短編 | ナノ

 sweet kiss

はぁ、と息をはけば空気が白くなった。



11月11日。

誰かの誕生日だとか、そういう物はない。だがこの日に気分を上げた少女が河川敷を駆けていた。






ポッ○ーを片手に。









『シスターー!』

「…なんだ名前。ノックをしろといつも言っているだろう。間違って撃ってしまったらどうする。」

『シスターはそんなヘマしないでしょ?』

「…はぁ。それで、何の用だ。」

『シスターに会いに来たの!』


ルンルンと頭の上に分かりやすくハートマークを飛ばす名前。
一応、彼と彼女は恋人同士である。


「ただ単に会いに来たなら受け入れてやろう。その企んでいる顔は何だ。」

『冷たいなぁ。ま、いっか。シスター、今日は何日でしょう!』

「11月11日だろう。なんなんだ。」

『じゃあさ、今日は何の日でしょう!』


「…第一次世界対戦の停戦日、だろ?」

『違ーーう!だろ?じゃないよ!!違かないけど夢もロマンも無い!!』

「一体何だ。」

『今日はね、ポ○キーの日なんだよ!』


持っていたポッ○ーの箱を印籠のように、バッとシスターの目の前に出した。


「ポッ○キーの日?」

『シスター、伏せてない伏せてない。』


シスターはもう一度目の前に掲げられたお菓子の箱をまじまじと見る。


「それで、そのお菓子がどうしたんだ。」

『ポ○キーゲームしよう。』

「ポ○キーゲーム?なんだそれは。」

『シスターはじっこくわえて。』

「毒か。」

『毒じゃないよ!シスター私を何だと思ってるの?』


シスターはやれやれと大人しく端をくわえた。


『あ、この絵面だけでも可愛い……、あ、いやいや、私もくわえるからシスターも食べていってね。』

「な…」


モロに動揺したシスターによってポ○キーは折れてしまった。


『あー、折れちゃった。折れないように食べ進めるんだよ。』

「そんなことしたら…」

『そんなことをが起こるかものドキドキなゲームなんだよ。ほらっ。』


遂に観念したシスターはもう一度端を咥えて食べ始めた。


『♪』

「オイ、お前も食べろ。ずっと咥えてるままじゃないか。」

『んー、分かったー。』


静かな教会に、ポリポリとかじる音だけが鳴っていた。そして気が付くと残るポ○キーは2cmとなっていた。


(え??近い、近くない??なんか興味本意で始めたけど恥ずかしくなってきた…)


すぐ目の前にいるシスターの顔が綺麗すぎて名前は目を逸らし、口を離そうとした。


「…」


するとシスターは離れかけたその口を追いかけるように、身を乗り出して黙ったまま最後の一口を食べきった。







もちろん口は重なる訳で、






『っ!わっ…ビックリした…』

「名前からしようと言ったんだろ?」

『そうだけどさ…』


「甘いな」

『甘すぎるよ』



sweet kiss


(まだいろんな種類あるんだけどな…)
(またやるか?)
(もうやんないよ!)
 
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