短編。 | ナノ





骨が軋むの
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『あなたのお人形』




最近、体が大きくなってきた。





首が太くなって、

生々しく喉仏が突出して、

傘のように、

骨組みが目立った手。


肩が、四角く角張って、

不格好なロボットのよう。

足が、脹ら脛が、太股が、
柔らかさを失い、ただの筋肉の塊になってしまった。





(…気持ち悪い)




こんなんじゃ、

神童に嫌われちゃう。




………………………




「霧野は可愛いな」



神童は俺が可愛いから、

好きになってくれたんだ。



「本当に可愛い。好きだよ。」




証拠に、

彼は繰り返し繰り返し、

俺に可愛いと言う。







あの茶色の瞳が、

俺をね、うっとり、見詰めるんだ。


ミルクティみたいな甘い甘い瞳。


蜂蜜とか砂糖とか入ってる極上に甘いミルクティ。



甘い眼差し。


俺を見てくれる、甘い眼差し。



もう、すっかり、魅了される。



頭がくらくらする。


余計なことが考えられなくなって、

そのまま、神童に、全部委ねてしまう。



「…霧野、すごく、可愛い」





はじめは嫌だった言葉も、

彼に言われていくうちに、だんだん、悦びを感じるようになってきた。





目に痛いどぎつい桃色の髪も、

やけに大きな青緑の瞳も、


吐き気がするほど大嫌いだったけど、



「可愛いよ」


神童がそう言ってくれるから、


好きになれた気がした。









神童はね、俺を、認めてくれた。



神童は俺の全て。

最愛の人。

至高の人。



俺の所有権をもつ、ただ一人の存在。





だから、

可愛くない俺なんか、

価値がない。










だけど、

成長するにつれて、気持ち悪くなる自分。


ごつくなって、

生々しくて、

滑稽な、醜い体。






こんなんじゃ神童に見離される。見離されちゃうよ。



どうしよう。どうしよう。

どうすればいいんだろう。


だってね、


これ以上骨が発達しないようにカルシウムはとってないのに。

髪だって首の太さを誤魔化すために伸ばしてるし。


あとね、


体を華奢なまま保っていたくてあばらが浮くほどやせたの。


骨格のせいちょうやだから、


中国のテンソクだっけ?

それをためしてみたりもしたんだよ。




でも、


もう俺かわいくない。


かわいくない。かわいくない。




どうして?



どうして、こんな、


おとなにならなきゃいけないの?



むりだよいやだ。

神童にきらわれちゃう。





…かわいくない。



かわいくないとしんどうがどっかいっちゃう











こんな、

醜い体要らない。





………………………………





首の凹凸なんか削いでしまおう。

喉仏、気持ち悪いし。





肉を切り取って、一回りほそくしよう。




手もね、こんなおおきくなくていい。




関節いっこぶん、きりおとしてしまおうかな。









…めんどくさい



いっそ、くびからしたを、























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