◎ 理想
『暇だ…』
特になにもすることがない名前は川辺で寝転がっていた。
「ん…?名前殿でござるか?こんなところで寝てたら風邪をひくでござるよ。」
『あ、おはよう〜。ラストサムライも一緒に寝ようよ。気持ちいいよ。』
「なっ!そ、そんなことは…」
『朝日が凄く温かいから。ほっとするよ。』
「むぅ…、なら、少しだけ…」
そうしてラストサムライも名前の隣に寝転がった。
「確かに気持ちいいでござるな。」
『でしょ。これなら風邪もひかないよ。』
「良い天気でござる。」
『あ、ニノとリクだ。』
遠くで二人が歩いているのを見つけた。
『デートかな?声かけちゃ悪いな。』
「あの二人も相当仲が良いでござる。」
『昔はまさかニノに恋人ができるなんて思ってもいなかったからな〜』
「本当に急なことでござった。」
『でもお似合いだよね』
「あぁ、まったく。」
『ラストサムライは彼女欲しいとか思わないの?』
「は、せ、拙者は別に…!」
『顔と態度によく出るね。好きな人いるの?』
「そ、それは…、言えないでござるよ…!」
『どんな子がタイプ?』
「た、タイプ?タイプ…は…。
……名前殿のタイプも教えてくだされ。」
『私?私はねー。そうだな、まず優しくてかっこよくて、』
「それは世間一般でよく聞くでござる。」
『あとは嘘をつかない人で、他人のことでも真剣に考えられる人。』
「なんだかやけに具体的でござるな…」
『うん。要はラストサムライみたいな人。』
「え…」
名前はいきなり爆弾発言をした。
「な、なな、何を言って…!!」
『私も言ったんだから、ラストサムライも教えて?』
「…せ、拙者は…」
体を横に向けてラストサムライの方を見てみると、顔を真っ赤にしていた。
「拙者は…」
すると気づいたラストサムライも横を向いて、お互い向かい合う形になった。
「っ……、拙者は名前殿のことが好きでござる!」
『……タイプじゃなくて指名だね。』
「はっ、つい…!」
『ありがとうラストサムライ。私もラストサムライのことが好き。』
笑顔で言うとラストサムライは目を大きく開いた。
「本当でござるか!?」
『私の方こそ本当かどうか確かめたいくらいだよ』
そう言うと思い切り抱きしめられた。
『わ!』
「よかった…」
頭の上で彼がほっとため息をついた。
密着した体から伝わる心臓の鼓動はもの凄く早かった。
「あのよ、お前らさ、そういうのは人のいない所でやってくんね?」
頭上から星の声がした。
今の格好は二人が寝転がりながら抱き合っているから、名前が軽くラストサムライに押し倒されている感じになっている。
「ほ、星!?」
ラストサムライはバッと離れた。
『羨ましいなら早くニノを略奪してくれば良いのに……痛い痛い、ごめんなさい。』
名前は後からゆっくり起き上がった。
「ったく、周りの奴ら皆くっついてくな…」
『星だけ取り残されるね』
「星、お先に。」
「うっせ!!余計なお世話なんだよ!」
理想(ならさ、野外じゃないなら何しても良いの?)
(な!そ、そんな…!!ほ…、星!!)
(いや、俺に聞かれても困るし。)
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