獰猛 /




正文独白ss
事件直後





…………ねぇ、ねぇ兄ちゃん、僕は、今ここに居たのが僕で良かったと思ってるよ。沙羽ちゃんはひどく悲しそうな顔をしているけれど、刺されるのも恨まれるのも血が流れるのも、全部僕の役割で、良かったんだよ。
もちろん、ただただ単純にそんなことだけを思ってるわけでもないよ。ソフトの開発も途中だし、高校にも行ってみたかったし、兄ちゃんとは喧嘩別れみたいになっちゃったし、兄ちゃんと沙羽ちゃんのことも見届けてないし――生きていたかったとは、思うよ。でもやっぱり、この場に、沙羽ちゃんの隣に居たのが僕で――兄ちゃんじゃなくて、本当に、本当に良かった。負け惜しみ? ……うーん、それともちょっと違うかな。負けたとは思ってないし。兄ちゃんには、敵わないことばかりだったけどね。
寒いなぁ。あぁそうか、雨が降っているんだった。全身が濡れているから寒いのか。段々指の先の感覚がなくなってきて、視界も霞んでいる。しぬ、のかなぁ、やっぱり。
沙羽ちゃん、悲しまないで下さい。僕のことはこの先、思い出さなくてもいいよ。無理かもしれないけれど、それで自分を責めることなんてないから。兄ちゃん、どうか沙羽ちゃんを支えてあげてね。わかってるでしょ、それが兄ちゃんの役目なんだよ。すきだって、もっと早く伝えたって良かったんだよ、何を勘違いしていたのか知らないけれど。

あぁダメそう、もう、あたまがはたらかない。……………………………………いやだな、いきて、いたかったよ…………、
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獰猛な聖心














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テーマ「人外ファンタジー」
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