全自動 /




ボスヒメss





「睫毛、何か付いてる」
ふとそう言われ、顔をボッスンの方に向けると、意外にも近いところに彼の瞳があった。じ、と見つめる真摯な視線に縫い止められた眼球が熱くて、自然と背筋が痺れた。それから逃れるように畳の上をず、と後退すれば、怪訝な顔をしたボッスンが距離を詰める。
近ない? と問えば彼は一瞬きょとんとした表情を浮かべたが、何か楽しみを見つけたように目を細めた。嫌な予感がしてまたお尻を後ろに移動させるとボッスンがそれを追い、じりじりと間合いを狭める。彼の手はわたしの背より後ろにあって、だから逃げ道が限られてしまう。数センチ下がれば彼も同じ分だけ詰めてきて結局、背中は冷たい壁に行き着いた。
伸びてきたボッスンの左手がわたしの顔の横に置かれ、もう一方はわたしの顎を持つ。長い指に、くいと顔を持ち上げられ、弛んでいた網膜にくっきりと彼の形の良い唇が映った。
頭上の窓から夕陽の色が差し込み、ボッスンの瞳を染めている。部室のにおいに混じって彼の吐息の甘さがかおった気がして、そんな想像に耳の先まで血液が沸いた。
「何、見惚れてんのか?」
なんて、どの口が言うとんのやこいつこら。誰が、おまえなんかに――。
慌てて目線を逸らせば、耳元に口を寄せられ、「目、逸らすなよ」と低音で囁かれた。あかん、何やそれ!!
その声の甘さに思わずぎゅうと目を閉じればふと気配が近づいて、気が付けば目蓋の上に熱が触れた。ちろ、と舌先が掠めるように睫毛を滑って離れていく。
恐る恐る目に光を取り戻すと、「取れた取れた」と笑うボッスンがいた。
「え、は?」
「は?」
「……おっまえ、」
震える言葉を絞り出したわたしに向かって、「期待したのか?」とか言うものだから、思い切り殴って物理的距離を取り戻す。
「いってぇ!!」
「うっ、さい!! ハゲこらぁ!!」
未だに鼓動の音が重苦しくて、呼吸の仕方がわからない。ボッスンのくせにと数度呟いて胸の上に手を置いて、それでも目蓋に落ちた熱は消えなくて、ああもうと諦観するようにオレンジの光を見つめた。




全自動式カルマ





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ついったの方で色々案をいただいたSボッスン(撃沈)\(^o^)/












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