好きって種類おおすぎ馬鹿じゃん。
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下駄箱付近の自動販売機に、ただいま俺と狩屋がたむろしてます。
いや、
たむろっていうか、
狩屋が何買おうか優柔不断なんで、一緒に帰る約束してる俺も必然的に傍に佇んでるだけです。
視線が痛いですが、ミルクティが極上に美味いのでまあいっか。
だけど、そろそろ人様に迷惑な気がしてきたので、彼の肩に手をかけさっさと買えと催促しようと思った時、
彼が唐突に口を開いた。
「ねぇ霧野先輩」
「なんだよ狩屋」
「すきってなんですか」
うっわ。狩屋どうしたの恥ずかしい。
思春期か。
そうか。そうか。
てかさっさと買えよ。
もう、ミルクティ無くなっちゃったんだけど。
思いっきり茶化して弄って引っ掻き回してやろうと思ったのに。
黄色の瞳が心なしか翳っていて、
「…………えっと、ね」
狩屋の表情が大層物憂げだったものだから、
ついつい、口をつぐんでしまった。
すきってなにってなに。
「あー…、狩屋、とりあえず急いでくれると助かります」
「あ。すいません」
ガシャン、
結局狩屋はいつも通りの、いちごみるくにしたらしい。
狩屋の顔を一瞥する。
やっぱり何か、塞ぎ込んでいる。
空の紙パックをゴミ箱へ放り込み、歩き出す狩屋の後を追った。
沈黙。
あれなんか気まずい。
狩屋との沈黙が気まずいなんて久し振り。
なんか話題を捻り出した方がいいような気がする。
じゃないと、別れ際に凄く気まずくて明日まで引き摺って仕舞いそうだ。
どうしたものかと思案していると、
狩屋がチラリと此方を見た。
そして、彼が先に沈黙を破る。
「先輩って彼女いたっけ」
あ。恋ばなオッケー?
さっきあんな質問してくるくらいだから、恋愛絡みで一悶着あったのかと思って意図的に避けてたのに。
なんだなんだ。
それなら遣りやすい。
「残念ながらいない。ていうか狩屋知ってんじゃん」
「…理想のタイプは髪の毛茶色でふわふわしてて容姿端麗で成績優秀で品行方正なお嬢様だからそれ以外とは付き合えない。″ってやつ?」
「うん。」
まあ、所謂、神童。
神童の女の子バージョン。
「絶対いないですよそんな子」
狩屋はムスッとした顔をしながら、前髪を弄る。
「先輩はほもなの?」
「いやほもじゃないよ。ただ、理想のタイプは神童みたいな女子ってだけ。」
神童が女の子だったら完璧だったのになぁ。
絶対に恋に落ちたのに。
「…もし、神童先輩に告白されたら、付き合う?」
「うん。」
彼の願いを断れる気がしない。
「ほもじゃん!」
「あ。そっか。いやでも違うんだって。俺、神童以外の男は無理だもん」
それに、俺、神童と付き合いたい訳じゃないし。
今のまま、親友で居させて貰えたら一番幸せ。
「先輩さぁ、いい加減目覚ませば?」
「じゅうぶん覚めてるけど」
「先輩モテんのに勿体ないですって」
「いや。俺あんまりモテないでしょ。」
こんな女々しい外見してるし。
勘違いした男供はたまに寄ってくるけど。
「モテるのは狩屋だろ」
高校へ上がり、彼は一気に背が伸びた。
急に大人びて、顔立ちもすっかり優男って感じ。
時たま、此方が絶句するほど目付きが悪くなるのが玉に傷だけど、
これは昔からだから、仕方無いだろう。
「…まあ、ぶっちゃけモテますよ俺」
「お前昔から外面もいいしな。その顔で優しかったらコロッといっちゃうよ」
どうせ、俺以外には人当たり良いんだろうなぁ。
眩しい笑顔で白々しいこと言いまくってそう。
腹黒二重人格って怖い。
「狩屋も彼女いなかったよな?」
「はい。ていうか知ってるでしょ?」
「…タイプが桃色の髪の毛でサラサラで美少女バリの外見で凛々しくて強くてカッコいい人だからそれ以外とは付き合えない″。ってやつ?」
「そうです。」
「いやいや。そんな子いないでしょ」
目、覚ましなさい。君は外見に恵まれてるんだから。
「いますよ。鈍感」
「鈍感ってなにが。だってまず桃色の髪の毛が希少じゃん。」
…カガミミロ。
狩屋の口からそんな感じの呟きが聞こえた気がしたが、
よく意味が分からなかった。
なにそれ。新しいポケモン?
ミミロップの進化系的な。
「まあ、美少女はいいとして。お前ならたぶん釣り合うし」
「そりゃどーも」
「凛々しくて強くてカッコいい女子は今時難しいって。江戸時代ぐらいまで遡らないといないって」
凛々しくて強くてカッコいい子と言えば江戸っ子。
江戸っ子みたいな子は江戸にしかいないよ。
「…別に江戸っ子好きなわけじゃないですから」
「え。じゃあ他に凛々しくて強くてカッコいい…、はっ!まさか、お前、神童が…」
「違います。先輩です」
「先輩がタイプなのか!?ますます神童じゃん」
えー…。
狩屋に神童かぁ…。
あげたくないような気がする。
てか許さないわ。うん。
「たしかに神童は素晴らしい人だけど、狩屋、神童は諦めてくれ」
じゃないとお前殴っちゃう。
「ちっげーよ!!霧野先輩だよ。」
「へ?」
「霧野先輩がすきなの!!」
「お、お前、俺みたいのがタイプなの…!?」
なにそれ怖い。
ていうか狩屋見る目無さすぎだろ。
駄目だよそれは。
狩屋は幸せにならなきゃいけないんだから、
そんな、
俺みたいのがタイプなんて。
確かに俺は狩屋と初めに仲良くなった先輩かもだけどさ、
こうやって、高校まで追い掛けてくれるほど慕ってくれてるんだなぁって、
嬉しかったけども。
「狩屋、お前は素晴らしいんだから、もっと、見る目を磨け!!」
「はあ?」
「狩屋は少しひねくれ者だけど、優しいし、努力家だし、すっごい良い奴なんだから、俺みたいのがタイプとか言ってたら駄目だ!!」
「なにそれ…」
「もっと神童みたいなやつを…」
あれなんか言ってること矛盾してる。
「俺なんかだめだめだから…」
「だっ…、からぁ!!」
「……っ!!」
え?
狩屋きゅうに声張り上げてどうしたの。
すっごい吃驚して、思わず飛び上がっちゃったよ。
「狩屋…?」
あれ。なんか涙目?
血の気が引いた。
「ごめん狩屋!!お前は見る目がない訳じゃないよな!!ただちょっと趣味が悪いだけで!!」
あー!!
フォローになってない!!
狼狽して、
何とか彼を励まそうと肩に手を置いた。
その時、彼が唐突に口を開く。
「先輩、すきってなんですか!!」
………………………
霧野先輩が神童先輩に抱いてる感情もすき″
でも
俺が霧野先輩に抱いてるすき″と、
絶対に種類が違うと思うんですよ!!
もう、
この鈍感あほばか!!
桃色の髪の毛でサラサラで美少女バリの外見で凛々しくて強くてカッコいい先輩が大好きなんだよ!!
気づけ。
俺の好きな人ばかにすんなよ。
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