短編。 | ナノ





君のことが気になってきたんだ
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※AKB48の「言い訳maybe」と「大声ダイヤモンド」をモチーフに書きました。

※数ヶ所、歌詞などを用いさせて頂いております。ご了承頂けると幸いです。

※拓目線の拓(→)蘭です。

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「…やっぱり、好きなのかもしれない」


口にした瞬間、予感は、確信で塗りつぶされた。


世界が停止したような感覚に苛まれ、そして同時に、零した言葉の重さに胸が軋む。取り返しの付かない事をしてしまった。たった一言呟いただけなのに、酷い罪悪感が襲いかかってくる。

好きなのかもしれない?
何が?


いや、誰が?


答えは明白だった。彼の笑顔を見て、口走ってしまったのだから。


「好きって…コレのこと?食べる?」


聞こえてきた声に、ハッと覚醒する。向かい合わせにした机の向こう側で、霧野は菓子パンを指差していた。


「…え?」


張っていた気が、一気に緩む。霧野は何を言っているんだ?困惑で言葉がうかばない。

当の霧野は、唇についたパン屑を指で拭って、綺麗に微笑んでいる。


「神童も、菓子パン好きなんだな。なんか意外」


状況が掴めず、惚けていると「やるよ。」と、彼は昼食である食べかけの菓子パンを此方に差し出してきた。加えて、


「一口あげる」


極上の笑みとともに、そう言い放ったのだ。


「ええ!」

「そ、そんな飛び上がって驚くことないだろ。すごい音したけど大丈夫か?」


机の裏に膝小僧を盛大にぶつけたが、痛みは気にならない。そんなことより目先の事に、釘付けだった。


簡潔に示せば、霧野は、見当違いな事を言って、俺に間接キスを促しているという事になるわけで。


その驚きは、相当な物であると過程できるのではないだろうか。


心なしか、菓子パンは明確に彼の歯型で抉り取られているように見えて、

それはつまり。

ここに、霧野の唇が触れ、歯が触れ、そしてもしかしたら舌も触れていたかもしれないという事になる。





そこに、口をつけろと?


どくどくどく。どくどくどく。

心臓が痛い。




「遠慮すんなって、ホラ」

「あ、ああ…」



ぎこちなく、パンを受け取る。


目前に迫る、霧野の噛み付いた部位。躊躇いと興奮がせめぎ合い、再び、脈拍が上昇する。

心臓の収縮と弛緩が、お互いを追い越そうと躍起になっているかのようだ。鼓動というよりも、もはや、震えだった。


どくどくどく。


顔が、耳が、首筋が、まるで発火したかのように熱くなっていくものだから…。


目頭にまで飛び火したのだろうか。目頭が熱い。視界が潤んでいく。


パンと唇が掠める距離までいった頃…。とうとう思考が停止した。所謂、キャパシティオーバーという奴である。





「神童…どうした?」





不自然な格好で静止した俺に、心配そうに伸びてくる霧野の手。それを反射的にひっ掴み、ぎゅうっと握り締める。熱くてどうしようもない体温に、彼の手はひんやりしていて心地よい。

びっくり眼で此方を見つめる霧野。

頼り無げなその表情が、絶妙に愛しさを駆り立て、気持ちが溢れて止まらなくなる。


大好きだ。たぶん、ずっと大好きだ。


誓ってみせる。



大きく、息を吸い込んだ。









「俺はパンじゃなくて…き、霧野が好きって言ったんだ」









告白なんか出来ない。

そんな勇気はない。

ずっとこのまま片思いでいい。


そう思ってた自分は、彼を見詰めていく内に、溶けて消えてしまったようだ。













君のことが
気になってきたんだ


(感情吐き出して今すぐ素直になれ!)

















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