照れる
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「待たせてごめんな」
「いえ別に。俺が先輩と帰りたくて勝手に待ってただけですから」
「なんだそれ。今日の狩屋カッコいいじゃん」
「ときめいた?」
「少しな」
「まじで」
「嘘だよ」
歯を覗かせて、悪戯っぽく笑う先輩。
なーんだ。残念。
期待して損した。
部活動の喧騒が失せた校舎はどこか鬱蒼とした雰囲気を醸し出していて、
まるで、学校に閉じ込められてしまったかのような感覚に苛まれる。
まあでも、
霧野と2人きりなら、
ぜんぜん構わないけど。
隣の彼の横顔へ視線を移した。
窓から差し込む日没間近の夕日に、彼の髪の毛が透き通って、とても、綺麗。
横顔を縁取る夕日の橙色が、額から顎にかけての整った輪郭を微細な曲線を描いて際立たせ、
幻想的な絵面に、
見蕩れた。
あぁ、かっわいいなぁ。
くそ、俺がときめいちゃったよ。
沸き上がる衝動に抗う間も無く、彼の肩にかかる桃色の髪へ、指を絡める。
「どうした?」そう言いたげに首を傾げる先輩に、思わず笑みが零れた。
その仕草、可愛い。
やばい。
「ねぇ先輩、キスしていい?」
「廊下で?」
「じゃあ教室で」
指で彼の髪をくるくる絡め取り、その髪に、口付けをした。
やってから、後悔の念が、心を苛む。
あー…。
またキザのことしちゃった。
恥ずかしい。
恐る恐る、上目遣いで、沈黙する彼の顔色を伺うと、
あれ、
先輩、真っ赤じゃん。
夕日のせい?
予想外の彼の反応に吃驚して、思わず静止。
ただでさえ大きな瞳をさらに真ん丸く見開いて、頬を紅潮させながら固まっている先輩を見詰めた。
先輩の赤面顔、はじめてみた。
この顔の赤色が、夕日のせいかどうかなんて、
この際、どうでもいい。
彼の頭の後へ手を回し、顔を此方へ引き寄せ、唇を重ねる。
背伸びしないと届かない自分の小ささに若干幻滅しながらも、
彼を抱き寄せ、確りと口付けた。
数秒の後、唇を離すと更に赤面した先輩の顔。
やっぱり…。
「…先輩、不意打ちに弱いでしょ?」
「…う、うるさい」
「先輩、照れてる」
「照れてない!!」
いつもの凛々しさが消え失せて、余裕なく取り乱す霧野先輩。
耳まで真っ赤にした表情と、どことなく潤んだようにみえる瞳が、可愛いくて可愛いくて可愛いくて可愛いくて可愛いくて可愛いくて。
なんだこれ、ちょう可愛いんだけど。
あぁ、やっぱり、
霧野先輩って世界一可愛いわ
どうしよう
「もっと照れさせてもいい?」
照れる
(ギャップに弱いんだよね)
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