短編。 | ナノ





君に抱くこの気持ち
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少し下いです注意。
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報われない不毛な片想いってやつを、俺はどうやら結構楽しんでいるようだ。

別に、俺が悲劇のヒロインごっこに興じていたりとか、俺が生粋の精神的マゾヒストとか、そういう事じゃなくって。

人間というやつは、絶対に抗えないと悟った途端、感情の起伏が静まる生き物らしく。


俺の想いが叶うには、そりゃあもう、天辺を見上げようとすれば首が痛くなるくらい巨大な壁が複数立ちはだかっているものだから、もう半ば吹っ切れてるっていうかなんていうか。

もちろん好きだけど、叶わないんだったらまあいっかって感じ。


あわよくば。みたいな考えが無いわけではないけれど、今の俺は好きな人の幸せを願えるくらいの余裕を持っている。


老けた事言ってんじゃねーよ中学生。


なんて突っ込みは、現在受け付けておりません。


まあ、取り合えず俺の恋の成就を阻む第一の壁は、我が純朴なる切ない想いを抱く対象が、所謂、同性という事。


今時同性愛なんて珍しくも何ともないけど、やっぱり想いをぶつけるのには抵抗がある。


外見はどっちかっていうと女性よりだけれども、彼のあの可憐な顔の下にモノがついているのは当然確認済み。


そして正直、実際に彼とキスしたり寝たりしたいかって問われたら首を傾げて暫く口をつぐんでしまうかもしれない。


今までの前振りなんだったんだよって感じだけども。


もしかしたら、これってただの思春期に有りがちな憧憬ってやつで、だから簡単に諦められてるのか?とか、思案したりもする。


だけど、俺が彼を思って1人でシたことが無いって言ったら、当たり前の如く嘘になるわけで。


まあ、そこで思い浮かべてる彼の体が、真実を映した男の体なのか幻想を投影させた女の体なのかは、よくわかってないんだけどさ。


まあ、アレです。

彼は顔だけでイけるくらい、美形なんです。


そういう事にしといて下さい。



下い話しは置いといて。



俺は現在、その例の彼と部室で2人きり。


疼くのは、餓鬼っぽい好奇心。

悪戯盛りなもんで。


学ランを簡単に畳んで、ほくそ笑みを浮かべる。



「せーんぱいっ」

「お…っ!?、と」


まるで着色料たっぷりの昔の駄菓子みたいな作り物臭い桃色の髪を惜し気もなく煌めかせながらそそくさと部活の準備に取り掛かる彼の背後に飛び付いて華奢な胴体に腕を巻き付けた。


彼はおっとっとと、足を千鳥足にして2、3歩踏み出してロッカーに手をついて事なきを得、俺の嫌がらせという名の細やかな愛情表現に対して「…まったく」と、溜め息混じりに言葉を口にする。




「急に何するんだよ狩屋」

「抜き打ち身体チェックでーす」

「はあ?なんだそれ」



そのまんまの意味ですよっと。


弾力のある縫いぐるみに抱き着くような勢いでむぎゅうっと先輩を抱き締めて、額を彼の背中に擦り付ける。


ワイシャツ越しの彼の温もりは、なかなか。

薄っぺらい布からじんわり滲む仄かな暖かさに思わず目を瞑る。



「先輩、あったかーい」

「そうか、よかったな」

「先輩はあったかい?」

「ふつう」


ていうか、着替えらんないんだけど。


そんな彼の言葉は無視。



本当に細っこいな。
ちゃんと食べてんのかな。

腹筋の辺りをまさぐるように、指をぐにぐに彼の体に食い込ませてみる。

ううむ。固い。

どうやら男子中学生相応の筋肉はお持ちのようだ。



「くすぐった」と、身を捩らせる先輩の体を、さらに色々まさぐってみる。


ふうむ。

やっぱり、男、ですね。



紛う事無き、男性だ。







「狩屋お前、いい加減に…」


「先輩ってさ、男で抜ける?」


「…は?」


「いえ。なんでもないです」







ところで、ううんと。

困ったな。



俺、やっぱり、同性愛者なのかな。




取り合えず、トイレいかないと。











君に抱くこの気持ち
(性欲有り=愛ですか?)



















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