Tattoo 08

船が安定した航行に入り、シンは舵を固定して医務室へ向かう。
ちょうど手当てが終わった○○が、ソウシに礼を言って出てくるところだった。
「怪我は、大丈夫か?」
シンが訊くと、○○は微笑んで言う。
「はい、ちゃんと手当てしてもらったので大丈夫です。そんなに大きくなかったので、2〜3日で痛みも収まるだろうって」

○○をギュッと抱き締めると、シンは言った。
「すまなかった…お前を一人にさせて…」
「シンさんは悪くありません!シリウスの刺青が持つ意味の、大きさも分かっていなかった私が悪いんです。シンさんがいない間に無防備にメヘンディを眺めたりしなければ…」
そう話す○○をもう一度強く抱き締めてシンは言う。
「だが、お前の傷一つなかったその手首に海賊の…しかも囚人としての烙印を入れられてしまった…」
右腕は添えるように、左腕には力を込めて○○はシンを抱き返す。
「シンさん…やっぱり私、刺青入れてもいいですか?」

○○の意外な台詞にシンは驚いて○○の顔を見た。
「お前、まだそんなことを言うのか?!」
あんな目に遭ったばかりなのに、と話すシンに、○○は笑って言った。
「そのおかげで、刺青の重要さも分かりましたし…刺青入れたらこのPの文字も目立たなくなるかな、って」
その言葉に一つ溜め息をついてから、シンは○○に微笑んだ。
「…わかった。その代わり、必ずいつも隠しておくんだぞ」
ありがとうございます、と満面の笑みで○○が言う。
「まずは船長にお礼と、刺青の許可を貰わないとな」
そう言って船長室へ向かう。

「あ、そうだ。シンさん、上着ありがとうございました。汚してしまって…すみません」
甲板に出た○○が、風の冷たさから上着を借りていたことに気付いてシンに渡す。
温もりが残る上着に袖を通して、シンは思い出した。
「あぁ、俺もお前に渡す物があったんだ」
そう言ってシンがズボンのポケットから取り出したのは、シンの眼帯の色と同じ…黒に限りなく近い紫のリストバンドだった。

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