ブフッ…!!…ッフフ……フ…っ…気にすることないわよ。褒めてもらえて嬉しいわ。」
『うん!お菓子ありがとう!私村長の所行ってお年玉絞り取ってくる!』
「ふふ、いってらっしゃい。」
ーーーーーーーーーーー
『村長ハッピーニューイヤー!お年玉!』
「はいはい、あけおめあけおめ。」
『あけおめじゃなくてお年玉。』
「知らねーよお年玉なんて。尻子玉なら知ってるけど。」
『尻子玉なんていらないから!村長大人でしょ。』
「大人目当てならビリーとかシロに聞いてこい。」
『二人ともまともな大人過ぎて聞けない。』
「俺がまともじゃないって言いてぇのか。」
『うん。』
「そんな悪い子には玉はやれませーん。」
『いや、ちゃんと"お年"までつけよう!玉だけだとなんかヤダよ!』
「なんだって良いだろ?新年早々カツアゲなんてして…。」
『カツアゲじゃないし。…もう良いよ!』
「勝った。」
『もー!』
「今年も平和な一年になりそうだ。」
『村長からしたらどんな事でも平和になるでしょ。』
食べ物しか貰わなかった年始めでも、皆と話しただけでそれもどうでも良くなるくらいの幸せを感じた1月1日。
Happy new year!(今年は5kgは痩せる!)
(無理だろ。)
(そういう星は目標無いの?)
(リクからニノを奪う!)
(……いや……無理でしょ。)
(リアルな否定やめろ。)
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