短編。 | ナノ





蘭の花
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にょた百合です注意です。
神童♀さん目線。

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蘭の花を買った。



小さな、ピンク色の愛らしい蘭。




肉厚の花弁は華やかで、左右相称の美しい造形を精密に形作っている。


爽やか且つ甘い香りが迸る、どこか絢爛な雰囲気を湛え咲き誇る花は、小さいながらも圧倒的な存在感を放っており、愛しいあの少女を彷彿とさせた。


作り物のように滑らかな茎から生えた光沢のある葉は、艶々としていて、凛と強かに重力に逆らい自らの存在感を主張しつつも自重を忘れず、楚楚と煌めき、蘭の花の鮮やかさをよりいっそう際立たせている。



そうね、葉っぱは例えるなら、

あの子の、睫毛かしら?


…ちょっと、太いけれど。





あぁ、でも、

本当に、綺麗。





溜め息が漏れた。




本当に、霧野みたい。







蘭には美人″という花言葉があると店員が教えてくれた。



お客様にぴったりですね。


そんな店員の言葉に、首を振りながら愛想笑いで返す。


私なんかよりも、ぴったりな人いるんですよ。名前も蘭っていうんです。



そう続けようかとも思ったけれど、例の彼女の笑顔を思い出し、顔の紅潮を感じて俯いてしまった。


誤魔化すように、スカートの埃を払う仕草をした後、再び店員の顔を見る。


相変わらず営業スマイル。


良かった。

変に、思われていないようだ。

安堵。


俯いたときに多少乱れた前髪を直しながら、蘭の花を待った。




きっと、この蘭の花も、あなたみたいな可愛らしい方に買って頂いて喜んでますよ。


そう言いながら、店員は小さな蘭の鉢植えを恭しく差し出してくれた。


受け取りながら思わず、顔がほころぶ。


蘭もよろこでいる″


この言葉を、何度も脳内で反芻させた。



大切にしてくださいね。



「もちろんです。」



可憐な蘭の、香しい匂いに包まれながら、有りったけの笑顔を浮かべた。









蘭の花。


私だけの蘭。




大事にするにきまってる。







ねぇ霧野、


蘭契って言葉知ってますか?



美しい友情の交わり″


って、意味なの。



貴女のお名前は蘭だし、

私達にぴったりね。






私たちは、親友でいいのよね。


だって私、貴女を穢したくないんだもの。



あなたは、綺麗なままでいて。







行き場のないこの狂おしいほどの恋慕は、


貴女のかわりの、蘭の花へ、ぶつけるから。










花弁を口に含み、


やさしく愛撫した。













蘭の花
(少女は花に酔いしれる)



















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