短編。 | ナノ





病み拓蘭。
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『この感情は好きじゃ足りない』










君の優しさに触れる度、


心が裂けるような感覚。



避けた傷口から、

呼吸もままならなくなる激痛。






どんなに無慈悲な悪人よりも、



優しい君が、

一番、怖いよ。





………………………



霧野は俺をどこまで許してくれるの


ねぇ





「神童っ…」



「霧野、嫌なら嫌って言っていいんだよ」



霧野の細い手首に、ナイフを圧し当てる。


ぷつっと、

血が湧く。


霧野はグッと歯を食い縛って、堪えている。



どうして


こんな、何の意味の無い行為を何も言わずに受け入れるの



「霧野、いたくないのか」


「…いたいよ?」


「じゃあどうして拒まないんだよ」


「俺が神童を好きだからだよ」



なにその屈託の無い笑顔。



愛してるなら全てを受け入れるの



それが君の愛?









へぇ、



吐き気がする



君のそんな従順な態度に恍惚としている自分に。






………………………




優しい君が一番怖い


俺の歯止めがきかなくなるから

















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