同日 /




大学生設定ボスヒメ





一人は大変気楽だ。と、同時に大変寂しい。

バイトからの帰り道、はたと足を止める。狭く長い平坦な道はゆったりとしたカーブを描き、静かに夕焼けに染められている。あまり人通りがなく、音という音はどこかに吸い込まれてしまったかのようだった。
冬将軍はいつの間にか姿を潜め、春がこの地に訪れているのを、唐突に感じる。もう五時を回ると言うのに、まだ空は紅く、千切れた羊雲が点在している。暮れなずむ世界をぼんやり見ているとふと、耳の奥で寂しさが鳴った。
高校を卒業して丸一年経つが、こんな夕暮れを見た時は不意に、どうしようもない不安に駆られる。それが何なのかはわからない、わからないから余計に不安になる。
――ああ、くそ、
焦るような思いで橙の染みた瞳をそっと閉じれば、目蓋の裏に浮かんだのは、あいつの顔、だった。
キレーやな。
ちょうど去年の今頃、少し惚けたような青い空に浮かぶ羊雲を二人並んで見上げた。風に吹かれて流れていく雲は形を変え、不規則に、しかし整然と過ぎていく。
皆が周りにおらんくなったら、あんた絶対、さみしなるやろ?
は? うるせーな、なんねーよ!! 寂しがるのはおまえだろ。
いやいや、おまえやて。
そう言って微笑った彼女の横顔は既に寂しそうだったが、それでも彼女は泣かなかった。手を握り締められた時の温もりが蘇る。あたたかくて、しあわせだった。
「……うん、」
――確かに寂しいかもな。
不意にケータイが震える。ダウンベストのポケットから機器を取り出し、そのディスプレイを見て、俺は泣きそうに笑った。
「もしもし? は? いや泣いてねーよ。……ん、おぉ、……さんきゅ」




春のとある日
(きみの笑顔でつよくなれるよ。きみにとっての僕も、そうであればいい。)





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BGMは言わずもがなの名曲、「3月9日」。
ちょっと遅れましたが、ついったでお世話になっている39しゃんへ。












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