短編 | ナノ

 理想

『暇だ…』


特になにもすることがない名前は川辺で寝転がっていた。


「ん…?名前殿でござるか?こんなところで寝てたら風邪をひくでござるよ。」

『あ、おはよう〜。ラストサムライも一緒に寝ようよ。気持ちいいよ。』

「なっ!そ、そんなことは…」

『朝日が凄く温かいから。ほっとするよ。』

「むぅ…、なら、少しだけ…」


そうしてラストサムライも名前の隣に寝転がった。


「確かに気持ちいいでござるな。」

『でしょ。これなら風邪もひかないよ。』

「良い天気でござる。」

『あ、ニノとリクだ。』


遠くで二人が歩いているのを見つけた。


『デートかな?声かけちゃ悪いな。』

「あの二人も相当仲が良いでござる。」

『昔はまさかニノに恋人ができるなんて思ってもいなかったからな〜』

「本当に急なことでござった。」

『でもお似合いだよね』

「あぁ、まったく。」



『ラストサムライは彼女欲しいとか思わないの?』

「は、せ、拙者は別に…!」

『顔と態度によく出るね。好きな人いるの?』

「そ、それは…、言えないでござるよ…!」


『どんな子がタイプ?』

「た、タイプ?タイプ…は…。
……名前殿のタイプも教えてくだされ。」

『私?私はねー。そうだな、まず優しくてかっこよくて、』

「それは世間一般でよく聞くでござる。」

『あとは嘘をつかない人で、他人のことでも真剣に考えられる人。』

「なんだかやけに具体的でござるな…」

『うん。要はラストサムライみたいな人。』

「え…」


名前はいきなり爆弾発言をした。


「な、なな、何を言って…!!」

『私も言ったんだから、ラストサムライも教えて?』

「…せ、拙者は…」


体を横に向けてラストサムライの方を見てみると、顔を真っ赤にしていた。


「拙者は…」


すると気づいたラストサムライも横を向いて、お互い向かい合う形になった。


「っ……、拙者は名前殿のことが好きでござる!」

『……タイプじゃなくて指名だね。』

「はっ、つい…!」

『ありがとうラストサムライ。私もラストサムライのことが好き。』


笑顔で言うとラストサムライは目を大きく開いた。


「本当でござるか!?」

『私の方こそ本当かどうか確かめたいくらいだよ』


そう言うと思い切り抱きしめられた。


『わ!』

「よかった…」


頭の上で彼がほっとため息をついた。
密着した体から伝わる心臓の鼓動はもの凄く早かった。







「あのよ、お前らさ、そういうのは人のいない所でやってくんね?」


頭上から星の声がした。



今の格好は二人が寝転がりながら抱き合っているから、名前が軽くラストサムライに押し倒されている感じになっている。


「ほ、星!?」


ラストサムライはバッと離れた。


『羨ましいなら早くニノを略奪してくれば良いのに……痛い痛い、ごめんなさい。』


名前は後からゆっくり起き上がった。


「ったく、周りの奴ら皆くっついてくな…」

『星だけ取り残されるね』

「星、お先に。」

「うっせ!!余計なお世話なんだよ!」




理想


(ならさ、野外じゃないなら何しても良いの?)
(な!そ、そんな…!!ほ…、星!!)
(いや、俺に聞かれても困るし。)
 
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