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Trick and treat





「バァ!」
『うわ!』


10月31日の午後7時、皆は教会の前に集まっていた。


『こうも変なのがたくさんいると酔ってくる…。』


周りには仮装をした荒川メンバーがいた。


「僕達一つ目小僧!」


開口一番に脅かしてきた鉄人兄弟はいつもの鉄仮面に細工をしていた。


『へぇ〜、結構凄いね。』

「名前さんは何かしないの?」

『うーん、特に思い付かないしな〜。仮装する衣装も無いし。』

「あ、名前さんはやらないんですか?」

「もったいないぞ!」


吸血鬼の格好をしたリクと、シーツを頭から被ったニノと思われる人物が現れた。


『どうしてこうも和が入り交じるんだろうね。ハロウィンは外国のお祭りだったはずだけど。』

「仮装しないんですか?」

『特に思い付かないの。』

「じゃあ言われる側ですね。」

『何が?』


「「トリックオアトリート(です)!」」


バッと手を差し出した四人。


『…じゃあ私はここにいるやつら全員に対応しなくちゃいけないのね…。』

「なんだ!お菓子が無いのか?」


水性のマジックをどこからか出してきたニノ。


『なんでそんなテンション高いの。ちょっと待ってて。』


手持ち鞄から取り出したのは袋に入った一口チョコ。


「うわっ、準備良い…。」


一袋30個入りなので全く問題は無い。


『はい。』


それぞれの手のひらの上に一つずつチョコを置いていく。


「「ありがとー、名前さん!」」

『うんうん。素直で良いね。』


聞き分けの良い鉄人兄弟の頭を撫でた。


「リク!さっそく一つ目だな!」

「多分最初で最後のお菓子ですよ。」


しばらくその場にいると、


「お、名前お菓子持ってんのか?トリックオアトリート!」


後ろから猫耳をつけた星がやって来た。


『……猫娘か。』

「狼男だよ!それよりお菓子!」

『いやしいな、この男は…。』


そう言ってチョコを一つあげた。


「しょぼっ!」

『いらないなら返して。』

「いや、いるいる。いるから。」


『まだこんなに余ってるや』

「じゃあ向こう行こうぜ!シスター達いるから。」


そして半ば強引に連れてこれたスペースには


『うわ…、濃…。』


シスターとラストサムライ、ビリーにジャクリーンに村長がいた。


「ん?名前は仮装してねーのか?」

『ええ、もう良いんでほっといてください。』


本日何度目かの質問を村長にされる。


『でも、シスターは案外マシな格好してますね。』


シスターはフランケンの格好をしていた。


『背も大きいしなかなか…。それに比べてラストサムライ。一応聞くけど、それは?』

「拙者は落武者でござるよ!先代の武士が命を落としてまで戦に出るという心意気が…」

『分かった分かった。正直言うと分かって無いけどもう良いよ。それは肝試しの時にやれ。』


次にチラリと隣を見ると


『……』


ビリーとジャクリーンである。


『……』

「俺達は別に仮装してねぇぞ。」

『あ、ですよね。まぁでもその格好で町をうろつけば誰でもすぐに仮装だと思うでしょうけどね。』

「名前ちゃんは仮装しないの?」

『はい。衣装とか無いですしね。良いんですよ。』

「おいおい、俺と態度が随分違うな。」


ジャクリーンへの態度に膨れる村長。彼のその格好は、


『……それはツッコんだ方が良いんですか?』

「どこをツッコむんだよ。」


首だけにトイレットペーパーを巻き付けている村長。


「ミイラ男だ!」

『もったいな……』

「だから首だけなんだよ。エコだ。エコ。」


軽く冷めた目を送っていると後ろから肩を叩かれた。


『ん?』

「トリックオアトリートでござる。」

『うん、もう侍でもなんでもないね。はい。』


そしてお馴染みの一口チョコをあげた。


「しけているでござるな…」

『我が儘だなここのやつらは!』

「シスターでさえ手作りクッキーなのによ。」

『それはいつもの事でしょ。』

「名前、私にはないのか?」

「俺にもくれよ。」

『なんなの、散々いちゃもんつけて。』


横からかけられた声に顔を向ければシスターと村長が影を作っていた。



「貰えるものは貰いたい。」

「私からもあるぞ。」


カサッと音を鳴らしたのはシスターのクッキー。

『はい、シスター。』

「早」

『もうこれトリックオアトリートじゃなくてただの物々交換ですね。』

「俺にはー?」

『はいはい、もう、ありますよ。ほら。』

「サンキュー。」


村長はチョコをポイッと口に放り込んだ。


『ビリーさんとジャクリーンにも。』

「良いのか?」

「ありがとう、名前ちゃん。」

『いや、唯一のまともな人でいてくれてこちらこそありがとうございます。』


そして村長の方に向きなおして、手を出した。


「なんだ?」

『トリックオアトリートです。』


思えば、自分にだってこのセリフを言う権利はある。


「…しょうがねーなー。誰の尻子玉が欲しいんだ?今日だけだぜ?」

『いらんし』


多分これは集団カツアゲという名のイタズラ。止めろ!たかるな!


Trick and treat


(トリックじゃなくてトリートが良いんだけど。)
(魚いるか?)
(いら……、…やっぱ貰うわ。何も貰えないし悲しいから。)


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