渦動 /




ボス(→ヒメ)+サヤ



図書室の隅。薄く開かれた窓から這入りこんだ風によって、淡いクリーム色のカーテンが揺れる。木漏れ日のような薄く控えめな光の中、彼女は長い睫毛を伏せて本のページを繰っていた。
好奇に誘われてそっと、彼女のいる小さな机に近づく。暫く茶を帯びたツインテールを眺めていると不意に、彼女が顔を上げた。大きな目に捉えられた自分の姿はなんだか別の生き物であるように感じられて、彼女ではなく、その瞳に映った誰か、に、よぉと片手を挙げてみせた。
「ボッスン、」
彼女の唇が小さく動く。「珍しいね、図書室来るなんて」
「漫研の助っ人、つーかアシスタントしなきゃならなくてな。背景資料借りにきた」
でも別に珍しくねーよと口を尖らせて、彼女の向かいの席に腰を下ろす。ハイハイ、と彼女は笑った。信じてないな、まぁ嘘だけど。
豊饒の海。彼女が読む古びた本の表紙には、そう印字されていた。どんな話かと尋ねると、少し迷ってから彼女は、永遠に出会い続ける二人の話だよと言った。
「ボッスンは、生まれ変わってもまた会いたい人、いる?」
「ん、んー……どうかな、今会えていればそれでいい気がする、けど、」
「けど?」
「ん、んー……、」
唐突に浮かんだ一人の笑顔と声。アホやなぁボッスンは――。生まれ変わってもまた出会えるとしたら、したら――、
黙りこくった俺を見て彼女は――サーヤは仕様がなさそうに溜め息を漏らし、早く気付きなよ、バッカじゃない、と本を閉じた。
図書室の空気は暖かくて、緩んだ思考がさらに飽和していった。




渦動の正体






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サーヤって純文学すきっていう設定あったよな、そういう描写出てこないかな、という願望。













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