短編。 | ナノ





後輩になりたい
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マサ→蘭←輝を見てる拓目線。
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霧野蘭丸という人物は、なかなか思慮深く、おまけに面倒見がいいというか。

一言で言えば、『良き先輩』というやつで。


それだけでも充分魅力的なのに、容姿端麗で美少女と形容してしまっても然程違和感が無い可憐さを持ち合わせているときてる。


そりゃあ、

なついてしまう後輩が出てきてしまっても、仕様が無いよなぁ。


あの2人のように。




椅子に腰掛けた霧野の傍らを、まるで子猫のように擦り寄る小柄な少年2人に視線を移した。





「霧野先輩、今日も頑張りましょうね!!」


きらきらと無垢に輝く団栗眼を細めながら霧野に笑い掛ける、如何にも純粋そうな紫頭の少年は、影山輝。


「霧野先輩、今日も女顔全開ですね…いってぇ!!」


猫のようなつり目を笑みに歪めて、霧野に憎まれ口を叩いて頬っぺたをつねられている少年は狩屋マサキ。


共に我が雷門サッカー部の期待のホープだ。


先輩顔負けのプレイをしてみせる、大事な戦力であり仲間だ。


チームメイトの仲睦まじい様を見て、その和やかな雰囲気に思わず顔がほころんでしまう。


言っておくが、霧野の隣″という俺専用の特等席を奪われた事による嫉妬なんか全くしていない。


全然していない。


第一、後輩に嫉妬だなんて大人げないにも程があるじゃないか。


先輩を慕う後輩たち。
とても、可愛らしく微笑ましい。





捻り潰したいくらいだ。





手に持っていたペットボトルが、ベコッと音をたてへこむ。

あれ。ペットボトルって、こんなに柔らかかったっけ。






(…やばいですよ浜野くん。神童くんが嫉妬に燃えてます。)

(ちゅーか神童、人殺しみたいな顔してるじゃん。山菜、シャッターチャンスじゃね!!)

(ロッカー室に女子は入れませんよ浜野くん。)

(あ、そっか。)







へこんでしまったペットボトルをゴミ箱に放り込みながら、然り気無く3人の会話に耳を傾ける。





「霧野先輩って、いい匂いしますね」

「そうか?」

「髪きれいだからでしょうか」

「影山の髪もモコモコしてて触り心地いいぞ」


はい。影山あとで屋上。
(もうキャプテンは開き直ってます。)


なに純粋ぶった顔して霧野と髪触りっことかいうイチャイチャイベントを誘発しているんだ?


俺だって、霧野の髪触りながら「綺麗だよ…」とか言いたくてたまらないんだが。





「霧野先輩、頬っぺ痛いんですけど…離してください」

「お前の頬っぺた柔らかくてついついムニってやりたくなるんだ」

「えー。自分だけズルい。俺も先輩の頬っぺた触りたいです」

「しょうがないなぁ」


狩屋はあとで体育館裏。

お前絶対2人っきりだったらここで霧野を押し倒してアレとかアレとかしただろう!!

「…俺が触りたいのはこっちですよ?」

とか言いながら、霧野の身ぐるみを剥ぐんだろう!?

俺だって「霧野の肌はスベスベだなぁ」とかやりたい!!



なんなんだ、あの2人。

スキンシップ激しすぎだろう。

後輩という立場を最大限に利用して、霧野に触ったり近寄ったり…

羨ましすぎて息が止まる。

俺も、親友という立場を最大限に利用して、いつも霧野の隣を確保していたが、

親友ってさ、

近いからこそ過度なスキンシップができないみたいなそういう感じあるよな。

それに、恥ずかしいし。だって、俺、ああいう事するような”無邪気で悪戯っ子な年下”みたいなキャラじゃないじゃないか。

どっちかっていうと”霧野の王子様”って感じじゃないか。

あぁもう、俺だって霧野の後輩になって「霧野先輩」とか呼んでみたい。「霧野先輩ここ教えてください」とか言って手取り足取り優しく教えてもらいたい。




「霧野先輩って、どうしてそんなに可愛いんですか?僕、霧野先輩と付き合いたいです!!」

「影山のほうが可愛いぞー」

あぁ、影山羨ましい。

あいつは純真無垢で素直なキャラだから、霧野を然り気無く口説いたり褒めたりしても、なんか許される感があるんだ。

俺が「霧野は本当に可愛いな。どうしてそんなに可愛いんだ?もう可愛い。本当に可愛い。可愛いよ霧野。可愛い可愛い。もう可愛いすぎて霧野なら世界救える。もう霧野の存在そのものが可愛いという概念の塊」とか本音をぶちまけたら、霧野はきっと「…あ。ありがとう」って困った顔するんだろうなぁ。可愛いなぁ。



「俺だって霧野先輩と付き合いたいです!!」

「あはは。狩屋は本当に俺をからかうのが好きだなぁ」


狩屋、どんまい。

あいつは普段霧野にやたら突っ掛かってるから何を言っても本気で受けてめてもらえないんだよな。だけど、だからこそあいつと霧野はなにか強い絆で結ばれているような気がして、気が気でない。

俺が「霧野付き合ってくれ」って言ったら…あぁ、やめよう。なんか鬱になりそうだ。泣きそう。






なんだか極限に気分が沈んで、隅で体育座りをした。

あぁ、俺も後輩になりたいなぁ…。


と、

頭の中で妄想…じゃなくて夢物語を描いていると。








「どうした神童!?」



背後から、霧野の声。






振り向くと、心配そうな顔で手を差し伸べてくれている霧野。


そして、霧野の背後には影山と狩屋が佇んで、少し心配そうな顔で俺を見詰めていた。




「咄嗟に駆け寄るだなんて、霧野先輩ってほんとーにキャプテン大好きですよねー」


「狩屋、うるさい」


「でも、霧野先輩のお話ってほとんどキャプテン関係ですよ?」


「か、影山まで、なに言ってんだよ!!」






















あぁ、泣きそうだ。


やっぱり俺、今のままでいい。




ひとりでいじけて、情けない。











後輩になりたい
(みんな、貴方が羨ましいよ)













……………………………


あとがき

きっと、みんな羨ましいんです。


純真無垢な影山くんも
悪戯っ子な狩屋くんも
幼馴染みな神童くんも

















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