河川敷の住民は祭が好きで、何かしらイベントを起こしたがる。
しかし、住人の誰もが浮かれるこの行事には全く触れようとはしなかった。



それが、クリスマス。







『え？何言ってるのリク。死にたいの？』


先程クリスマスパーティーなどをやらないのか、と聞いたとたん、名前と星に思いきり心配された。


「死ぬって、どういう意味だよ。」

「あぁ、リク知らないのか。」

「何が」

『シスター、クリスマスが大嫌いなんだよ。神様の誕生日なのにサンタが邪魔するから。』

「そんな理不尽な…」

『残念だったね。愛しのニノとランデブー出来なくて。』

「プッ、ざまぁ！」

「うるさい、余計なお世話だ。ていうかシスターもシスターで、何も殺しはしないだろ。」



「甘いなコイツ」

『甘いね。シスターの作るチョコクリームパイより甘い。』

「何かあったのか？」

『一昨年サンタのコスプレしてシスターを落としにかかろうと思ってたら危うく左耳が無くなる所だった。』

「馬鹿か」

『せっかくあのクソ寒い中ミニスカート着てあげたっていうのに。』

「何がしたくてそんな事したんだよ」

『ちょっとした目の保養に』

「毒だ」

『なんですって』


先ほどから思い出したように携帯をいじっていた星が横から口を開いた。


「ていうか俺、その時のムービーまだ携帯に入ってるんだけど。」

『え、見たい見たい。』

「俺も見てみたい」

「おいムッツリかよ」

「違う。シスターの反応が見たいだけだ。」


そうして星は再生ボタンを押した。





【星、撮れてるかい〜】

【おー、にしても寒そうだな。】

【全くだよ。…よし、シスター！】



ガチャ
【何だ、こんな夜に……、】

【夜這い☆in Xmas】

【……】
ドガガガガガ！！


【ギャアァァア！！ガトリング取り出してきた！！】

【逃げろ！！】


ドタドタ……、







『懐かしい。私ちょっと背伸びたんじゃない？』

「変わんねぇだろ」

「いや、お前らヒマにも程があるだろ。」

『そんな事言うリクにはプレゼントあげないから。』

「え、何か用意してたのか？」

「１人１人中身が違うんだぜ。しかも凄ぇの。」

「…気になる」

『しかたないなぁ。優しい名前さんに感謝してよね。』


ちょっと待ってて、と言って家に戻っていった。





「中身ってどんなのなんだ？」

「お菓子とかー…、アクセサリーとかー…、全部手作りなんだよ。」

「へぇ、楽しみだな。」





ーーーーーーーーーーー





『おまたせ』

「遅かったな」

『星の分がなかなか見つからなくて。結局、間違えてごみ箱の中に入れてたみたい。』

「それ渡すのかよ」

『中身には支障は無いよ。はい、星とリクへ。』

「サンキュー」
「ありがと」

『星は去年お菓子だったから今回はアクセ。』

「お、ピアスか。よくこんなの作れるな。」

「お前、ピアスしても耳見えないだろ。」



『リクはお菓子の詰め合わせね。』

「お、…おぉ、結構凄い。本当に全部手作りなんだな。」

『ふふん』

「よし、暗くなってきたし帰るか。」

「貰ったとたんに帰るんだな。俺、お返しとか無いけどどうしたら良い？」

「俺はいつも返してないけど」

『別にお返しは求めてないよ』

「借りは返さないといけないんでな」


『うーん、じゃあ寒いから手繋いで帰って。』

「…そんなんで良いのか」

『はい、手』


そしてリクが名前の手を握った時、


「俺も繋ぐ」

「なんだよ、男の嫉妬は見苦しいぞ。」

「うるせ、俺もお返ししたいだけだ。」

『おぉ、初お返し。』


左手はリクに、右手は星に繋がれて雪の道を歩いていった。



Happy Christmas！



(わ！すべ、る、うわぁあ！！)
(いってぇ！巻き込むな！！)
(手、固く繋ぎ過ぎだろ！)
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