はじまり
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当然の如く、神童拓人と霧野蘭丸は同じ高校へ進学するものだとばかり思っていた。
揃いの制服に身を包んだ麗しい容姿を引っ提げて、さながら仲睦まじい美男美女カップルのような出で立ちに周囲の関心を引きながら、毎日を共にするのだろう。
あの二人の間に、また、俺が存在しない時間が募っていくのだ。
霧野先輩が、また再び、遠くなってしまう。
と、やり切れない想いでいっぱいだった。
最後に想いを伝えるという選択肢は、絵になる二人を眺めていく内に消え失せた。
きっと彼等は、両思いだ。お互いが気付いていないだけで。
あの二人は、相手を思い遣り過ぎるがゆえに、自ら身を引いてしまうような、そんな人達だったから。
そんな彼らに苛々したけど、手助けするのは勘弁だった。
精々、健気なイイ子ちゃんぶってろ。
あんた達なんか、一生、親友どまりでいればいい。
罵倒に似た台詞を、何度も心で呟いた。
綻びかけた桜の淡いピンク色でさえ彼の事を彷彿とさせ、卒業式の迫り来るどうしようもない焦燥感の中を俯きながらやり過ごした。
過ぎていく日々の中、彼の笑顔を垣間見ると、嬉しいような悲しいような。
取り敢えず、泣きたくなった。
まあ、今思えばその時の俺は、一番、恋心に素直だったなぁ。と、しみじみ思う。
俺が、二人が別の進学先を希望していると知ったのは、卒業式当日。
正直俺は、歓喜した。
ボロボロ泣いて、別れを惜しむ二人を眺めながら。
そして俺は一年後、当然の如く霧野先輩と同じ高校へ入学する。
俺が、彼と揃いの制服を身にまとい、再び毎日を共にできるのだ。
しかも、
邪魔者のいない、二人きりの日々を。
ああ、うれしい。
薄桃色の花弁が舞う中を、着馴れないブレザーで飛び出した。
はじまり
(あの人との思い出をぬりつぶしてあげよう)
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