お似合い
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付き合ってるマサ蘭
霧野目線
暗め
※
狩屋の手首はすごく細い。手もだ。指は間接が目立ってボコボコしている。爪も、どこか薄くて、貧弱な印象が拭えない。
袖口のゆとりが有り余っていて、それが余計に彼の手を弱々しくさせる。
何も掴めなそうな手。
彼の生い立ちを痛いくらい物語っていると、霧野は思う。
物語っているのは手だけじゃなく、体の至る所でその傾向が見られるように思えた。
例えば小さな背丈とか。
くすんだ水色の癖毛とか。
妙にキツい目元とか。
剥き出しの肌は赤く染まり、白くかさついている。手を擦り合わせ寒さに耐える彼は、なんだかとてもみすぼらしく、そして、いじらしく。
その可哀想な手をあっためてやろうと思った。手を伸ばす。
しかし、その手を包み込む前に、
「寒い。あっためさして」
ぎゅうと、右手を握られた。
「先輩あったかーい」
彼の両手に、すりすり擦り付けられる。丁度カイロ代わりにするように。
乾燥した手のひらは粉っぽく、中途半端に伸びた爪が軽く皮膚に当たる。骨格に皮膚が張り付いただけみたいな、小さな手。
やっぱり、可哀想な手。
神童とは違った。あの、恵まれた幼馴染の手とは。
狩屋は、ピアノの鍵盤も満足に叩けないだろう。迸るような単音も、畳み掛けるような和音も、空間を切り裂くような終止符も、こんな細指に奏でることなんか出来るわけがない。
俺には、この手が相応だと…そこまで考えて、手を離した。
「あれ…離しちゃうんですか」
此方を上目で伺う残念そうな表情。
そんな狩屋を見ていると、問わずにいられない。
「なあ狩屋」
「なんですか」
「狩屋は俺が必要か?」
「…………。」と、数秒の沈黙の後に再び、彼の手が絡まってくる。
見事に予想通りであった。
勿論コレは、肯定の意を示すのだろう。
満足だ。
霧野は小さな手を握り返す。
「…先輩はいつでも俺が欲しいもの全部くれるんですよ」
俺はたいして、何もしていないのに。普通に後輩として彼を扱ってるだけなのに。
せいぜい、特別な事だと言えることは少し過剰な叱咤と誉めることぐらい。その程度なのに。
「初めてだよそんな人」
狩屋は、俺なしじゃだめなんだろう。
彼は俺を必要としてくれるのだ。
ああ、なんて献身しがいのある人なんだ。
献身と自己犠牲は同義である。そして、自己犠牲の根底にあるのは、自己満足。
俺は狩屋に優しくする度に、満たされるんだ。
こんなの醜く歪んでると捉えてはいるが、みんな意外と、こんなものなのではないかと思ている。
内側から見ると、やたら、目立ってしまうだけなのだろう。自分の身勝手さとか。
お似合い
(つまり、俺にはこれが部相応)
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