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笑って




俺の好きなやつ




そいつには




他に好きなやつがいる










数週間前の事、河原の隅で縮こまっている名前を見つけた。


「どうした?」

『わっ!………星』

「なんか落ち込むような事でもあったのか?」


隣に腰かけてなるべく優しく声をかけた。


『………好きな人が…、』

「え?」

『……河川敷の人の中に、好きな人がいるの。ずっと前から好きだった人。』

「………」


だいぶショックを受けたから、今の俺は酷い顔をしていたと思う。うずくまっている名前からは到底見えやしない。


『でもその人ね…、好きな相手がいるの。私じゃ到底敵わないような人…。』


ポロポロと涙をこぼしながら小さな声で呟く。


『…だからいま悲しい…っ、』


抱えた膝に顔を押し付けて泣き顔を俺に見せないようにしている、そんな姿を見ていると、思いきり抱き締めたくなる。


『凄く好きなの…』

「…うん」



俺も好きだ。



『もう何年前から、』

「…うん」



俺だって、ずっと、ずっと前から。



そう伝えられたらどれほど楽だろう。
この時点で、俺の失恋は確定した。






「好きなやつなんて、聞けるわけ無いしな……。」


必死に頭を働かせて考えた。

リク?シスター?ラストサムライ?
考えてもキリがない。


「……俺もたいがい諦め悪いな…」


ガシガシと頭を掻いて足をある場所へ向かわせた。


たとえ違う男のために泣いていたとしても、
好きな子が泣いてるのに放っておくなんて男じゃねぇからな。






ーーーーーーーーーーーーーーー






向かった先は前と同じ河原。やっぱり名前はそこにいた。


「お前って落ち込むたびここに来てるよな。」

『え、ほ、星!?なんでまたいるの!?』

「いちゃ悪いか?」

『悪いというか…、なんというか、今感傷に浸ってる最中なんだけど…。』

「ここ数週間ずっとか?」

『な、何で知ってるの!?』

「だってずっと見てたし。その…、…好きな相手っていっても、そいつ恋人はいるのか?」

『…ううん。でも私の一方的な片思いだよ…。』


リクは削除、と。


「分かんねぇだろ。名前は面倒見が良いし、笑顔だって…、えと、…可愛いし。だから元気出せって。」


いつまでも泣いてないで早く笑ってくれ。


『……星恥ずかしい』

「えっ?あ!いや、……恥ずかしいな…、…俺。」

『でも嬉しい。ありがとう。』

「もう大丈夫そうか?」

『うん、頑張るよ。』

「なら良かった。」


君が笑ってくれるなら、俺の気持ちは隠しておこう。


叶わない恋なら、君の幸せを願うだけ。



「じゃあ、頑張れな。」


ポンと名前の頭を撫でて立ち上がった。
これ以上ここにいたら俺のほうが泣きそうだ。

『…ありがとう、星。…それで、もう1つ聞いてもらっても良い?』

「ん?」

『私の好きな人ってね…、ほ、星なんだよね…』

「…………え?」

『やっぱり言わなきゃ良かった……!忘れて!』


一気に立ち上がって走ろうとする名前の腕をとっさに掴んだ。


「オイちょっと待て!」

『わぁあ!は、離して!!』

「離さないし、しかも忘れられるわけ無いだろ!?」

『何で!?もう良いからっ!帰るから!』

「良くない!……このまま帰ったら、明日から俺のこと避けるだろ。」

『………』

「そんなことさせねぇぞ。俺だってお前の事好きなんだから。」

『……え…?』

「…………ってことはなんだよ、だったら俺の勘違いかよ…っはぁぁあ〜…。」


長いため息をはいてその場に崩れ落ちた。
名前の腕を掴んだままだったから向かい合って座る形になった。


『……だって…、星ってニノのことが好きだから…』

「名前に全て奪われました」

『私のこと応援するって…、頑張れって…。』

「あのとき超泣きそうだった。」

『………なんだ…』

「…それはこっちのセリフ」



全部俺のためだったなら、あの泣き顔ももっと見とけば良かった。

でも


「やっぱ笑った顔のほうが良いな。」

『なにが?』

「笑って?」

『なに急に。そんなのいきなり言われても困るよ…。』


そう言いながらだんだん笑顔になっていくからこっちも笑えてくる。



笑って


沈みかけた夕日の色に染まった頬に、軽く口付けをした。

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