短編。 | ナノ





愛してるよゲーム
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テストまで残り2日に迫った今日この頃。



俺は神童の家に来てます。

ていうか雷門サッカー部員ほぼ全員来てます。





顔を青くして

『…もうしんだ』

と、言う者。


爽やかな笑顔と共に、

『もうしんだ』

と、言う者。



表情は十人十色。

だけど異口同音に動く口。


そんな部員達を見かねた心優しき神童が、

自宅で、勉強会を開催したって訳です。



なんてったって、神童は我等が学年トップの優等生。

学年の壁を越えてみんな大集合。(先輩方はさすがに来てないけど。)


みんな齷齪と最後の追い込みをしたり、神童にヤマを聞いたりしている。(悪あがきとも言う。)





…そんな切羽詰まった雰囲気をぶち壊す人物がひとり。


「愛してるよゲームやろーぜ!!」



輝く団栗眼。

ゴーグルがキラリと照明を反射する。




浜野勉強しろよ。




そんな部員達の眼差しに晒されながらも、浜野はその溌剌とした笑顔を崩さない。


もう完全に吹っ切れたらしい浜野は、さっきから勉強してる様子がなかった。



まったく。浜野は…。

ていうか愛してるよゲームってなんだよ。

何すんだよ。





「ちゅーか、今からやっても無駄っしょ。」



…あ。


今一番言っちゃいけないこと言った。





カラーン。


天馬が鉛筆を落とし、

「…た、たしかに」

と、呟くと、

1年勢が、へにゃへにゃと机に顔を伏せはじめた。


2年勢も、勉強する手を止め、なんだか神妙な面持ち。






…ほら。


みーんな、明らかにやる気失せちゃったじゃんか。




「ちゅーか、次頑張りゃいーっしょ。今は革命で急がしーし。」


「「……………。」」



浜野のポジティブシンキング(?)に感化された部員達は、

きっと、



(それもそうか…)



とか、思ってる。


もちろん俺含めて。





………………………………


「よっしゃー!!じゃあ次は剣城が倉間に愛してるよ″!!」


「「ウェーイッ!!」」



現実逃避を選択した俺達は、もはや、物凄いはしゃぎようだった。


坊っちゃん神童が付いてけなくて、戸惑ってるし。



ちなみに愛してるよゲームとは、


@くじ引きする。

A青印を引いた人が、赤印を引いた人に「愛してるよ」って言う。

Bにやけた方が負け。

Cお互い真顔だったら、青印の人が攻めまくって勝負つける。



という、何とも思春期の俺達の心を擽るゲームなんだぜ!!

まあ、今男しかいないんだけどね!!



でもいいの。

今は、

カタカナ三文字、英語でエグザミネーションとも言う憎きアイツを忘れたいんだ。




「…倉間先輩、愛してるよ」

「…ッ」

「…はーい倉間笑ったアウトー!!」

「も、の、ま、ね!!」

「南沢さんのふぁさァってヤツやって!!」



倉間のキザったらしい前髪掻き上げに、手を打ち鳴らして、涙が出るほど笑ったあと、(追い詰められてるがゆえの、ハイテンションてやつ)




次のくじ引きへ手を伸ばした。



あ。

俺、赤じゃん。



青ダレ。

もし倉間だったら絶対笑っちゃうんだけど。




「…次は、神童が霧野に愛してるよ″!!…って、おい!!」


「「ウェ…って、は!?」」




よっしゃ。

神童なら勝てそう…って、

なにみんなテンション下がってんの。




(神童が霧野にとかシャレになんなくね)

(笑っていいのかわかんないですって)

(キャプテンまじ殺す)

(がちだったらどうすりゃいいの)

(笑えねー)




オイコラ。

ひそひそ話すんな。


なんだよみんな。

俺と神童じゃ、不満なわけ?




「失礼だなー。なあ神童?」


って、神童。


なんかちょう真顔になってる。

真顔でなんか思い詰めてる。



「…神童。疲れちゃったか?」


「…あ、いやいや、だ、だいじょぶ!!」



うむ。

コレは無理してる時の神童の態度だ。



「神童無理はよくないぞ。ソファで横になってきた方がいいんじゃないか?」


さんざん俺達に付き合ってくれたし、

もう、神童には感謝感謝だ。


だから、別に、無理してこのハイテンションの中にいなくても大丈夫だからな?


すると、

神童が神のタクトするときみたいなキメ顔で、



「いや、大丈夫だ。俺、霧野に愛してるよって言いたいし。」


と、言った。




…し、神童。

俺達の現実逃避に付き合ってくれるなんて、

なんて、いいヤツなんだ…。


さすがキャプテン!!



よっし!!

こうなったら、大爆笑の渦に皆を巻き込んでやろうぜ!!



