Songs for you 09

本選も順番は抽選だ。
○○は最後になってしまった。
しかも、娼婦の後。
娼婦の前はシンで、プレッシャーがのしかかる。
トワやナギがそれぞれに歌を披露し客席から拍手が溢れるのをよそに、○○は一人固まっていた。

心臓の音で、みんなの声も歌もまともに聞こえない。
どうせ優勝はあの女性なんだから気楽に歌えば良いんだ、と自分の緊張を解そうとしても、手が、足が、震えている。
リュウガがNo Woman No Cryを歌いながら、客席から順番に女をステージに上げるパフォーマンスも、○○の目には入らなかった。

一番手でカルメンらしい情熱の歌を歌い上げたファジーが、バンッと○○の背中を叩いて勇気づけようとする。
気付けばシンがステージに上がっていた。

I'm not looking for us
And neither should you.
Absolutely gorgeous,
Then nothing I say is true.
You won't find yourself
In these guilty eyes

'Cause I love anybody who's fool enough to believe
And you're just one of many who broke their heart on me
And so I say I don't love you,
Though it kills me
It's a lie that sets you free.

シンが歌った曲は、好きだからこそ好きじゃないと言う…そんな切ない歌だった。

Love, love, love
I can't take your
Love, love, love

And so I say I don't love you,
Though it kills me
It's a lie that sets you free.

○○の頬を涙が伝っていた。
何故かは分からない。
誰に向けられたのか分からないその愛情の深さが伝わってくる気がした。
予選の時に苦言を呈した老人も、切なそうな笑顔でシンを見つめている。

歌い終わると、老人が言った。
「今日は貴方の心が見えました。辛い想いを抱えていらっしゃるんですね。ありがとうございました」
歌いながらどこか無防備に見せていた感情を隠すように深く礼をして、シンは袖へと引っ込む。
出番を待っていた娼婦は○○に見せつけるようにシンに抱きついてその頬にキスをすると、ステージの中央に向かった。

I Will Always Love You
彼女が選んだその曲は彼女の声が持つ魅力に完璧に合っていて、会場全体がその歌声に聴き入った。
目を閉じて聴き入る者、涙ぐんでステージを見つめる者、思わず立ち上がってしまう者。
大会のことを忘れさせるような完璧なステージ。
自分をどう見せれば最も魅力的に見えるかさえ計算し尽くされた演出。
彼女の優勝は、誰の目にも明らかだった。
曲が終わっても鳴り止まぬ拍手に、彼女は笑顔で応えている。

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