Plan | ナノ

かくれんぼ!




「よーし、皆でかくれんぼしよう。」


平日のお昼、河川敷の暇な住人を集めた村長はまたも突発的なイベントを開催した。


「何ですか、かくれんぼって。」


集められた被害者はリク、ニノ、星、鉄人兄弟、P子、リリー、シスターの計8人。


「リクさんかくれんぼも知らないのー?」

「僕たちの先生なのにー?」

「かくれんぼ自体は知ってるよ!なんだその小馬鹿にした言い方は!…俺が聞いてるのは、なんでかくれんぼをしようと思ったのかって事だ。」

「なんでって、そりゃ急に遊びたくなったからだよ。」

『この前マラソン大会したばっかりじゃないですか。』

「だから遊びだ、遊び。じゃあエリアを決めるぞー。まず橋の上は駄目だろ?」


周りを見渡して場所を確認して、それから頷いた。


「よし。じゃあ室内は教会とリクんちだけな。ただし騒ぐなよ。時間は日が沈むまで。」

「おいコラ河童。なんで俺の家も入ってんだ。」

「別に良いだろ?」

「良くないわ!」

『私も部屋に入られたら嫌だなぁ…』

「安心しろ。お前の部屋には鍵をかけといてやる。」


ポンと頭に手を乗せるシスター。


『あ、ありがとうございます。』


「かくれんぼってなんだ?」

「あら、ニノ知らないの?かくれんぼっていうのはね、鬼に見つからないように隠れてやり過ごす遊びよ!」

「恐ろしいな!」

『あながち間違ってはいないんだけどね。』

「鬼決めるぞーさいしょはグー。」


もう始めるの!?と住人は焦りぎみに手を出した。


「じゃんけんほーい」


気の抜けるような言い方に促されて出された手は、全員がチョキだった。


「あれ、皆チョキだ。」

「いや待て!!」


バッと村長が指を指したのは、


『わ、1人負け』


シスターの影になっている、1人だけパーを出しているリリーの姿。


「はい、リリー鬼。」

『あーあ』

「大丈夫だ!俺がわざと捕まってやるから!」


親指を突き出してウインクをする星。


『ありがと「ちなみに、」

「なんだよ村長。まだあんのか?」


「あぁ。鬼に捕まった奴は強制的に……











マリアの牧場に派遣される。」




「「「!!」」」




その言葉に女の子以外の全員が凍りついた。


「そんな…収容所に行かされるなんて……。」

「村長なんでそんな罰ゲーム発案したんですか!」

「優勝賞品が思いつかなかったから。」

「そんな理由で…!って、そしたら村長も捕まったら行かされるんですよね?」

「いや、俺はかくれんぼ参加しないから。」

「しないのかよ!」

「俺は牧場で紅茶飲みながら待ってるから。」


そのまま村長は行ってしまった。


「リ、リリー……」


そろそろと後ろを向く星。


『どうしたの?』


女の子にとってはなんの脅威でもないマリア。


「(リリーをとるか…、自分の命をとるか…!)」

「「じゃあ始めようよ!!」」

「おいおい、ここにもマリアを恐れない奴らがいたわ!!」


鉄人兄弟の掛け声により、かくれんぼは開始された。


『じゃあ50くらい数えたら探すねー』


リリーは目をつぶって数を数え始めた。


「とりあえず隠れる!!」


ダッシュで物陰を探しにいった星とリク。


「なにかあったらすぐに叫ぶなりなんなりしろよ。あとあまり遠くに行かないように。いいな?」

『大丈夫ですよ。それよりシスターも早く隠れてください。』





そして皆が散り散りに隠れた時、リリーが50を数え終えた。



『よし、見つけるぞ、………て』


探しにいこうと振り向いたそこにいたのは、


『…ニノとP子見っけ…』

「キャー見つかっちゃった!」

「鬼に捕まるよりマリアの紅茶が飲みたい」

「さっそく村ちょ…じゃなかった、マリアの所に行ってくるわね!」


嬉々として走っていったP子と連れられたニノの後ろ姿を呆然と眺めた。


『えぇ…』


今の出来事を忘れて足を進めた。






ーーーーーーーーーーーーーーー






『なかなか見つからないなー…』


始まって10分経つが、住人は見つかりそうにない。


「ん?リリー殿こんな所で何をしているでござるか?」

『ラストサムライ!いや、ね、今村長に巻き込まれてかくれんぼをやってるんだけど見つからなくて…。』

「あぁ、拙者は私用があって断ったでござるが…、かくれんぼだったとは。リリー殿が鬼なのでござるか?」

『うん、1人負けしちゃって。』

「なるほど(ということは今は邪魔者はいない…)」

『ん?』


「いや、なんでも。それよりリリー殿、拙者もその役手伝うでござる。」

『ほんと?ありがとう!』

「いやいや、じゃあ向こうの方に。きっとすぐ見つかるでござるよ。」


そう言うラストサムライの手はリリーの手に伸ばされた。



そこに、





チューーン…!


「おっと、」



ラストサムライの手めがけてどこからか弾丸がとんできた。


それと同時に



「このやろうラストサムライ!抜け駆けしてんじゃねーよ!!」

「おい!見つかるだろうが!」

「「リクさんも声おっきいよ!!」」


上にあったリクの家から星が飛び出し、さらにはリクと鉄人兄弟が窓から身を乗り出していた。


「見つかったでござろう?」

『ほんとだ…。っていうか皆リクの家にいたんだ。星とリクと鉄雄と鉄郎!みーーっけ!』


そう言うと鉄人兄弟は「見つかっちゃった〜!」と楽しそうに降りてきて、リクは顔面蒼白で降りてきた。


「星!お前が出てくから見つかったんだ!!」

「あれを見過ごせっていうほうが無理だ!!」


「それより見つかったんだからマリアさんの所に行こうよ〜」

「…やっぱり行かなきゃ駄目か。」


「これは?」

『見つかった人はマリアの牧場に行くことになってるの。なにが嫌なんだろうね?』

「あぁ…、頑張るでござるー、拙者はこれにて。あとシスターは多分教会にいるでござるよ。」

『なんで分かるの?』

「ラストサムライ!お前用があるならリリー手伝おうとすんなよ!!」

「それは別でござる。それじゃあ。」


片手をあげてラストサムライは帰っていった。


「じゃあ僕達も行こう!」


半泣きで牧場へと向かう星たちの姿を眺めてからリリーは教会の方に向かった。






ーーーーーーーーーーーーーーー





コンコン
『って、癖でノックしちゃうけどシスターいるかな…』


ドアを開けて見えた光景に思わずずっこけた。


『シ、シスター。隠れる気一切無いですね。』


教会に入るとシスターが台所で夕食を作っていた。


「あぁ、ようやく邪魔者もいなくなったしこれでやっと夕食が作れる。」

『?よく分からないですけど、シスター見つかっちゃいましたよ。』

「そうだな、でも外を見てみろ。もう陽は沈んだ。」

『あ、じゃあかくれんぼも終わりだ。』

「そういうことだ。ほら、疲れただろう。手を洗ってきて、夕飯にしよう。」

『はい。』

「あと、そうだ。」

『どうしました?』

「ラストサムライには半径5m以内に入らせるな。」

『え、何でですか。無理ですよ。』

「ならせめて2mだ。体は簡単に触らせるな。」


そっと手を握るシスター。


『まだ意味が分からないですけど』

「警戒心が薄いと言っているんだ。ほら、手を洗ってこい。」

『?はーい…』



かくれんぼ!


(シスターが来ない!リリーも来ない!)
(他の皆は紅茶飲んでるのに何で俺と星だけ雑用!?)
(口じゃなくて手を動かしなさいな。)


back



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -