短編。 | ナノ





神童蘭丸
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「神童拓人って、名前、かっこいいよなぁ…」


「どうしたいきなり。」



…現実逃避。


霧野は呟き、机に突っ伏した。


右手からシャーペンが転がり落ちる。




只今、テスト3日前。


『数学教えて!!まじ分かんない!!』


と、


渋る神童を泣き落として、霧野は半ば強引に神童の家へ上がり込み、


机に問題集やら教科書からを広げ、

勉強会をしているところだった。



神童的には、1人でじっくり最後の追い込みをしたかったみたいだが、

最終的には、



まあ、

霧野の頼みだ。


仕方がない。



そう笑って、教えてくれることになった。


しかし、

神童には、申し訳無いが、





ぜんっぜん、

まったく、

微塵も分からない。



もうなんか、

神童の口から溢れ出る夥しい数学記号の羅列に、



脳味噌がついていかない。



霧野は軽く頭痛を覚え、瞳を閉じた。



「…神童拓人。響きもいいし。羨ましい。」


「そうか?」


「神童は名前がかっこいいから、なんでもできるんだ。」


「霧野蘭丸も、いい名前じゃないか。」


「弱そうだからヤダ…」


馬鹿みたいなこといっても、


なんだかんだ言って付き合ってくれる優しい神童。


霧野はひとり考える。


しかも、

神童財閥の御曹司で、

チームのキャプテンで

成績優秀、ピアノも達者。


お前ほんと完璧すぎだろ。

なんか自分の平凡さを痛感する。



『神童拓人』

そんな仰々しい名前を背負っているのに

まったく名前負けしてない。



凄いなぁ。

どうして、


神童は俺なんかと仲良くしてくれるんだろう。



もはや諦めの境地に至った頭の中で、


霧野はひたすら、

幼馴染みを賞賛していた。


現実逃避である。





「霧野、どこが分からないんだ?」


「…ぜんぶ」


「教えるから、ほら、顔あげて。」



小さく唸りながら、霧野は顔をあげる。



神童が差し出してくれたシャーペンを渋々受け取り、
数学の問題集とにらめっこし始める。




動かない右手。

進まないページ。

司会に蔓延る忌々しい数字とアルファベット。



…キャパオーバー。


再びシャーペンを投げ出し、今度は後ろに寝転がった。


あーあ。

神童ん家、天井高いなぁ。



もはや勉強にならない。

完全に裁たれた集中力。



あ。

もうだめだこれ。




「…もう俺今日から神童になる。」


ほら。


まーた馬鹿なこと言い始めたよ俺。



霧野は体を起こし、神童を見詰める。



「…?」



突拍子の無い霧野の言葉に神童は首を傾げていた。





そして、




途端に顔を赤くして、俯く。





え。

どうしたんだよ神童。


俺の目も当てられない馬鹿さ加減に赤面ですか?


霧野は苦笑した。


まあ、無理もないよ。





「き、霧野…」



神童がおずおずと、此方を覗き込む。


やけに、


瞬きの多い上目遣い。





視線を泳がせながら、神童は言った。



「…そ、それって、結婚するってこと?」







は…?




えぇ!?



ち、ちがっ!!




『神童になる』って、


そういう意味じゃない!!






「…なっ、なっ、なにいってんの!?」



「へっ、変なこと言って、ごめん!!」



耳まで紅く染めながら、

神童は俯いた。





心臓バックバック。


今の、


不意打ち過ぎて、






かなり、きた。




(…もう、ぜったい数字できない)




涙目の神童を見詰め、霧野は思った。



















(だいすき。)

















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