神童と目配せし合い、グッと意気込んだ。



「霧野、言うぞ」

「おう!!」

「霧野、あい…」

「ちょっと待ってください!!」




邪魔が入った。



この声は、


あの水色癖毛の手のかかるアイツだ。





「狩屋邪魔しちゃダメだぞ。」


「キャプテンじゃシャレになんないんで、俺が言います!!」


「…は?シャレになんないってどういう事?」


「霧野先輩の鈍感!!」




…なんか後輩に怒鳴られた。



「おい。狩屋、霧野に迷惑かけるな。」


「キャプテンここぞとばかりに先輩に告白しようとして…、このむっつりスケベ!!」


「な…っ、お、お前だって霧野に愛してるよって言いたいんだろ!!お前だってそうじゃないか!!」



え。

ちょっと、


なんで神童と狩屋が喧嘩してんの。




「だからぁ、キャプテンだとシャレになんないんですって!!」


「でも、くじで選ばれたから仕方ないだろ!!」


「どーせ、なかなか霧野先輩がにやけないのをいいことに、キスとかする気だったんでしょ!!今だったら、ギャグですみますし!!このむっつり!!」


「う、うるさいっ」


「うわー。その顔図星でしょ?」


「お、お前だって、霧野先輩、ここ教えてくださーい″とか言いながら、霧野の太股触ってただろ!!」


「…っな、なんでソレを」


「霧野によってくる虫を察知するのは慣れてるんだ。」


「このストーカー!!」






結局、喧嘩は10分以上続きました。



※あ、浜野だよん。ちゃんと、霧野には耳せんしといたから問題ないぜ。



……………………



で。




「霧野愛してるよ!!」
「霧野先輩愛してます!!」


いや。

同時に言わないでください。





………………………













「よーっし!!じゃあ、より霧野をときめかせた愛してるよ″言った方が優勝な!!」


おい待て浜野。

ルール変わってるぞ。



「なんとなんと、優勝者には霧野先輩のほっぺちゅーが!!」


天馬も落ち着こうな?

おめめキラキラしてるぞ?
勢いで化身出すなよ?



「ボク狩屋を応援するっ!!」

しんすけまで…。



「じゃあ俺達2年は神童勝つのに賭けるぜ!!」



浜野、でこぴんするぞ。



「じゃあもし先輩方が賭けに負けたら、こんど缶ジュース驕ってくださいよ?」



剣城が初期の頃の悪い顔してる…。






「「よし…!!」」


神童と狩屋も睨み合ってないで暴走する奴等を止めろ。




「じゃあよーい…」

「スタートッ!!」




あ。

はじまっちゃった。



なんか、俺にメリットが無い気がする。




ていうか野郎が野郎ときめかせてなにが面白いんだよ…。


あいつら絶対、

テストが嫌すぎて頭おかしくなったな。うん。




まったく、困ったね?

神童、狩屋。






………あれ。



…なんか、2人がマジな顔してる。


どうしよう。

じりじり近寄ってくるんですけど。




「霧野、好きだ!!」
「霧野先輩、好きです!!」


だから、同時に、言うなって!!


なんか恥ずかしいから!!

反応に困るから!!




「霧野、俺は霧野のためならなんだってできる。」


ちょ、ちょっと、

神童が、すごい、真顔。


てか、顔、近い。



「俺は霧野が好きだ。誰よりも大事だし、大切だし、誰にも譲りたくない。」



両手をとられ、

真っ直ぐな眼差しが俺を射抜く。




…神童ってさ、

凄く、顔、整ってるわけですよ。


目鼻立ちくっきりしてるし、

黒目がちっていうか、綺麗な目してるし、

唇なんかも形整ってるし。


髪の毛もふわふわしてて、優雅で気品溢れる王子様ってかんじ。(じっさい財閥の坊っちゃんだし。)


かっこいいんだよ、神童って。



そんな神童にさ、


こういうこと言われて、ときめかない女子はいないよなぁ、とかは思う。


俺は男だから、ときめかないけど。



(てか、神童ノリノリだな)

神童楽しそうだし、

あいつらの悪ふざけに付き合うのも、悪くないか。



「霧野、愛してるよ」


おお。王子様スマイル。

めっちゃきらきらしてる。


さっすが神童。


…こりゃ、狩屋、勝ち目無いな。



「霧野先輩、いま、失礼なこと考えたでしょ。」


背後から声が響く。


「狩屋、よく分かったな。」

「…むかー。じゃあ次は俺の番ですから。こっち向いてください。」


「おう。」



狩屋へ向き直る。


すると、


…押し倒された。


なんだこれ。やりすぎじゃないか。狩屋。




「霧野先輩、好きです」




…ふむ。

こうして見ると、

狩屋って、意外と可愛い顔してる。



下睫毛長いし、

こう、猫みたいなアーモンドの瞳も、大きくて綺麗だ。

…たまに、凶悪に吊り上がるけど。



まあ、でも、それがギャップっていうか。


可愛い顔して手のかかる弟系みたいな。


女心ってやつを擽るっていうか、

ほら。母性を刺激するっていうか。

そんな感じで、女子にモテるかもしれない。




「霧野先輩は俺だけの先輩でいてくれればいいんです。他の人なんか構わないで、俺だけを見ててくださいよ」



こういう我儘な感じも、また、いい。

みたいな人、たくさんいそうだ。


「霧野先輩、愛してるよ」


にっこり。

お前、そんな素直な笑い方できたの。



…こういう我儘なやつが、不意に優しく微笑んだりすると、

女子って不覚にもときめいちゃいそうだ。


あれだな。狩屋は小悪魔系。


神童が正統派王子様なら、
狩屋は小悪魔。





(てかコレ誰が勝敗判定すんの。)





……………………………




「はい。じゃあもう霧野ちゃっちゃと結果発表しちゃって。」


「浜野お前、確実に飽きてるだろ。」


「ちゅーか、長すぎ。ためすぎ。飽きるっしょフツー。」




…確かに、みんな飽きてる。


天馬としんすけなんか寝てるし。


あ、剣城まで…。


2年組はトランプしてるし…。(浜野含む)




「はーい、じゃ、カウントダウンしまーす」


なんか間の抜けた掛け声が入る。


「さーん」


あ。てか、どうしよう勝敗。


「にーい」


ぶっちゃけ、どっちもどっちだったしなぁ…。


「いーち」


ていうかまず、ときめいてないし。


「ぜろー」


うーん。でもここで、

なにもしないのも、ノリ悪いよなぁ。







………………………







結局、霧野は2人を逆に口説き落として、


ついでに戦犯浜野をときめかせ、



さらについでに部員全員を赤面させ、



結局、霧野無双で終わりましたとさ。


優勝霧野。





おしまい。

















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