短編。 | ナノ





電話
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狩屋マサキだよ。


最近寒いですね。


寒くて、もう、視界がぼやける。






ぴろれれる〜♪



お。メール?


初期設定のままのちょっと間抜けな電子呼び出し音と、鬱陶しいバイブ。


それがひとりの寒空に、微かに響いた。


下校途中の今の時間代のメールと言うことは、大抵、部活の連絡網とかそんな感じ。


めんどくさがって今見ないと、結局、忘れて寝ちゃって、大変なことになる。


(前に、急遽大掃除するから軍手持ってこいみたいな連絡を見逃して、草むしりし素手でやって手切った。痛かった。しかも爪の間に泥入るし。最悪。)




鞄に手を突っ込んで、チカチカ光るランプを頼りに携帯を引っ張り出す。



ん。


なんだか、いつもとランプの色が違うな。


あと、なんか、やけに長いぞ。

呼び出し音が。


バイブしながらランプを点滅させる携帯を見詰める。

開いて見ると、

メールじゃなくて電話だった。


しかも霧野先輩から。


吃驚して、全身の毛が逆立つ感覚。


瞬き3回。

よそうがい。


霧野先輩から、電話。


ぱあぁっと、視界が輝いた。


わなわな、歓喜で震える手。



携帯ってさ、ほぼメール専用なわけですよ。


少なくとも俺にとっては。

いざ電話とか来ても、なんか、タイミング悪くて無視ちゃうし。



いや、でもこれは、


今回は。


(これは、出るべき!!)


霧野先輩から電話とか激レアじゃん。

耳許に先輩の声とか、やばいじゃん。

息遣いとかも聴こえちゃうわけ?


うっわどうしよう。

めっちゃ緊張する。




あ。えっと!!

いや。

勘違いしないで欲しいんだけどね。


俺はけっして、先輩からメールとか電話とか日々待っている訳じゃないから。


ぜーんぜんだから。




アドレス聞くのも、超めんどくさかったけど


「同じDFだし、仲間としてアドレスは聞くべきだろ」


って、霧野先輩が言って(るような気がし)たから、


しかたなーく、聞いてやったんだしね。


まあ、アドレス交換くらい、すぐだし?


一応、聞いておくべきじゃん?



赤外線通信とか、めっちゃ緊張して手が震えて、なかなか赤いとこに合わなくて大変だったけど。

「狩屋、そんな緊張すんなよ」

って、先輩の笑顔に卒倒しそうになったけど。

「う、うるさい!!」

って、クールに返したし。

手汗で携帯滑って落としたけど。



4回。





まだしつこく鳴り続ける携帯のボタンを押して、

耳に当てた。



もー、

霧野先輩どんだけ俺と電話したいんだよ。

なげえよ。

俺は逃げませんよ!!

いつでもウェルカム!!

ふふふん♪



何故か上がる口角。


声色も、自然と明るくなる。


先輩何のようかなー。



「もしも…」





『神童!?今どこ!?』


先輩の声が想像以上に大きくて、全身が飛び上がる。

試合中に指示出すときと、同じくらいの声量。


ちょっと先輩、耳許に直に来るんですからもっと優しい声でくださいよ。


鼓膜いたいです。


どんだけ張り切ってるんですか。




『神童?』



ん?


は?


今、神童つった?


携帯を握る力が強くなる。



いやいや。

神童と狩屋じゃ、アドレス帳離れすぎだし、


間違えるわけないだろ。

うん。


嫌な予感を振り払って、再び先輩に呼び掛ける。



「きり…」




『神童、ごめん!!さっきは、急なことで!!その…吃驚しちゃっただけなんだよ!!』


あれ。

…やっぱり、

神童っていってる。



間違え電話?


うわー…

霧野先輩ださ。



しかもなんかテンション下がったし、


なんだこのガッカリ感。


崩れ落ちそう。





「先輩…」


『別に神童が嫌だった訳じゃないんだよ!!』





えっと。

ナニコレ。


なんか、

先輩、泣いてるんですけど。






『なあ神童、次は、きっと、拒んだりしないから…』





ナニコレ。



ナニコレ。





『俺、ちゃんと、お前のこと好きだから!!だから…』



ザックリ。


先輩の涙声が、鼓膜に突き刺さる。

同時に、心臓にも、

今までにない衝撃。


激痛。



激痛。





『神童、やっぱり怒ってるのか…?』



あ。やば。

なんか、



『なんか、言って。お願いだよ』




最悪。

黙れ。




『神童…、』




うるせえ。

神童神童、うるせえ。


ああ、


もう、





「…霧野先輩間違えてるんですけど」



『…?!、狩屋?』



「なにケンカ?キャプテンとケンカしちゃったん…」



『えと、…悪い!!』



ツーツーツー




切られた。





うわぁ。

最悪なきぶん。


ほもの恋のいざこざに、巻き込まれちゃったよ。


液晶を見詰め、佇む。




霧野先輩、

なにがいやだったんだろ?



キス?



もしかして、それのこと以上だったりして?



あはは。

さいあく。


キャプテンと霧野先輩ってそこまで行ってるんだ?



さいあく。

いちばん知りたくない情報じゃんか。


どーでもいー。


果てしなく、


どうでもいいんですけど。





…あーあ。

ばかみたい。



時間の無駄。お金の無駄。



霧野先輩からの電話なんかもう二度でない





「…くそ」



頬に伝うこれは、

きっと、

身近にほもがいたことへの、冷や汗だから。





べつに、


泣いてるとかじゃ


ない。




…………………………






『ちゃんと、お前が好きだから!!』



電話越しの


先輩の言葉が


何故か、頭にひびいてる


俺へのことばじゃないのに



実は、ちょっと


うれしく、


かんじちゃったり、

しちゃった、り。




まあでも

キャプテンへの愛の言葉だと思うと






死にそう。






…………………………

あとがき




これもし

狩屋くんの気持ちわかってる蘭ちゃんがわざやってるとしたら、

ゾワゾワしますね。

















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