短編。 | ナノ





お似合い
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付き合ってるマサ蘭
霧野目線
暗め























狩屋の手首はすごく細い。手もだ。指は間接が目立ってボコボコしている。爪も、どこか薄くて、貧弱な印象が拭えない。

袖口のゆとりが有り余っていて、それが余計に彼の手を弱々しくさせる。

何も掴めなそうな手。

彼の生い立ちを痛いくらい物語っていると、霧野は思う。

物語っているのは手だけじゃなく、体の至る所でその傾向が見られるように思えた。


例えば小さな背丈とか。
くすんだ水色の癖毛とか。
妙にキツい目元とか。


剥き出しの肌は赤く染まり、白くかさついている。手を擦り合わせ寒さに耐える彼は、なんだかとてもみすぼらしく、そして、いじらしく。

その可哀想な手をあっためてやろうと思った。手を伸ばす。

しかし、その手を包み込む前に、


「寒い。あっためさして」


ぎゅうと、右手を握られた。


「先輩あったかーい」


彼の両手に、すりすり擦り付けられる。丁度カイロ代わりにするように。

乾燥した手のひらは粉っぽく、中途半端に伸びた爪が軽く皮膚に当たる。骨格に皮膚が張り付いただけみたいな、小さな手。


やっぱり、可哀想な手。


神童とは違った。あの、恵まれた幼馴染の手とは。

狩屋は、ピアノの鍵盤も満足に叩けないだろう。迸るような単音も、畳み掛けるような和音も、空間を切り裂くような終止符も、こんな細指に奏でることなんか出来るわけがない。

俺には、この手が相応だと…そこまで考えて、手を離した。


「あれ…離しちゃうんですか」


此方を上目で伺う残念そうな表情。

そんな狩屋を見ていると、問わずにいられない。


「なあ狩屋」

「なんですか」

「狩屋は俺が必要か?」

「…………。」と、数秒の沈黙の後に再び、彼の手が絡まってくる。

見事に予想通りであった。
勿論コレは、肯定の意を示すのだろう。

満足だ。
 
霧野は小さな手を握り返す。


「…先輩はいつでも俺が欲しいもの全部くれるんですよ」


俺はたいして、何もしていないのに。普通に後輩として彼を扱ってるだけなのに。

せいぜい、特別な事だと言えることは少し過剰な叱咤と誉めることぐらい。その程度なのに。



「初めてだよそんな人」



狩屋は、俺なしじゃだめなんだろう。

彼は俺を必要としてくれるのだ。

ああ、なんて献身しがいのある人なんだ。


献身と自己犠牲は同義である。そして、自己犠牲の根底にあるのは、自己満足。

俺は狩屋に優しくする度に、満たされるんだ。


こんなの醜く歪んでると捉えてはいるが、みんな意外と、こんなものなのではないかと思ている。

内側から見ると、やたら、目立ってしまうだけなのだろう。自分の身勝手さとか。






















お似合い
(つまり、俺にはこれが部相応)

















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