気道 /
キリ→ヒメss
一言。たったの、一言。
その重みを確かめるように、胃の中で心の中で頭の中で何回か呟き、そうして口の先に乗せてみる。けれどその一言には声が伴わず、枯れたひとひらの言の葉は、地面にぱたりと舞い落ちた。
「うん?」
彼女が振り返る。金色の髪から光の粒が飛び散った。
一言。たったの、一言。
嘘だろう? こんなにも口が重いものだとは思わなかった。
呑み込んだ声は腹の底に沈んで沈んで沈んで、泥土のように堆積する。口内が渇いて仕様がない。
変なやつやな。彼女が笑う。うずたかく積み重なった泥土が、胸に迫り上がってきた。
「すきだ。」
嗄れた声では告げられなかった言葉はまた枯れ、そうして想いだけが重く重く積み重なっていく。
彼女はただ不思議そうに、首を傾げていた。
閉塞された気道
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