Songs for you 04

「あ…あの…私も、ですか?」
おずおずと尋ねる○○に、リュウガが当たり前だろ!と返す。
そんなリュウガに向かって、シンが言った。
「こいつは仲間じゃないんですから、参加する必要はないでしょう」

(仲間じゃない…)
人前で歌うことに自信を持てない○○は決して参加したい訳ではなかったが、シンのその言葉にショックを受ける。
(やっぱり、シンさんは私のこと邪魔なんだ…)
しゅん、と肩を落とす○○に、リュウガが言う。
「なぁ○○、シリウス号に乗ってるんだ、やってくれるよな?」
他人の前で歌う恥ずかしさとシンの言葉によるショックで、○○は俯いたまま。
追い討ちをかけるようにシンが言った。
「お前は先に宿に戻ってろ」

そんなやり取りを知ってか知らずでか、老人が言った。
「この街の北にある高台は、歌いたくなるほど景色のいい場所なんですよ」
その言葉に○○がハッと顔を上げると、老人は○○を見て微笑んだ。
(あの時の…!)
先ほどまで目深に被った帽子とリュウガの陰になっていたこともあって、○○にはその老人がよく見えていなかった。
だが、紛れもなくそれは○○があの高台で会った人物だった。

「歌うのが好きな方全員に参加していただければ幸いです」
老人はそう言って微笑む。
しかしその瞳はどこか寂しそうで、○○はいても立ってもいられなくなる。
「船長、私も参加します!」
そう宣言した○○をメンバー全員がもて囃す一方、シン一人だけがひどく苛ついた表情で見ていた。

「参加者が結構な数になりそうですから、予選と本選に分けましょう。何しろ私も齢ですからね、あまりたくさんの歌を一度に聴いたら体が吃驚してしまう」
言いながらフッと笑って続ける。
「予選は3日後の午前と午後。本選は一週間後にしましょう。予選は伴奏なしで、本選にはバンドを用意致します」
執事に細かい手配などをするよう言い渡して立ち上がると、老人は帽子を持った手を胸に当て紳士らしくお辞儀をしてから店を出て行った。
老人の通ったドアを一旦閉めてから執事が言う。
「明日の同じ時間に、詳細をお知らせにこちらへ参ります」
そうして執事もまた、店の外へ消えていった。


「歌、かぁ…何歌おうかなぁ」
トワが楽しそうにそう呟くと、ハヤテは俺は決めたぞ!と嬉しそうに言う。
「ふふ、故郷の歌でも歌おうかな」
そんな二人を見ながら笑顔でそう話すソウシを、ナギは無言で見やる。

ファジーが目をキラキラさせながら、○○の元へやって来た。
「○○、あんたは何を歌うんだい?」
「え…」
○○が返事に困っていると、シンが女に囲まれながら言い放った。
「ファジー、飯を食い終わったなら○○を連れてさっさと帰れ」
何を言うんだい、とファジーは食ってかかるが、今にも胸の銃を抜き放ちそうなシンのオーラに思わず押し黙る。

「○○、食べ終わったのかい。宿へ戻ろうか」
仕方なくそう言ったファジーに促されるように、○○は残っていたジュースを飲み干して席を立った。

[ 4/18 ]

[*prev] [next#]
[contents]
back home


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -