◎ sweet kiss
はぁ、と息をはけば空気が白くなった。
11月11日。
誰かの誕生日だとか、そういう物はない。だがこの日に気分を上げた少女が河川敷を駆けていた。
ポッ○ーを片手に。
『シスターー!』
「…なんだ名前。ノックをしろといつも言っているだろう。間違って撃ってしまったらどうする。」
『シスターはそんなヘマしないでしょ?』
「…はぁ。それで、何の用だ。」
『シスターに会いに来たの!』
ルンルンと頭の上に分かりやすくハートマークを飛ばす名前。
一応、彼と彼女は恋人同士である。
「ただ単に会いに来たなら受け入れてやろう。その企んでいる顔は何だ。」
『冷たいなぁ。ま、いっか。シスター、今日は何日でしょう!』
「11月11日だろう。なんなんだ。」
『じゃあさ、今日は何の日でしょう!』
「…第一次世界対戦の停戦日、だろ?」
『違ーーう!だろ?じゃないよ!!違かないけど夢もロマンも無い!!』
「一体何だ。」
『今日はね、ポ○キーの日なんだよ!』
持っていたポッ○ーの箱を印籠のように、バッとシスターの目の前に出した。
「ポッ○キーの日?」
『シスター、伏せてない伏せてない。』
シスターはもう一度目の前に掲げられたお菓子の箱をまじまじと見る。
「それで、そのお菓子がどうしたんだ。」
『ポ○キーゲームしよう。』
「ポ○キーゲーム?なんだそれは。」
『シスターはじっこくわえて。』
「毒か。」
『毒じゃないよ!シスター私を何だと思ってるの?』
シスターはやれやれと大人しく端をくわえた。
『あ、この絵面だけでも可愛い……、あ、いやいや、私もくわえるからシスターも食べていってね。』
「な…」
モロに動揺したシスターによってポ○キーは折れてしまった。
『あー、折れちゃった。折れないように食べ進めるんだよ。』
「そんなことしたら…」
『そんなことをが起こるかものドキドキなゲームなんだよ。ほらっ。』
遂に観念したシスターはもう一度端を咥えて食べ始めた。
『♪』
「オイ、お前も食べろ。ずっと咥えてるままじゃないか。」
『んー、分かったー。』
静かな教会に、ポリポリとかじる音だけが鳴っていた。そして気が付くと残るポ○キーは2cmとなっていた。
(え??近い、近くない??なんか興味本意で始めたけど恥ずかしくなってきた…)
すぐ目の前にいるシスターの顔が綺麗すぎて名前は目を逸らし、口を離そうとした。
「…」
するとシスターは離れかけたその口を追いかけるように、身を乗り出して黙ったまま最後の一口を食べきった。
もちろん口は重なる訳で、
『っ!わっ…ビックリした…』
「名前からしようと言ったんだろ?」
『そうだけどさ…』
「甘いな」
『甘すぎるよ』
sweet kiss(まだいろんな種類あるんだけどな…)
(またやるか?)
(もうやんないよ!)
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